5-4その2
ノーサードは鉱山の街で、坑道のボス部屋から行くことができ、四方が山に囲まれています。今更ながら三人でパーティーを組んだので、歩きながら打ち合わせをしましょう。雑談をしながら歩くと、メルクリウスさんのゆったりと編み込まれた長い三つ編みが揺れるのを目で追ってしまいますから。ところで、この髪色は何色ですかね。薄茶とは違いますし……。
「リーゼロッテさん、聞いてますか?」
おや、ちゃんと打ち合わせをしていたはずなのに、結局、メルクリウスさんの髪に気を取られていました。まぁ、しかたありませんよね。
「いやー、何色か悩んでて聞いてなかったよ」
こういう時は正直に話してしまうものです。下手にごまかしてもばれますから。
「これですか? キャラメイクの時に、亜麻色と指定したんですけど、変ですか?」
「そんなことはないよ。へー、これが亜麻色かー。それで、何の話だっけ?」
「まったく、リーゼロッテは……。この先に出るMOBの話だよ。ロックリザードとファントムイーグルが出るって話てたの」
おや?
「ファントムイーグル……何故か聞き覚えが」
「そりゃ、リッカがテイムしたからね。それで、メルクリウスの目的はファントムイーグルのドロップ品の霊石なんだって」
「あれはホムンクルスの製造や強化に使うので、数が必要なんです。お二人が使わないのなら、全て買い取りたいのですが……」
ほう、ホムンクルスですか。名前からして錬金系統のスキルで作れそうですね。まぁ、私は全く育てていないので、ここは譲ってしまいましょうかね。
「いいけど、他に何か落とすの?」
「他には何もありません。ただ、出現するモンスターが他にもいるので、そちらのドロップと交換がよければ、そうしますよ」
「ロックリザードだよね。茶色の結晶と岩の鱗を落とすけど、結晶は錬金とか調合でも使うんじゃないの?」
「ええ、使えますけど、お二人に付き合ってもらいながら全て欲しいと言うわけには……」
ちなみに、【岩の鱗】は一部で収集品と呼ばれており、冒険者ギルドの納品クエスト専用アイテムだと思われているそうです。
「その手の素材は合成獣の作成や強化に使えるんです。けれど、私はロックリザードを使った合成獣を使役していないので……」
とのことです。まぁ、知らないプレイヤーも多いらしいので、ほぼ二束三文で売られているそうです。
「ま、終わってから考えればいいんじゃないの?」
狩りの前に精算の話をしても、狩れなければ意味がりませんから。まぁ、二人の話しぶりからして、そこまで強いMOBではないようなので、心配する必要はなさそうですが。
「それもそうだよね。それで、メルクリウスはどう動く? 私が前衛で、リーゼロッテが後衛だから、好きに動いてもいいけど」
メルクリウスさんは器用貧乏でしたね。どの役割でもある程度はこなせますが、専門のプレイヤーには劣りますし、その役割に対する習熟度も低そうですね。まぁ、他の役割のプレイヤーが嫌がりそうなことを理解出来ればそれは強みになりますが。
「わかりました。では、援護をメインにします」
ふむふむ、援護ですか。そういいながら弓を背負い、メイスを手にしたので、撃ち漏らしを処理したり、近付いてくるMOBの相手をするつもりのようです。
「そういえば、ホムンクルスとか合成獣って何が出来るの?」
「育成しだいで何でも出来ますよ。合成獣の方は使うモンスターによってある程度決まってしまいますけど。私の場合は、合成獣を前衛にして、ホムンクルスを支援型にしています」
「そんじゃ、メルクリウスさん自体は、遠距離型が主体かな。それで、あのフローレンスさんがおすすめの合成獣を教えてくれたんでしょ」
「そうなんですよ。私がやりたいことを上手く聞き出してくれたので、育成するスキルを絞れま……した……し。……フローレンスさんが錬金術に詳しいっていいましたっけ?」
……。
「言ってたよ。親切な女性プレイヤーが教えてくれるって。装備を非表示に出来るのにわざわざ鞭を付けたままだから、猛獣とか詳しそうだよね」
まさしく、猛獣使いとか言いそうな武器ですし。
「そろそろ外に出るよ」
街から出て坑道を歩いていましたが、ここにはMOBが出ないらしく、鉱物の採集ポイントが点在しているそうです。山の表面に出てしまえば、MOBが出てくるので、この坑道には休憩中のプレイヤーも多いそうです。
メルクリウスさんのホムンクルスや合成獣は状況次第で召喚するということで、まずは三人で挑んでみることになりました。
「おー、半透明の鷹が飛んでる」
「……よく見えるね」
「上空にいると見つけにくいって有名なんですが……」
普通なら半透明なせいで判別しにくいですが――。
「幽霊だからなのか、魔力視で見ると光るし」
「そのスキルほんと便利だよね。リッカとグリモアも言ってたけど、魔力を見るから範囲内なら壁の向こうもわかるらしいし」
「凄い索敵性能ですね」
さて、幽霊ですか。そういえば、幽霊相手にもってこいの魔法がありましたね。射程内なので試してみましょう。
魔法陣を一つ描き。
「【ピュリフィケイション】」
取得した時は近くにある木に使ったのでわかりませんでしたが、ターゲット指定で動く相手にも自動追尾してくれる便利魔法のようです。そして、青白い光が散ると同時にファントムイーグルが消え、リザルトウィンドウが表示されました。
「へ?」
「一発成功とは、幸先がいいですね」
「あー、リーゼロッテは知らなかったんだ。説明文には特攻って書いてあるらしいんだけど、特攻対象のMOBを確率で即死させる魔法だよ。スキルレベルとINTしだいで確率が変動するらしいけど、全型……魔法系スキルを手当たりしだいに取ってれば、成功率は高いってさ」
おやおや、まさかの限定的な即死魔法でしたか。ゲームによっては回復魔法でダメージ、蘇生魔法で即死というのもありますが、まさかの専用魔法ですか。神聖魔法を上げる手段が現状ではこれしかないのに、偏ったスキルですね。
「それでは、ファントムイーグルはリーゼロッテさんに任せて大丈夫でしょうか? 私と時雨さんでロックリザードの対処をしたいのですが」
「二人がそれでいいならいいよ。まぁ、確率なら絶対じゃないから、場合によっては手伝ってもらうけど」
「はい、もちろんです」
ファントムイーグルは数が多いのですが、リンクも詠唱反応もなく、基本的には射程外をゆうゆうと飛んでいるので、射程内に入ってきたファントムイーグルを浄化するのにクールタイムが間に合わないということはなく、時折襲ってくるロックリザードの処理に魔法を使うことの方が多いですね。
まぁ、どちらも強いMOBではないので、苦労はしていませんが。
「土属性の小だから、風属性の効きがいいね。あ、あの岩、ロックリザードだよ」
「わっ、ほんどだ」
ここに出現するロックリザードは最低でも私達と同じくらいの大きさですが、山の斜面に多くの岩があるため、どうにも見逃してしまうようです。マップにはちゃんと表示されているので、隠密系のスキルで隠れているわけではありませんが、天然の迷彩に苦労しているようです。
「本当に、魔力視は便利だね」
「そうですよね。攻略サイトには名前くらいしか乗ってないのは何ででしょうね」
そりゃ、魔力操作との複合スキルですからねぇ。ユリアさんが広めてくれない限り広まりませんよ。ええ、私は対価を要求しますから。
ファントムイーグルには単発で十分なので魔法陣ではなく詠唱をしていますが、魔法陣になれきっているせいで詠唱時間が長く感じます。おや、3体のファントムイーグルが近付いてきますね。
「【ピュリフィケイション】」
魔法陣のマルチロックは慣れたものなので3体を同時に狙うのにも不都合はありません。ただ、一発は不発でした。
「任せてください」
そう告げたメルクリウスさんの方を見ると、矢を番えずに弓を引き絞っています。
「【マジックアロー】」
恐らくは弓スキルのアーツなのでしょう。魔力で形作った矢を放ちました。
そういえば、ファントムイーグルは物理無効だったか耐性だったかを持っているそうなので、魔法かそれに準ずる攻撃でないと効かないそうです。
さて、弓による援護射撃で3倍のディレイが終わるまでの時間を稼いでくれたので、さっさと倒してしまいましょう。実は、今のが初の不発だったので、ファントムイーグルのHPがどのくらいなのか知りません。なので、一切手加減はしませんよ。
「【ホーリーランス】」
もちろん閃いてから5つの魔法陣を描いています。 ピュリフィケイションと矢によるダメージもあるので、私達を狙っている以上、外す理由はありません。
見た限りオーバーキルのような気もしますが、リザルトウィンドウが出ればいいんですよ。
「いやー、助かったよ。ありがと」
「いえ、援護は私の役目ですから。それにしても、お上手ですね、マルチロック」
「練習すれば出来るよ」
「聞いた話によると、多重詠唱までいけば複数同時発動は出来るそうですけど、苦労している人も多いらしいですよ」
おや、多重詠唱とな?
「へー、そうなんだ。ところで、その多重詠唱って詠唱系の中級スキル?」
「ええ、攻略サイトにも載ってますけど、詠唱省略をLV50にすると無詠唱と多重詠唱の二つが出るそうです」
聞くところによると、威力か消費MPのデメリットで魔法を即時発動出来る無詠唱と、詠唱時間のデメリットで魔法をスキルレベルに応じて複数発動出来る多重詠唱があるそうです。どちらも一長一短はありますが、とても便利だそうです。普段は魔法陣を使っている私でも、無詠唱は欲しいですし。
「……まだ攻略サイト見てないんだ」
「いやー、見ようと思っていたとは思うんだけど、機会がなくてねぇ」
さて、思わぬ情報を手に入れたので、今後は気が向いたら詠唱系スキルを上げるとしましょう。ダメ押し用に無詠唱はあると便利そうですから。
「ところで、メルクリウスのホムンクルスと合成獣ってパーティー欄使うの?」
「ええ、そうなんです。ただ、従魔と同じ扱いなので、フルメンバーでも一体までは出すことが出来ます」
「なるほど。つまり、今なら3体まで出せると」
「はい、そうです」
「ちなみに、ちょっと出してみる気ない? 完全に好奇心だからコストが重いっていうなら諦めるけど」
「いいですよ。ダメージを受けてHPが0になったり、部位欠損しない限り、そこまで重いコストは発生しませんから」
あー、よくあるパターンですね。運用に気をつける必要はありますが、気軽に使えるという利点がありますし。
「【コール:ウィスプ】」
白い玉を手にしてそう口にすると、白い光を放ち始め、それが収まると、白い小人が立っていました。
「か、かわいい」
「ちっちゃいね」
色白で白い髪、白い瞳に白いワンピースと、白ずくめのホムンクルスを魔力視で見てみると光属性の小となっていました。光属性の欠片なんて見たことないので、突っ込むと厄介事に巻き込まれる可能性があるので、知らないふりをしましょう。
「触媒の問題があって育成に時間はかかっていますが、付与魔法を使えるので、有能なんですよ」
メルクリウスさんがしゃがんで手を差し伸べると、ウィスプちゃんがテクテクと歩いて手に乗り、そのまま肩まで登っていきました。肩に腰掛けるのが似合う大きさのホムンクルスとは、いいですねぇ。
白い小人を肩に乗せるメイド……これはいいものです。
「この子、何か食べられるの?」
「ええ、満腹度はありませんが、食べるだけなら出来ますよ」
ちなみに、こうしているだけでMPを消費するらしく空になると、エンブリオという先ほどの白い玉に戻ってしまうそうです。その後は魔石やファントムイーグルが落とす霊石を与えてMPを回復させる必要があるそうです。
……それにしてもMPの回復ですか。
「リーゼロッテ、顔、怪しいよ」
「おっと、考えが漏れてた」
ですが、まだ早いですね。呼び出してすぐにMPの供給が必要な程減っては使えませんから。
その後も何とか取り繕いながら狩りを続け、一度休憩することになりました。
「えーと、あの辺りにしよっか」
この辺りの斜面にはいくつもの小さい洞穴があり、中には採集ポイントがあるそうです。中にはMOBが出現することもないそうで、休憩所として使われることもあるそうです。ただ、セイフティゾーンではないので、注意が必要です。
目的の洞穴に入る直前に、ファントムイーグルを即死させたところ、妙な物をドロップしました。
「この【浄化された霊石】って何?」
「それ落ちたんですか? 即死させた時にのみ落ちる可能性があるレアドロップなんです。正直に言うと、それも欲しいです」
「なるほど」
聞いてみると、時雨もメルクリウスさんもこれはドロップしていないようです。まぁ、精算の額が増えたと思えばいいことですね。
「それじゃ、ちょっと採取してるから、うるさかったらごめんね」
洞穴に入ってすぐに時雨は少し奥の方へ言ってしまったので、手早くじっくり済ませましょう。
まずは洞穴の壁により掛かるように並んで座ります。ウィスプちゃんはメルクリウスさんの膝の上に移動していますが、可愛いですねぇ。
「メルクリウスさん、ウィスプちゃんのMPってどのくらい消耗してるの?」
「多少支援をしてもらったので、半分くらいですね。まだ最大MPも低いので、魔石(小)を上げる程ではないです」
なるほど。魔石での回復量はある程度決まっているようで、最大MPが低い内は頃合いを見計らう必要があるわけですか。
「ねぇねぇ、魔力操作って知ってる?」
メルクリウスさんは私が攻略サイトにちゃんと載っていないスキルを使っていてもそれについて何も聞いてこず、ただ便利なスキルだというだけでした。現実での知り合いだというのを理由に聞いてこないだけなのか、第二陣の前のことだから知らないのか、ちょっと確認してみるつもりです。
「……えっと、聞いたことはあります」
もの凄く視線が彷徨っています。しかも、かなり言いにくそうにしているので、ある程度は知っているのかもしれません。まぁ、攻略サイトにトーナメントの時のことが書いてある可能性もありますが。
「そっか。じゃあ、インベントリが刻印してある鞄は知ってる?」
「ええ、……最初の頃に販売された分は取引制限の期間も終わってて、高値が付いてますよね」
それは知りませんでした。ただ、購入制限と取引制限をかけているのは聞いていましたが、売った人は後発品がすぐ出ると思っていたのでしょうか。思ってみれば、中々出ませんねぇ。
「そっかそっか」
「……それがどうかしたんですか?」
それでは握手を求めるかのように手を伸ばしましょう。
「いや、ちょっとね」
私の行動に疑問を感じたようですが、勝手に納得して無警戒に私の手を取りに来ました。まったく、疑問に思うまではいいですが、注意はしなくちゃダメですよ。
それでは遠慮なく。
「ひゃっ」
メルクリウスさんはビクンと体を少し跳ねさせ、驚きを顕にしながらMPを流し込まれる感覚に戸惑っているようです。
「ちょ……リ、リーゼ、……ロッテ、さん、んん」
MPを流し込むのには慣れているので、反応を見るのに集中できます。
おや、倒れそうになってもう片方の手を地面に付いていますが、かすかに震えていますね。ちなみに、膝の上にいたウィスプちゃんは素早く避難して、不思議そうにメルクリウスさんの顔を見つめています。
「んん……こ、これ……、あっ」
ピコン!
――――System Message・スキルを伝授しました―――――――――
【魔力操作】を伝授しました。
SPを1入手しました。
―――――――――――――――――――――――――――――
おやおやもう終わりですか。ちなみに、伝授が終わると同時にメルクリウスさんはへたりこんでしまいました。
「ひっぐ……と、突然、何するん、……ですか」
「システムメッセージの通りですよ」
「まったく、人のいない間に何やってんの」
いつの間にか時雨が戻ってきていましたね。というか、いつからいたんでしょう。まぁ、時雨のことですから、きっと様子を見ていたのでしょう。
息も絶え絶えですが、気丈にも見上げてくるのを見ていると、なにかに目覚めてしまいそうですね。
「ちなみにそのスキル、MPの供給が出来るんですよ。だから、ウィスプちゃんのMPも回復出来るんじゃないんですか?」
少し回復したメルクリウスさんは私との距離を取ってからウィスプちゃんを両手で持ち上げました。その上で――。
「そんな人だとは思いませんでした」
「私の人となりを思い浮かべて想像出来るほどの仲じゃないと思うよ」
こうして一緒に遊びに来ていますが、現実で話した記憶はそう多くありませんから。
何かを言おうとして口を少し開いたメルクリウスさんですが、私に向けていた視線をウィスプちゃんへと向け、MPを流し始めました。
私にやられたことをすぐにウィスプちゃんにやるとは、中々に恐ろしい人ですね。ちなみに、ウィスプちゃんは初めての感覚に戸惑っているようで、キョロキョロと視線を彷徨わせていますが、すぐにメルクリウスさんへ笑顔を向けました。
MPを供給してもらって嬉しいのでしょう。
「このスキルでウィスプのMPを回復出来るようです。ただ、戦闘中は魔石を食べさせた方がいいですね。私のMPを使うことになるので」
「あー、なるほどね。実際に使ってみないとわからないものだね」
「ですが、全型の魔法使いなら、MPの供給も選択肢に入りますね。あの型のプレイヤーはMPお化けですから」
魔石を食べるところを見たかったのですが、それはまたの機会があれば、ですね。ちなみに、霊石の方は錬金で何かしらの加工をしてから与えることで、能力に変化が起こるそうです。大体の変化の方向はわかっているそうで、今は加工のための素材を集めているそうです。
ちなみに、時雨は採掘で減った満腹度を回復させるためにおにぎりを食べ始めていました。巫女服におにぎりとは、似合いますね。
さて、私もちょっと減っているので回復させるために焼き魚を取り出したところ、じっと見つめる視線に気付きました。
「ウィスプちゃんにもあげていい?」
「妙なことをしないのならいいですよ」
「残念だけど、妙なことは品切れだから」
許可を貰ったので餌付けをしましょう。もう一つの焼き魚を取り出し、目の前で動かしてみます。すると、目が焼き魚の動きを追っています。やはり、興味があるのでしょう。そして、口へとゆっくりと近付けました。すると。
「お、食べた」
「もうちょっと可愛いの用意すればよかったね。焼き魚は絵面がちょっと……」
「それはあれかな? 普段から焼き魚にかぶりついている私に対しての当てつけかな?」
「リーゼロッテは見た目よりも楽さを取るのは知ってるからいいよ」
うーむ、巫女服におにぎりなら、魔女風にはイモリの丸焼きでしょうか。流石にゲーム内では見たことないので、調達に時間がかかりそうです。
「リーゼロッテも錬金術のレベル上げすればいいのに。ホムンクルスも可愛いって思ってるでしょ」
「まー、工房もあるしやってもいいけど、今のスキルレベルじゃ、調合との差別化があんまり出来てないんだよね」
「錬金術の場合、調薬スキルの素材に細工をするのが一番早いですよ。普通のポーションとかでも細工しだいで性能が大きく変わりますから」
「なるほどね。後で調べてみるよ」
「そういって結局調べず放置するんだよね」
「いやはやなんとも」
まったくもって否定出来ませんね。
「エスカンデの冒険者ギルドで生産スキル別のクエストを受けられますよ。クエストによっては素材も用意してくれるので、とりあえず上げたい人向けですね」
それは私にピッタリのクエストじゃないですか。ですが、一つ大事なことがあります。
「ちなみに、冒険者ギルドのランクはいくつから受けられるの? 今はDランクなんだけど」
「ランク別にあるので、問題ないですよ。それに、私もDランクですし」
「そっかそっか。今でも出来るのがわかってよかったよ」
ちょうどいいので休憩を切り上げ、狩りを再開することにしました。その後も何度か休憩と狩りを繰り返していると、とある通知がきました。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――
【嵐魔法】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【暴風魔法】 SP5
【風圧魔法】 SP5
【魔力増加】【炎魔法】【嵐魔法】【聖魔法】がLV50MAXになったため、関連スキルが開放されました。
【魔力運用】 SP5
これらのスキルが取得出来ます。
――――――――――――――――――――――――――――――
そんなに強くない気がしたので予想外でしたね。まぁ、数は使っていたので、そのせいでしょう。そして、新しい関連スキル、魔力増加と下級魔法3個で開放されるようですが、これは……。
「中級魔法出たからちょっと待って」
「おめ」
「おめでとうございます」
「あんがと」
さてさて、全部取得してから確認しますが、暴風魔法で覚えたのは【ゲイルボム】で、他のボム系と同じですね。風圧魔法の方は、【エアロハンド】という魔法で、詠唱時間0で遠くの物を掴める魔法でした。距離と力はスキルレベルとINTしだいのようですが、発動中はMPを消費し続けるとのことです。これはちゃんと魔法陣も存在するので、いろいろと面白そうなことが出来そうですね。
今更ですが、中級魔法スキルは攻撃系と補助系に分かれているんですかね。これはこれで面白そうな魔法が増えるので文句はないですが。
次に、魔力運用ですが、説明を見る限り魔力操作系と同じですね。これは中級スキルなので、どれと同じかはわかりませんが。えーと連動設定で……、おお、流石に魔法陣との連動がどちらかだけにはならないようで、スキルの使用感が変わることはなさそうです。
いい時間になるまで狩りと休憩を繰り返し、最後にユニコーンを見せ、精算してからログアウトしました。ええ、収集品と呼ばれている岩の鱗は全て私の手元に来ましたよ。
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