4-21

 火曜日の午後、いつもの様にログインしました。最初に守り人の里へと向かい、護衛クエストを受注してからクランハウスで日課をこなし、クエスト開始の時間を待っています。時間までにログインしたのは私を含めて六人、ハヅチと時雨とアイリスとグリモアと影子なので1パーティーでクエストに参加します。ログインしていないメンバーはリアルで都合が悪いそうなので、しかたありませんね。


「前衛三人、中衛一人、後衛二人か。まぁ、数を減らすのが役目だから大丈夫だろ」


 今回はハヅチがリーダーとして動くようですが、前衛三人が壁役ではありません。まぁ、ハヅチの言う通り、倒し切るのが目的のクエストではないので大丈夫でしょう。

 ここでの襲撃者に関しては属性がないのでスキルレベルの低いものを重点的に上げましょう。鷹の目を取ったおかげなのか、ターゲット指定系の魔法が使いやすかった気がしますね。まぁ、気の所為かもしれませんが。

 ちなみに取ったばかりの魔力貯蔵ですが、貯めたMPを使わないとスキルレベルが上がらないようですね。溜まっていたほんの少しのMPを消費して回復したお蔭でスキルレベルが2になりましたよ。

 報酬として大判10枚を入手し、自由時間となりました。


「あーこれ、全員に渡すつもりで用意したんだけど、先に渡しとくぞ」


 そういってハヅチが全員に配った装備、それは赤系統の浴衣と下駄のセットですね。このセット装備というのも気になりますが、これは夏祭りを堪能する上で必要な装備です。

 本来の装備欄には夏装備を、装備切り替え欄には通常装備を設定しているのですが、通常装備は解除してこの浴衣セットを登録しましょう。


「ふむふむ、中々」


 みんなも試しに装備してみたようですが、浴衣の女の子は目の保養になりまね。

 話を聞くと、私と時雨以外はリクエストを受け付けていたようで、グリモアの浴衣が黒系のゴシックというか和ロリっぽいのは本人の希望なのでしょう。というか、和服っぽさがあれば普通に作るんですよね。

 時雨は紫系、アイリスは白っぽく、影子は黄色を基調としています。ふむ、それにしても紫ですか。しかも、灰色がかった明るい紫色です。この色って確か……。そんなことを考えていると、装備を戻しながらハヅチと時雨が後で夏祭りを巡る約束をしているので、ぬるま湯から一歩前進したようですね。

 私も装備を戻して今日の予定を考えましょう。





 今度こそ自由行動になったので試しに城内へと立ち入り、光輪殿を訪れようとしました。けれど、陣営が違うのが理由かはわかりませんが入れてもらえませんでした。残念ですが、しかたありません。ちなみに、まだ護衛イベントが始まっていない姫巫女の御殿にも入れなかったので、お祭り本番では制限がかかっているのでしょう。

 軽く歩き回った結果、お祭り本番中に城内で発生するクエストは所属陣営を限定している可能性が出てきました。流石に街を歩き回ってクエストを探す気はないので、お祭り気分を堪能してからログアウトしました。





 夜のログインの時間です。流石に夜はいいレベル上げになるのでみんなログインしています。ハヅチが午後の時にいなかったみんなにも浴衣を配っています。

 さて、今日は火の姫巫女の護衛なので、襲ってくる忍者型MOBは水属性のはずです。そのため、属性相性の関係から土属性を集中的に使い、水と火は封印します。

 今回は今までと違い、少し離れた位置にある木にグリモアが登っています。流石に自前のステアーとロックウォールだけでは時間がかかるようなので私のロックウォールも使い、そこそこの高さまで登っています。ただ、私の様に幹に手を当てて立ってはいますが、へっぴり腰で足が震えているので見ていてハラハラします。ちなみに、リッカは枝の上に堂々と仁王立ちしています。その上微動だにしないのは、自前で用意しているバランス感覚が原因ですね。きっと。

 火の姫巫女がいる辺りに赤い光の柱が立ちました。それを合図に水属性の忍者型MOBの大群が出現したので、いつもの様に範囲魔法をばらまきます。閃きのスキルレベルが上がってきたおかげなのか、閃いてからのグレイブで忍者型MOBを倒せる数が増えてきましたね。他の属性魔法でもスキルレベルが上がればステータスに影響を与えるので、まったくの無関係ではありませんし。


「汝、我に一つ考えがある」


 魔法をばらまく合間にグリモアが何か思い付いたようです。何かはわかりませんが、答えは一つです。


「任せた」

「うむ」


 その言葉と共にグリモアが詠唱を始めました。ここで魔法陣を使わない理由はわかりませんが、複数個発動させる意味のない魔法だという推測は出来ます。最近そういった魔法を覚えましたし。


「【クエイク】」


 前方の一部が揺れたらしく、地面がボコボコになりました。こうして見ると結構広範囲ですね。さらに土色の魔法陣を描き始めました。こちらも描いているのは一つですが、クエイクは重複しないので、別の魔法でしょう。


「【グラビティ】」


 やはり私の知らない魔法です。ですが、範囲魔法であるグレイブよりも広範囲に薄っすらと黒いモヤが広がり、そこにあるものを押しつぶしました。クエイクの範囲内の忍者型MOBはもとより、その外で押しつぶされているMOB全てがポリゴンとなり散っていきました。

 光と闇はバインド系を覚えていないと言っていたのでLV30以下のようですが、土魔法は最低でもLV40ということで、スキルレベルが随分と偏っているようです。

 次の魔法陣を描き始めないので、どうやらディレイが長いようです。まぁ、後から範囲に入った忍者型MOBも押しつぶされているので、効果時間も長いようですが。

 効果時間中ずっとダメージが発生し続けるって強力すぎる気が……あ、いつの間にか範囲がクエイクの範囲と同じになっているので、効果時間が長くなっているのはクエイクのせいですね。

 私もグリモアの魔法の範囲外に対して魔法を放っていますが、ディレイは本来の効果時間と同じのようで、不用意に複数同時発動をするとしばらくは案山子になってしまいますね。


「凄い凄い」

「うむ、ここまでとは……」

「負けてられないねぇ」


 この台詞のあとに何か凄いことをしたくなりますが、残念ながらそんなことは……あ、あるじゃないですか。面白そうなものが。ですが、効果的に使うのは今ではありません。もう少し……、具体的に言えば山くらいの大きさの忍者型MOBが出てきてからです。

 適度にMOBを後ろへ流しつつ攻撃していると、とうとう山くらいの大きさの忍者型MOBが出現しました。

 私としてはMPを温存したいのでクエイクはグリモアに任せています。さて、射程内に入ったので、魔法陣を一つ描きましょう。

 グリモアも魔法陣を全て覚えてはいないと思います。けれど、私が一つしか描いていないことに疑問を感じているようです。なーに、すぐにわかりますよ。


「【ソフトウェイブ】」


 ウェイブ系のようなエフェクトですが、見た目以上のダメージと共に、下向きに移動する茶色のオーラが山くらいの大きさの忍者型MOBに追加されました。それが何を意味するのか、それは一目瞭然です。何せ、相手に防御デバフを意味するアイコンが付いているのですから。


「汝、今のは……」

「ふっふっふ、魔法陣系のスキルレベルを上げると、手持ちの魔法を組み合わせてオリジナルの魔法を作れるのだよ。……まぁ、MP半分くらい持ってかれたけど」


 作った時は気にしませんでしたが、実際に使ってみるとこれはまずいです。魔力貯蔵のスキルレベル次第では何とかなるかもしれませんが、今の私には死活問題です。


「あ、防御デバフの効果時間は付与魔法と同じになってるけど、ちゃんと使うの初めてだから、保証はしないよ」


 そもそもデバフが切れる時間がどう決まるのか知りませんし。

 長めのディレイが終わってからも、MPが心もとないので少し休憩です。流石に今回はヘイトを稼ぎすぎてタゲられることはないと思いますが、進行方向にある邪魔な木に登っているのでどのみち攻撃されそうですね。


「とうっ」


 流石に三度目となれば巨大な苦無を作るモーションを見て余裕で回避に移れます。それでもちゃんと私を狙ってくるのはひどいと思います。

 近くの地面は抉られましたが、元々私がいた木は無事でした。その後すぐに小さな水の苦無で蜂の巣にされていましたが。

 この後の追撃に関してはしっかりと距離を取っていればHPを大きく削られることはありません。かすり傷はすぐに回復すれば何度受けても問題ありませんし。目が水で覆われても視界が歪むだけなので、のたうち回ることはないです。

 今思えば、私達の装備は夏用なので水属性が付いています。これは防御面の話なので、同属性ダメージを微減してくれます。相手が土属性の時は注意が必要ですが、その時のダメージ量を見て装備を戻すということも検討する必要がありますね。






 赤い線を越えたので私達の出番が終わってから、姫巫女の陣営の手によって無事に巨大な忍者型MOBが倒されたので、今は守り人の里へ戻っています。

 さてさてさてさて、報酬の大判10枚はさておき、私の一番大事なスキル達がLV30となりました。ええ、中級スキルの新しいアビリティが開放されたということです。

 まず最初に杖術の確認をしましょう。

 杖術LV30で覚えたアビリティは【レインフォース】というもので、詠唱中の魔法にMPを追加投入し、性能を高めることが出来るそうです。試してみた限り、魔法陣を描いている最中でもMPの追加投入が出来るので、表記の問題でした。

 次は魔道陣です。

 魔道陣LV30で覚えたアビリティは【図形創造】というもので、オリジナル魔法陣を作る時に図形に手を加えることが出来るようになるそうです。主な用途としては軌道を自由にできるといったところでしょうか。他にもいろいろありそうですが、自由度が上がるというのは基本的に要研究です。

 ちなみに、オリジナル魔法陣の保存数が属性別に5個までとなり、複数の属性を含む魔法を作る場合は、両方の属性の保存数を使うそうです。

 残念ながら複魔陣の性能は上がらなかったので、同じ魔法の同時発動数は4のままです。

 もう一つLV30になった魔法操作はアーツもアビリティもないので確認するまでもありませんね。

 この後はイベントダンジョンを96階まで突破して解散になりました。





 水曜日の午後、いつもの様に姫巫女の移動を護衛しますが、今日の護衛対象は水の姫巫女です。護衛クエストの後は自由行動なので、守り人の里で人探し中です。

 どの忍者NPCも顔を隠しているので見た目での判断がつきません。そのため、声をかけられずにいますが、こうしていてもしかたありませんね。


「何奴」


 そう言って背後を見ましたがやはり誰もいません。さて、どうやっておびき出しましょうかね。


「リーゼロッテ殿、何をしているでござるか?」


 正面を向こうとしている最中に正面から声をかけられました。おのれ、どこかで様子を見ていましたね。まぁ、出てきたので許しましょう。


「忍者さんを探してたんですよ」

「拙者をでござるか?」

「そうでござる。ちょっと聞きたいんですけど、この里には本とか古文書とかを見れる場所、ありませんか?」


 忍者さんが腕を組んで何かを考えています。少し待つと、考えがまとまったようです。


「リーゼロッテ殿であれば、問題ないでござる。案内するでござるよ」


 どうやら考えていたというよりも何かを参照していたようですね。クラン全員でこの陣営に所属しているので、他の誰かがこなしたクエストの結果が別の誰かの評価にも繋がるらしいので、里でクエストをクリアした誰かのおかげでということでしょう。

 忍者さんの後をついていき、里の外れにあるお地蔵様のいる祠の奥に隠し通路があり、謎の隠し書庫へと案内されました。明かりが松明だけなのに少し暗いくらいですんでいるのは梟の目のおかげですね。


「書物を汚さなければ好きにしていいでござるよ」


 それだけいうと忍者さんが消えました。こういうところは忍者ですよね。

 エスカンデの図書館のように検索機能がありますが、とりあえず手頃なところから一冊取ってみましょう。

 えーと、……。

 このイベントは和風なので恐らく日本語だと思うのですが、大昔の本格的な草書体なんて読めませんよ。まぁ、違うのかもしれませんが。

 うーむ、謎の本と睨めっこを続けていますが、読もうとしても歯抜けになっています。しかたありません、検索機能を使いましょう。条件設定で、現在のスキルレベルでギリギリ読めるものとギリギリ読めないものを抽出します。

 では、まずは読めるものから。えーと、この薄い本は何ですかね。えーと、ふむふむ、ほうほう。所々歯抜けだったり、難解な言い回しだったりしますが、どうやら姫巫女について書かれている物のようです。ただ、目新しい情報はなく、本の薄さと同じくらいの内容の薄さでした。

 次はギリギリ読めないものです。ではでは。……おや? ほ……う? へ? はて……。暗号ですかね? うーむ。おやや? 明らかに珍妙な部分が急に変化しました。どうやら本当に暗号だったらしく、看破のスキルレベルが上昇し、読める内容になったようです。それでも難解な言い回しは変わらないので、意味はわかりませんが。

 しばらくこの本と睨めっこしていましたが、何とか読めるようになりました。それによると、姫巫女の交代後に行われる封印強化の儀式についてです。要するに、ここ最近行われている護衛クエストに関するものです。このお祭りは姫巫女の交代後に行われる封印強化のものですが、姫巫女が引退すると一時的に封印が弱まるので、それを元に戻すためのものらしいです。残念ながらあの襲ってくる忍者型MOBについては何も書いていませんでした。

 さて、何かスキル関係の本はありませんかね。イベント限定なんてのはよくあることですから。

 どうせなら巫術とか呪符とかあると面白いのですが、残念ながらプレイヤーが取得出来る形ではないようです。おまけで忍術や陰陽術も調べましたが同様の結果でした。とりあえず、本来のフィールドで和風の街が出るのを待ちましょう。

 ある程度スキルレベルも上がりましたし、いい時間なので一度ログアウトです。





 夜のログインの時間です。姫巫女の護衛クエストの時間に合わせているので、受注をしてからクランハウスで待機します。時間にはある程度余裕があるので装備についての相談をしましょう。


「次の忍者って土属性だし、装備どうしよっか。暑いのはいやなんだよね」


 そう、私の胴と外套は水属性です。そして、今回の護衛対象も水属性です。その弱点である土属性のMOBが襲ってくるので、対応会議は必要です。


「今までのダメージからして問題はないと思うけど、安心は出来ないよね」


 そういう時雨は避けることを主眼にしたプレイスタイルなので防御力は中の下くらいでしょうか。そんな時雨がいうのですから、今まではカスダメしか食らっていないのでしょう。


「あたしはヒールの回数が増えるかもしれないから、戻した方がいいかもね」


 モニカは重装甲ですが、ダメージを受ける回数がおおいので、それなりに蓄積するようです。


「我は気にせぬ。故に、汝の最良を選ぶが良い」


 うーむ、ヒールの回数が増えても問題ないから、モニカにとっていい方を選んでくれといったところでしょう。治癒魔法のレベル上げになりますから、危険でなければ問題にはなりませんね。

 とりあえず、装備はそのままということになりました。


「あ、浴衣は青色の欠片の粉末使ってるから、涼しいけど属性は付いてないぞ」


 どうやら属性を付けずに夏仕様にする方法が見付かっていたようです。

 その後、全員揃って護衛クエストへ突入しました。

 途中、私がいつもの様に巨大な苦無の標的になり、しっかりと回避しました。けれど、その後の小さな苦無の連打を浴びて瀕死の重傷を負うなどのトラブルはありましたが、無事にクリアしたので、問題はありませんでした。

 その結果もあり、治癒魔法がLV30となり、【キュア】を覚えました。これはリカバリーとは違い、精神系状態異常を回復させる魔法のようで、今わかる範囲では睡眠・幻覚・混乱がその回復対象です。

 夜にはそのままイベントダンジョンを99階まで突破したので残るは100階だけです。





 木曜日、午後の護衛クエストでは全員が揃い、その後にイベントダンジョンの最終階である100階へと挑戦することになりました。

 ダンジョン挑戦前の櫓広場で100階の打ち合わせをする必要があります。

 100階ではまずバクマツケンが6体出現し、それを倒し切るとブシドーレムが、その次にはクリプトメランコリーが、それをもうワンセット行えば、それで100階の突破です。


「今回は倒しきってから次が出現する。90代の階にしては楽な方だな」

「今までは倒したらすぐが多かったからね」


 そんなわけで100階へ挑戦です。

 私はグリモアとモニカと一緒に行動します。流石にバクマツケンと一対一は大変ですから。

 いつもの様にモニカが3体のバクマツケンを引き付けました。


「【フレイムランス】」


 閃いてからの4発同時攻撃、これはもう毎回やっていることなので、間違えることはなく、追加もまだ発生しないので完全に作業です。

 グリモアとモニカの攻撃もあるので、これで1体沈みました。グリモアが魔法陣を3つ同時に描けるようになっているので、抜かされるのも時間の問題かもしれません。

 そこからディレイが終わり次第、2体目、3体目と続き、バクマツケンの討伐が終わりました。その直後、ブシドーレムが6体出現しました。ここからはブラスト系が使えるので、手間取ることなんてありえません。すぐにクリプトメランコリーが出現し、再びバクマツケンの出番です。まぁ、何も問題なく最後のクリプトメランコリーまで行き――。


「【フレアブラスト】」


 ディレイとクールタイムと描写時間の問題で私の一撃がとどめとなりました。


 ――――Congratulation ――――


 そう表示され、このイベントダンジョン【夏の櫓】を全クリしました。報酬はいつもどおり、小判100枚と切りの良い階層突破報酬のイベント素材各100個です。そして、全制覇報酬として追加で大判を10枚入手しました。

 それでは櫓広場に戻って全クリを祝いましょう。

 準備のいい時雨が全員分のジュースを用意していたので、パーティーを解散してそれぞれが従魔を召喚し、浴衣に着替えてお祝いの開始です。


「乾杯」


 私も手持ちの料理アイテムを放出し、花はないけれど花見の時間です。


「ところでさ、このセット装備って何なんだろ」

「あー、ハヅチから聞いたけど、一個で複数ヵ所埋める代わりに、少し性能が上がるんだって。この浴衣は性能度外視だから戦闘には向かないけどね」

「へー。制限は見た通り?」


 普段の装備をセットにできれば便利ですが、一つ一つは完全に別物ですから、無理でしょう。


「だと思うけど、詳しくは生産クランが中心になって検証中だってさ」


 それではこれ以上は何もわかりませんね。そもそも装備を作るスキルを持っていませんから、私に出来ることは作る時の素材に注意するくらいです。


「いやー、それにしてもモニカは凄いね。後ろにまったく漏らさないんだもん」

「すぐに倒せるMOBだから、褒められるほどじゃないけど、ありがと」

「我らが守護者の技量は遥かな高みに存在する」


 うんうん、そうですよね。


「そういえばさ、里の書庫でイベント限定スキル探したんだけどさ、見つからなかったんだよね。陰陽術とか忍術とか期待してたんだけど」

「……書庫、あったんだ」


 時雨がどこかで見たような表情をしていますね。まぁ、この表情は気にしなくても大丈夫です。


「……他には、何、が?」

「うーん、イベントストーリーの続きかな? 最近やってる儀式の護衛クエストの設定みたいなのがあったから」


 リッカの希望で本の内容を簡単に話しました。その結果、時雨がどこかで調べた内容と一致する点があったようです。


「先代巫女にはその姫巫女の陣営に入らないと会えないんだって。その会話内容から、イベント後の報酬で先代巫女由来の何かがもらえるんじゃないかって」

「な……なん、だと……」


 つまり、今の巫女由来の何かも報酬として存在してる可能性があるということじゃないですか。私は今の姫巫女全員と会っているので、全員分の報酬と交換できる量の大判を集める必要がありそうです。ただの記念品だといいのですが、姫巫女という属性的に杖の素材として使えそうですよね。まぁ、属性特化の杖になりそうなので、使うかと言われれば微妙です。

 書庫についてはNPCを捕まえて聞けばいいと伝えたので、これ以上は何も出ません。


「そうだ、リーゼロッテ、イベント素材の納品先には注意した方がいいぞ」


 他愛ない話をしていたのですが、突然アイリスがそんなことを切り出しました。

 メニューを表示し、イベント素材の数を確認すると、結構溜まっていました。


「そういえば反復クエスト放置したままだった」

「祭りが始まってから発生する反復クエストなら素材10個で中判を1枚貰えるらしいぞ」

「それはまた随分と奮発してるんですね」

「あくまでも反復クエストが、であって、それらの前提クエストならもっと効率がいいのはあるぞ」

「へー、流石に前提を何個も探すのは面倒だから、反復だけでいいかな」


 それでも前に受けた反復クエストの5倍も貰えますから。

 ついでにとアイリスが景品と建材と食材でクエストが発生しやすい場所を教えてくれたので、そのうち歩き回って見ましょう。

 ヤタと信楽にもご飯をあげているとヤタのなつき度が60%になり、召喚コストが最大MPの二割になっていました。これでヤタと信楽を同時召喚してもMPに関しては三割ですむのでとても楽になります。

 宴もたけなわですが、そろそろいい時間なのでログアウトです。

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