2-12

 土曜日の午後、約束の時間よりも少し早くログインしました。


 テロン!

 ――――修理アイテムが一件届きました。――――


 予想通りではありますが、シェリスさんからでした。そこには修理が完了した悪魔の杖が添付されているので、準備は万端です。

 集合場所のクランハウスへ向かいますが、全員センファストから入るようにしています。そうすれば、皆そろって出発することが出来ますから。


「よーし、全員そろったな。それじゃあ、これから古の都までの道のりと、ダンジョン内の地図を配布する」


 そういいながらもハヅチは私にしかマル秘メモを渡しません。つまり、インクの都合上、私に量産しろというわけです。まったく、前もって言ってくれれば作っておくなり、魔力ペンを渡すなりするのに。


「はい。人数分」

「助かる」


 ハヅチ経由で全員に行き渡りました。ダンジョンである古の都までの道のりといいますが、実際にはオアシスよりも西側のフィールドのMAPデータと、ダンジョンの位置が記されているだけです。出現するMOBはサボガンマンとブラウンキャメルだけのようなので、特別な対応は必要なさそうです。


「このダンジョンも北の鉱山と同じだから、他のプレイヤーと遭遇することもある。MOBを見つけた際には注意してくれ。ちなみに、道中のMOBは、ミイラ・レッドスコッピー・リトルメジェドの三種類だ。ミイラとレッドスコッピーの攻撃は、毒や麻痺を引き起こすから、注意してくれ。それと、有用なドロップはレッドスコッピーの赤色の欠片とリトルメジェドの絹の糸くらいだ。ミイラは効率の悪いアイテムしか落とさないから放っといていいぞ。後、ボスについてだが、スフィンクスだそうだ。小さい翼を持っているが、空を飛ぶためではなく、オートカウンターのためのものだそうだ。遠距離攻撃に反応するらしいから、どうするかは話し合っておいてくれ」


 少し気になりましたが、赤色の欠片とは、何なのでしょう。有用ということは使えるアイテムだとは思いますが。後、ここでも絹の糸が手に入るんですね。これならシルクガに囓られる必要もなかったのに。


「まぁ、有用なアイテムを落とすせいで、篭ってる奴もいるから、戦闘はないと思ってくれ。それじゃあ、何か質問はあるか?」


 ハヅチが皆を見渡しますが、誰もが口を閉じたままです。


「ないか。じゃあ、出発だ」


 私は時雨のPTにお邪魔することになり、MPの最大量の都合からヤタは召喚していません。聞けば、グリモアのアートラータも代償に最大MPを使うそうです。流石に難易度が低下しているとはいえ、魔法使いの生命線である最大MPを減らすわけにはいきませんね。





 センファストのポータルから、砂漠のオアシスへと飛び、そこから西へと進みます。途中、目の前に出現したMOBは倒しますが、遠くにいるMOBには手を出しません。


「そういえばさ、レッドスコッピーの落とす赤色の欠片って何なの?」

「あー、あれね。装備を作る時に、火属性を付与する素材アイテムだよ」


 属性付与のアイテムですか。まぁ、欠片というくらいなので、付いても極小でしょう。この辺りは砂漠フィールドで、日差しが強く、熱いので、落としても不思議ではありませんね。


「へー、そういえば、付与魔法に属性付与ないよね」

「うむ、我らの先を行く者達も自然の力を宿すことは出来ぬらしい」

「なるほどね。特殊条件でもあるのかな」


 グリモアの言い方では、中級スキルを持っている人なのか、下級スキルのレベルが高い人なのかはわかりませんが、現時点では知られていないことだけはわかります。触媒として使えそうなアイテムが見つかっていても、使い方が見つかっていないそうなので、条件が厳しいのでしょう。

 属性があるのに属性付与がないなんて思えませんから。

 しばらくして、石で出来た街と、その入り口らしき場所に人集りが見えてきました。あそこが目的の場所だとは思いますが、あれはなんでしょう。


「ハヅチ、あれ何?」

「あー、ダンジョン攻略者向けの露店だ。消耗品とか売ってるけど、俺達にはいらん」


 なるほど、割高露店ですか。あそこに挑む人達の中で、ドロップ目当ての攻略済みプレイヤー以外は、補給が大変ですから、ああいった露店を利用するのでしょう。足元を見ていますが、結局のところ利用するしないの決定権は買う側にありますし、それもプレイスタイルなので、私が口をだすことはありません。そもそも、今回は利用しませんし。


「それじゃあ、ダンジョンに入るぞ。通路はそこまで広くないが、ボス部屋までは一緒に行けるはずだ」


 ダンジョンである古の都に入りました。石造りの家が多く、古代エジプトとでも言うのでしょうか。出て来るMOBからしても、その辺りがモチーフのようですし。それにしても、ミイラが多いですね。ろくな物を落とさないということなので、放置されているからでしょうか。ただ、魔力視で属性を見ると、色は黒なので、闇属性です。ついでに識別してからモンスターリストを見ると、闇属性の極小以外に、治癒魔法と火属性に弱いという特徴が書かれています。何故自属性以外に相性を持たせているのかはわかりませんが、聖魔法のレベルが低かったら、炎魔法に頼っていたかもしれません。


「ミイラの弱点属性は光と火だけど、どうする?」

「魔法の属性に関しては、そっちの判断に任せるよ」

「敵は悪しき闇に支配されし死人、ならば、光にて浄化せん」

「なるほど、やっぱそっちも使ってみたいよね」

「?」


 グリモアが首を傾げています。どうやら翻訳ミスをしたようですが、試してみる価値はあります。ちょうど、ミイラが現れたので力を込めて魔法の名前を叫びます。


「【ハイヒール】」


 当然のように双魔陣を使い、二つ発動させました。ミイラが光りに包まれた後、その場にはミイラが身に付けていたはずの包帯が落ちており、その後ポリゴンとなって消えました。眩しくてわかりませんでしたが、中身だけ浄化したのでしょう。


「いや、確かに定番だけど……」

「うーん、ハイヒールはMPの消費が重いね」


 普段なら気にしませんが、二発分のMPということと、攻撃に用いるということを鑑みると、連発するのは危険です。クールタイムも短いので、連発するとあっと言う間にMPが空になるでしょう。

 その後、石で出来た街を進んでいると、今度はレッドスコッピーを見かけました。属性は当たり前のように火属性の極小です。毒や麻痺といった攻撃をしてくるのはあの尻尾だと思いますが、前もって鱗粉を渡してあるので、耐性スキルは皆が持っているはずです。スキルレベルは低いはずなので、役には立たないと思いますが、あって損はないと思います。

 倒して手に入れた赤色の欠片は思い出にしましょう。

 適度に戦闘をし、体があったまった気分になった頃、コロッセオの様な建造物に付けられた巨大な門とそこに集まる人の群れを見かけました。このダンジョンの入り口でも同じようなものを見た気もしますが、今回は一列にならんでいるので、ボス部屋の順番待ちでしょう。ただ、順調に進んでいるので、ここもボス部屋だけは違う部屋に飛ばされるのでしょう。

 とりあえずは並んで作戦会議です。


「まぁ、基本はいつもどおりだから、リーゼロッテはグリモアに合わせてもらっていい?」


 実際、このPTに加わるのは三回目ですが、奇抜なことはしていないので、合わせやすいです。注意することといえば、双魔陣を使って火力を出しすぎないことですね。私が死んでしまいます。

 そういえば。


「りょーかい。ところで、HP管理はどうすればいい?」

「グリモアがしてくれるし、ある程度はポーションも使ってるから、二人で話し合ってくれる?」

「わかった」


 普段の魔法使いはグリモアだけですが、魔法火力にHP管理とは、かなり多忙ですね。まぁ、それだけ有能だということだと思いますが、頼り切ってはいけませんね。


「それで、オートカウンターだけど、モニカに任せる?」


 私はモニカの実力をそこまで理解しているわけではありませんが、前の二回を見るに、十分に優秀だとは思っています。ただ、私達の攻撃に合わせてオートカウンターの対処をさせるというのは、負担をかけすぎるような気がします。


「とりあえず、こっちで対処出来る内容なら、こっちで何とかするよ」

「我も、同意見だ」

「……問題、ない」


 どうやらグリモアとリッカも同じような考えのようです。それなら問題ないでしょう。

 最後に、HP管理についてグリモアと話し合い、担当を分けることになりました。アイリスとモニカがグリモアで、時雨とリッカが私の担当です。後は、詠唱中などすぐには動けない時は声を出してカバーし合うことになりました。

 準備が整い、私達の順番が来たため、巨大な門をくぐりました。中に入ると、そこには獅子の体と女性の顔をした大きなスフィンクスが鎮座しています。ここはナゾナゾに正解したら通して欲しいものです。まぁ、それはウエスフォーの開放クエの内容のようでしたが。


「それじゃ、行くぞ」


 マントをはためかせたアイリスの号令により、皆が動き始めました。私はグリモアとある程度の距離を取って配置に付きます。近すぎると、何かしらの遠距離攻撃があった際に、二人共巻き込まれてしまいますから。


「【ハウル】」


 モニカが紫色の小さなポニーテイルを揺らしながらヘイトを稼ぐためのスキルを発動しました。真っ先に近付いたこともあり、モニカがスフィンクスを引きつけました。


「【ディフェンスアップ】スフィンクスは闇属性だよ」


 それではモニカに協力しておきましょう。ついでに属性を確認しておきました。流石に回復魔法でダメージを受けるとも考えられないので、使うのはホーリーランスです。ただ、グリモアがまだ攻撃を始めないので、私もスフィンクスに注意しながら待機です。


「【速射】」


 短い青髪のリッカが動き回りながら弓のアーツを使い始めました。口元を隠している長めのマフラーが地面に着くことなく動き回っているのに、矢を放っていますが、システムによるアシストがあるのでしょう。……よく見れば、壁を使って飛んだり跳ねたり走ったりしているので、何かのスキルでしょう。人間離れした動きをするのは、ゲームの醍醐味です。

 問題のオートカウンターですが、リッカの矢が当たると、背中に着いている小さな翼から羽根を飛ばして、攻撃をした時にリッカがいた場所に向かっていきました。既にリッカはそこにいないので、この程度なら、私達でも何とかなるでしょう。

 足を止めなければいいだけなので。


「我らも行くぞ。【ホーリーブラスト】」


 く……、やはり、グリモアの方がスキルレベルが上ですか。私自身、満遍なくスキルを上げ、生産にも手を出しているので、遅れるのはしかたありませんね。


「【ホーリーランス】」


 グリモアに合わせて単発で放ちました。白く輝いた槍がスフィンクスに向かっていくのは、何とも綺麗な光景です。

 おっと、オートカウンターがあるのですぐに離れましょう。羽根を飛ばしてくるのは遠距離攻撃に対してだけなので、ヘイトは関係ありません。まったく、厄介な。

 反撃が乱舞する中でもモニカは器用に様々なスキルを使い、ヘイトを維持し続けています。それを見て、ちょっと本気で火力を出してみたい気もしますが、邪魔になってはいけないので我慢します。私よりもスキルレベルの高い魔法を使えるグリモアがいるので、そこまで心配はいらないかもしれませんが。

 戦闘を続けている間、特にブレスを吐くわけでもなく、獅子の体を使った攻撃が基本であるため、何ともやりやすい相手ですね。

 そして、ボスのHPバーが30%を切り、注意域を示す黄色へと変化しました。


「変化、尻尾」


 アイリスの声が響くと、攻撃しようとしていた時雨が後ろへと跳びました。私は遠くから魔法を使いながら観察していると、尻尾が蛇に変化していました。壁画によっては尻尾が蛇として描かれているらしいですが、こんな風に再現してくるとは。

 前衛である三人の間でどんなやり取りがあったのかはわかりませんが、アイリスが蛇を引きつけているようです。いえ、遠くからリッカが弓で援護しています。流石に、マフラーが地面についていますが、止まっているとは言え、素早く動く蛇に矢を当てるとは、大した技量です。

 私とグリモアは光属性の魔法を中心に使っていますが、前衛がしっかりしているので、かなり楽が出来ています。まぁ、火力は上げられますが、上げすぎるのは迷惑にしかならないので、ちょうどいい塩梅を考える必要はありますが。

 そして、そのまま順調にHPが減っていきました。そして、HPが10%を切り、危険域を示す赤色に変わると。


『GYAAAA』


 スフィンクスが突如吠え、前衛の三人の動きが無理やり止められています。ただ、HP管理もしっかりしていたので、無防備なところに一撃貰ったとしても、そのままHPが全損するようなことはありません。

 行動パターンは変化したようですが、事前情報通り、飛ぶようなことはなかったので、そのまま順調にHPを削っていきました。

 その結果。


 ――――Congratulation ――――


 無事、突破することが出来ました。更に。


 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――

 【跳躍】がLV30MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【軽業】 SP3

 このスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――


 他にも治癒魔法がLV10になったので、エリアヒールが使えるようになりました。エリアと付いていますが、PTメンバー全員を一度に回復するそうです。私には無用の長物となりそうな気がしますね。後、距離的な制限が気になります。

 他のスキルは、惜しいレベルのものが多いですが、軽業を取って終わりです。


「スキルの確認はそこまでにして、そろそろ行くぞ」


 アイリスも呼んでいるので、入ってきたのとは反対側の扉から出ると、そこは街の中央にあるポータルでした。そのままポータルを登録し、少し離れてハヅチ達を待つことにしました。

 そうは言ってもそこまで待つこともなくハヅチ達が現れました。


「お待たせ」

「そこまで待ってないよ」


 ハヅチと時雨のやり取りは放っておいて、ここから見える範囲の街並みを眺めることにしました。街の北側にはピラミッドがありますが、王の墓を街中に置くとは……。

 何かの相談が終わったハヅチと時雨は、クランメンバーを集めてウェスフォーの冒険者ギルドからクランハウスへと向かいました。とりあえず、散策はそれぞれの好きなように行うということで、今はログアウトです。





 いつものように寝る準備を済ませ、夜のログインの時間です。

 最後のログアウトがクランハウスでも、そこへ入ったのはウェスフォーからなので、ログイン地点はウェスフォーのポータルです。


「【召喚・ヤタ】」


 まずは召喚しておきましょう。何をするにしても、召喚しない理由はありません。

 辺りを見渡すと北側にあるピラミッドは方角の目印になりそうですが、あからさますぎる場所なので、向かうのは後回しにしましょう。

 最初に向かうのは冒険者ギルドや商人ギルドのある東側にしました。この街の入口自体は古の都の入り口と同じですが、一度ダンジョンをクリアした場合、門の街側からダンジョンへ入ることが出来ます。周回する場合は、街の施設が使えるので、外ほど露店は多くはありません。NPCが売っていない物を売っている人もいるようなので、そういう人くらいですね。

 そのまま街を眺めてNPCのお店を覗いていますが、特に珍しい物は売っていないようです。魔力紙の上位アイテムでもあればと思いましたが、下級スキルしか持っていないので、あっても使わないですね。

 南側には湖がありました。NPCに話を聞くと街の北側からピラミッドの下を通り、西側を経由してくるそうです。その他に、街を南側へ抜けた川は、東にある川と遠くで合流するそうです。そのせいか、川魚も取れるそうで、ここには魚屋もありました。後は、サボテン料理屋もありましたが、手は出さずにおきましょう。

 次に西側へと足を運びました。そこには何と、資料館がありました。図書館ではなく、資料館と書いてありますが、私には違いがわかりませんし、エスカンデの図書館の利用登録がしてある場合、ここで新たに登録する必要はないそうです。そのうち、利用するとして、今は放置です。

 最後に北側へ向かいました。あからさまに何かありそうなピラミッドは後回しにするとして、まずはその手前にある神殿らしき場所にしましょう。

 静かにしなければいけない気にさせる雰囲気を醸し出す神殿では、聖職者の格好をしたNPCと、薄着に武器を手にした武官と思われるNPCがいました。流石に全身鎧を着たりはしないようです。あれは蒸れそうですから。


「入信でしょうか? 観光でしょうか?」

「観光です」

「では、ご自由に御覧ください。ただ、立入禁止区画があるので、ご注意を」


 受付に近寄っただけで何が目的か聞かれました。ただ、うろついているだけなので、観光以外に言いようがありません。生憎とここで入信するような柄ではないので、何かクエストが出るかもと思っても、入信とは口に出来ません。自由に立ち入れる範囲には目ぼしいものがなく、すぐに見終わってしまいました。

 思った以上に時間がかからなかったので、今度はあのあからさまなピラミッドへ向かうことにしました。ピラミッドの周りを一周してみても、入り口は1ヵ所しかなく、警備兵が立ち塞がっています。近付いてみても。


「ここは立入禁止だ。立ち去れ」


 これしか言いません。物は試しと思って何度か繰り返してもまったく変わりませんでした。夜になったら、忍び込めるかもしれませんが、それまでログインして待っているのは面倒ですし、入れなかったら時間の無駄なので、やめておきましょう。


ハヅチ:リーゼロッテ今いいか?


 おや、ハヅチからの個別チャットです。クランを作ってからというもの、いちいちメッセージのやり取りをしなくていいので、かなり便利になりましたね。


リーゼロッテ:どしたの?

ハヅチ:ちょっとおもしろい情報を手に入れてな。装備欄にアクセサリを追加出来るようになるクエストがあるらしいんだ


 ほうほう、アクセサリですか。てっきり、持ち物装備がその代わりだとおもっていたのですが、別に存在していたんですね。


リーゼロッテ:それで、私に何をしろと?


 クエストということですから、何かを作って納品するのでしょうか。装備欄を開放するためのクエストですから、何が必要になるのか見当もつきません。


ハヅチ:今わかってることは、ダンジョンに潜ることだけだ。今はクランハウスで時雨達も相談してるから、行く気なら、戻ってこい

リーゼロッテ:りょーかい


 そんなわけで急ぎクランハウスへ向かうことになりました。





 クランハウスへと戻ると、時雨PTは勢揃いしています。


「お待たせ」

「観光中にごめんね」

「いやいやいや、装備欄開放の方が優先順位高いから。それに、面白そうなものなかったし」


 私の言葉を聞き、時雨は安心したような、がっかりしたような、そんな微妙な表情をしています。きっと心の片隅では私が妙な物を見付けることを期待していたんですね。その期待に答えないわけにはいかないので、気が向いたらそのうち何か見付けてきましょう。


「それじゃあ、発生条件だけど、北にある神殿の受付で、入信か観光かって聞かれるんだけど、奥のピラミッドについて聞くことが発生条件なんだってさ」


 ……は? 何故に入信か観光かと聞かれて全く違うことを聞くのでしょうか。詳しく教えてほしいなどのワンクッションを挟むのなら、まだわかりますが、ストレートすぎますよ。


「そうすると、北のピラミッドに入るための許可証をくれるから、そこで必要なアイテムを揃えるだけらしいよ」


 く……、あのピラミッドは許可制ですか。してやられましたね。


「後は……、今分かってる範囲だと、ランダム生成でMOBは古の都と同じような構成だってさ」

「ボスはいるの?」

「いるらしいんだけど、大手クランから漏れ出た情報だから、よくわかってないんだよね」


 ほうほう、大手クランからの情報ですか。人の口に戸は立てられないということですね。


「リーゼロッテにも確認しておきたいんだが、一緒に行くか?」

「もっちろん」


 アイリスからの問いかけにぐっと親指を立てた手を突き出しました。というか、ダンジョンにソロで挑む気はありません。周回可能かわかりませんし、可能だったとしても二度も同じところに行かせるのは気が引けますから。


「古の都ではあんまり消耗しなかったから、補給する必要はないと思うけど、明日の午後にする? 夜にする?」


 後は時間ですか。ポーションくらいなら、私が作れば済みますし、食料アイテムも私が作れば済みます。装備の耐久が心配なら、夜に回せばいいのですが、そんなに減りませんでしたね。

 とりあえず、午後の様子見で行ってみて、行けそうならそのまま行って、ダメなら夜か、後日に回すことになりました。

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