1-15

 翌朝、寝ぼけている葵にイベントの賞品の鞄の作成について聞くと、もう出来ているということなので、夜に取りに行くことにしました。オババの店に持っていくと言われたのですが、トーナメントに出場するためにPTメンバーとPVPの練習をしている所に、私が取りに行くことにしました。場所は、ワタワタの出現する南東の森なので、どの辺りかわかれば問題なく向かうことが出来ます。もちろん、追加で作ったスクロールについてはまだ秘密です。

 学校では伊織に初オアシスの感想を聞きました。


「一応最初の町の周りだからそこまで強くなかったね。道中のサボテンの方が厄介だし」

「確かにね。オアシスよりも西には行ったの?」

「うんん、行ってないよ。そこは全員揃ってから行こうってことになってるから。……それで、一つ頼みがあるんだけど、一応、今日他の二人とグリモアが行くことになってるの。でも、何かあったら、茜に頼みたいんだけど……」

「んー、別にいいよ。何かあんの?」


 今日行くことになっているとのことですが、心配なことでもあるのでしょうか。


「モニカ、覚えてる?」

「盾の人でしょ。結構助けられたよ」

「うん、そのモニカなんだけど、前にあのサボテンに狙撃で新品の盾を貫かれてね……。ちょっと心配なの」


 あー、そういうことですか。ちょっと元気がいい人なので、エリアシールドの範囲から飛び出して行かないか心配だということですね。


「ま、連絡くれれば手伝うから」

「ありがとね」


 お昼を食べながらこんな会話をしていたのですが、教室へ戻る時、私達に声をかけてくる人がいました。


「御手洗さんに東波さん、ちょっといいかな?」


 誰でしょう。私の名前を知っているようですが、私に見覚えはありません。


「……よくない」


 ちょっといいかと聞かれたので、よくないと答えればそれで終わりのはずです。


「茜もこう言ってるから、じゃあね、池田君」


 どうやら伊織は知っているようです。まぁ、興味ないので、どうでもいいですが。


「茜、クラスメイトの顔くらい覚えようよ」

「?」

「いや、不思議そうな顔しないでよ。それに、月曜日にも声かけられたじゃん」

「……覚えてない」


 興味なかったので全く覚えていませんでした。クラスメイトの顔か名前くらいは覚えようと思っていますが、何せ一年ありますから、ゆっくりやっていくつもりです。


「二人共、教室戻るんなら一緒に行こうよ。顔を覚えられてない気はしたけど、月曜のことも忘れられてるとは思わなかったよ……」


 忘れているわけではありません。何故なら、忘れるには一度覚える必要があるからです。そもそも覚えていないのですから、それは知らないということです。


「サボテンとか狙撃とか聞こえたけど、HTOの西の砂漠の話だよね。二人共、あそこに挑んでるのかな?」

「貴方には関係ない」

「いやだって、あそこってリーゼロッテって人以外誰も突破できてない場所だよ。そのプレイヤーも全然掲示板とかに出てこないから、変な噂されてるし」


 掲示板とか面倒なので一切使っていません。よく考えたら公式のwikiにもほとんど目を通していませんでした。まぁ、それでも困らないので気にする必要もないでしょう。


「私達は池田君の手伝いを断ったんだから、気にしなくていいよ」

「でも、せっかくクラスメイトが同じゲームをしてるんだか――」

「ちょっと晴人ー、そんなところで何してんのー?」


 私と伊織は歩き続けているのですが、クラスメイトの人だけは立ち止まっています。まぁ、一緒に戻る気もないので、放っておきましょう。


「いや……」

「ちょっと二人共、待ちなさいよ」


 さて、トーナメント用の鞄が作り終わってるなら、葵の裁縫スキルもレベルが上がっている可能性もあるので、葵のPT分の魔石も用意してから向かってみましょうかね。


「伊織、グリモア達が砂漠に挑戦するのって何時くらい?」

「え、えーと、ちょっとわかんない」


 それは残念です。まぁ、葵への用事が終わってからなら、リターンで街に戻ればいいだけです。


「ちょっと東波に御手洗、待ちなさいよ」


 聞き覚えのない声なので、不機嫌そうな顔をしながら声のする方へ振り向きました。けれど、誰が言っているのかわからないので、誰にこの不機嫌さを向ければいいのでしょうか。


「ちょっと、どこ見てんのよ。こっちよこっち」

「ああ、えーと……、誰?」

「茜、クラスメイトの神宮さんだよ」


 あー、この人もクラスメイトですか。まぁ、ゆっくりと覚えればいいですね。


「それで、そのクラスメイトが何の用?」

「あんた達、晴人に何の用があって一緒にいたのよ」

「はる……と?」


 まったく、用があるならわかりやすく話して欲しいです。


「さっきの池田君のことだよ」


 私が知らないとわかっていたため、伊織が普通に教えてくれました。けれど、もう少しわかりやすく教えてほしいです。


「……?」

 わからないので首をかしげてしまいました。それを見たクラスメイトらしい女子は、何か安堵しています。


「薫、俺から話しかけたって言ってるだろ。御手洗さん達に当たらないでくれよ」

「晴人、さっきから東波東波……、え、御手洗の方?」


 クラスメイトらしい女子が私と伊織の胸を見比べてから、自分の胸を見ています。待て。何が言いたい。


「……晴人、ちょっと来て」


 そういってクラスメイトの女子はクラスメイトの男子を引きずってどこかへ行ってしまいました。まったく、一体何だったのでしょう。


「そういや、ラクダは皮落とした?」

「突然だね……。流石にドロップ率アップも終わったから、そんなに集まってないけど、全員の装備更新出来るくらいは集めるつもりだよ」

「そっか。じゃあ、それが終わったら鞄の分、お願いね」


 成功するかはわかりませんが、失敗しても出回ってない素材である以上、利益は独占出来ます。伊織と葵達の金策になるのなら、あそこは任せてしまいましょう。






 その日の夜、いつものようにログインしました。ハヅチが特訓をしているはずの場所へ向かう前にオババの店により、魔石(小)を20個買って昇華しておきましょう。手持ちに魔石(中)が3個あります。ハヅチのことですから、何だかんだで人数分の鞄を用意していそうですし。

 センファストの南東にある森を進み、ハヅチから指定されている場所へと向かいます。ハヅチから地図のスクリーンショットが送られてきているのですが、やはり目印がないと道に迷ってしまいます。途中、乱獲した経験のあるワタワタの群れに遭遇しましたが、ウェイブ系をテキトーに使うだけで終わっていまいます。これが成長というものでしょうか。

 しばらく進むと何やら金属のぶつかる音と、話し声が聞こえてきました。それに、この先は何やら開けた場所のようです。


「よし、両方にスピードアップを頼む」

「OK、行くよ」


 開けた場所で、ハヅチとそのPTメンバーらしき人達がPVPの練習をしています。さて、ここからどうしましょう。


「ん、誰かいるぞ」

「たまたま通っただけだろ」


 よし、ここはあの手で行きましょう。


「ハヅチくーん」


 満面の笑みを向けながら元気よく手を振ります。性に合わないという自覚はありますが、ハヅチを困らせるためです。多少の被害には目を瞑りましょう。


「あ、ああ」


 ハヅチは反応に困っているようです。そりゃそうですね、いつもはこんなことしませんから。いえ、困らせる時にはよくやりますね。そう考えると、毎度同じ手というのもつまらないです。ただ、魔法使いらしき格好のPTメンバーの女の子には睨まれて、敵意を向けられている気がします。


「邪魔しちゃってごめんね。渡したいものがあったから」


 うーん、こう、可愛い子ぶってる感じがどうにも無理です。


「ちょっとちょっと、何? ハヅチに何の用?」

「何ですか、いきなりやってきて」


 はてさて、時雨PTとあったことがあると聞いていますが、その時もこんな感じのことがあったのでしょうか。それとも、ヤキモチでしょうか。まったく、この主人公め。


「まぁまぁ、それで、ハヅチに何かようか?」


 別のPTメンバーが仲裁に入ってきたので、よくあることなのでしょう。


「はい、……あー、ちょっと待って下さい」


 疲れました。ハヅチの困った姿を見る前にPTメンバーと絡んでしまうとどうにも調子が出ません。頭を振って切り替えましょう。全員が近付いたのを確認して、最後の一言だけにします。


「いつも弟がお世話になっております」


 帽子を取って頭を下げました。さて――。


「ちょ、ちょ、ちょっと、ちょっと待て、何やってんだ」

「え、いやー、弟がPT組んでる相手だよ。姉として挨拶しておかないと」

「いや、どう考えても仲のいい女の子のていでおちょくろうとしてただろ」

「そうだったんだけど、調子でないから、攻め方を変えただけ」

「だからって、何でそれなんだ」


 本来、ネット上でリアルの話はご法度ですが、あの二人から向けられる敵意を回避するにはこれしかありません。


「それはそうと、頼んであったの、もらいに来たんだけど」

「……その前に、紹介しとく。こっちはリーゼロッテだ。そんで」

「俺はブレイクだ。よろしくな」

「僕は影子」


 小さいボクっ娘ですか。中々に有望そうな可愛い娘ですね。


「俺はロウだ!」

「私は花火です。お姉様とは知らず、失礼なことを言ってしまいましてすみませんでした」

「私はヒツジ。さっきは勘違いしてごめんごめん」


 ふむ、花火はお嬢様風で、ヒツジは元気印といったところでしょうか。何ともバラエティに富んだPTです。ハヅチがちゃんとまとめられているのか心配ですが、こうして特訓に付き合ってくれる仲なら心配はいらないでしょう。


「リーゼロッテです。今日はハヅチに用があってお邪魔しました」

「つーわけで、悪いけど待っててくれ」


 ハヅチからのトレード申請があり、トーナメントの賞品用の鞄を受け取りました。後はこれに刻印し、魔石を埋め込めば完成です。センファストの闘技場に持っていけば納品する場所があるらしいので、場所を見つけて刻印しておきましょう。


「それで、これ、頼まれてた装備と、試作品の鞄だ」

「おー、ありがと」


 装備が四つ……、ですか。二つくらいなら作れると聞いていたはずですが。


「皮の追加もらったから、その分も含めてある」

「そんじゃ、私も追加分ね」


 私からは追加の皮とショートジャンプのスクロールを出します。その文字を見て、ハヅチは溜め息をついています。私が変なものを持ってくるのには慣れているので、諦めただけなのでしょう。

 渡された装備はこれです。


――――――――――――――――

【魔女志願者のスカート】

 魔女を目指す者が身に着けているスカート

 耐久:100%

 防御力:▲

 魔法防御:▲

 INT:▲

 MP:▲

 MP回復量:▲

――――――――――――――――

【魔女志願者のブラウス】

 魔女を目指すものが身に着けているブラウス

 耐久:100%

 防御力:▲

 魔法防御:▲

 INT:▲

 MP:▲

 MP回復量:▲

――――――――――――――――

【魔女志願者の手袋】

 魔女を目指すものが身に着けている手袋

 耐久:100%

 防御力:▲

 魔法防御:▲

 INT:▲

 MP:▲

 MP回復量:▲

――――――――――――――――

【魔女志願者のブーツ】

 魔女を目指すものが身に着けている編み上げブーツ

 耐久:100%

 防御力:▲

 魔法防御:▲

 INT:▲

 MP:▲

 MP回復量:▲

――――――――――――――――


 ハヅチから数値を聞くと、全体的に能力値が高いです。流石は上質と名がついている素材だけのことはあります。それにしても、ブーツは茶色ですが、ブラウスは白く、スカートや手袋は魔女らしく黒いです。元の素材の色は関係ないのでしょうか。


「色はスキルで変えられるんだよ」

「へー。ま、いいデザインだよ。ありがとね。そんじゃ、実験しますか」


 私はハヅチから渡された装備を身に付けようとしましたが、腕には【銅の肘当て】が残っていました。耐久ももうないのでそのうち壊れますが、捨てるのもあれなので、鞄のインベントリに入れておくことにしました。

 さて、気を取り直して実験です。上質な肩掛け鞄を取り出し、スキルを使います。


「【刻印】【魔石融合】」


 構造自体は私が使っているものと変わらないので、刻印する場所はわかっています。そして、鞄のインベントリに放り込んであった魔石(中)を融合しました。すると、アイテムの名称が【上質な肩掛け鞄】から【上質な肩掛け鞄・インベントリ(中)】に変わりました。どうやら成功のようです。


「成功したよ」


 今度はハヅチに手渡しトレードで渡します。そして、もう片方の手でもっと寄越せと合図しました。


「……お見通しか」

「何だかんだ理由つけて装備一式用意した時点で確信したよ」


 ハヅチは鞄を受け取ると更に4個の鞄を出してきました。私の装備と鞄で何枚使ったかはしりませんが、ハヅチのためですから、協力を惜しむ気はありません。魔石(中)にしておいたので、刻印と魔石融合だけで済みます。これでインベントリの大きさに違いはあれど、全員がインベントリを刻印した鞄を手にしたことになります。


「ありがとな」

「うんにゃ、いいってこと。それと、スクロールの補充は言ってね。魔法の追加でもいいけど。それで、そっちの装備更新が終わったら、鞄、お願いね」

「ああ、任せとけ」


 ハヅチに別れを言い、街へ戻ろうとすると、声がかかりました。


「あれ、リーゼロッテさん、もう戻るの?」

「受け渡しも済みましたし、邪魔してもなんなので」

「いえ、お姉様が邪魔なんてことはありません」


 ……いつからお姉様になったのでしょうか。私はそう呼ばれるタイプではないのですが。まぁ、ハヅチの弱みに付け込んでそう呼ばせることもありますが、あくまでもたまにです。自ら進んで呼ばれても何も楽しくありません。


「そうだよ。リーゼロッテさんもハヅチのトレーニング手伝ってよ。花火はまだ付与魔法取れてないから、一人だと手がたらないんだよ」


 ふむ、どうしましょう。手伝う分には構いませんが。


「まぁ、今日はやること決めてないんで、用事が入るまでなら」


 そんなわけで私はハヅチの模擬戦の際に付与や回復を手伝うことになりました。模擬戦中、手の空いている面々は周囲のワタワタを倒し、ウェストポーチの材料を確保しているようです。ちなみに、付与魔法を取るには4種類の魔法スキルを取る必要があるのですが、大体の人は2個か3個しか取っていないようです。そのため、まだ取得できていない人もいるそうです。私としては、普段あまり使わない付与魔法と治癒魔法のレベル上げが出来るので文句ありません。


「リーゼロッテさんって本当に魔法陣使えてるんだね」

「取る?」

「……いや、今取ると妬まれそうだから、情報が広まってからにしとく」

「じゃあ、後で魔力操作だけ教えとくね。ハヅチが魔力制御までいってるかわからないけど」

「私だけなら、遠慮したいかな」


 あー、仲間思いというか、抜け駆けはしたくないということですか。


「ちゃんと、ヒツジと花火の二人に教えるよ」

「そう、ありがと」


 ふむ、ヒツジは中々いいこですね。ちゃんとお礼が言える人なら、情報を渡したくもなります。まぁ、ハヅチ経由である程度の情報は回っていると思いますが。

 長時間の模擬戦は飽きるので、休憩を挟んだり、今後について話し合ったりしていました。その際、初めは三人で作る予定だったクランがハヅチと時雨のPTも巻き込んで作ることになりました。何だかよくわからないうちに話が進んでいたようですが、二人のPTメンバーなら、構わないでしょう。


「そうだ。使ったスクロールの補充と、ランス系も貰えないか?」

「ランス系かー。属性何でもいいの?」

「ああ、何でもいいぞ。ただ、ダークランスだと嬉しいかな。冥魔法持ってるから」


 ハヅチは闇だけは持っているんでしたね。まぁ、残念ながらそこまでレベルを上げていないので、ありませんが。


「マジックランス」


 私はその辺の木に向かって無魔法を使いました。これは誰も知らないようで、驚いています。


「無魔法のこれでいい? 半透明でわかりにくいし」

「それって、俺が面倒になるやつだろ」

「そだよ」

「……まぁいいか。じゃあ、雷魔法も追加してくれるか?」

「ボルトでよければ」

「ああ、それでいい」

「りょーかい」


 私は手持ちの魔力紙でマジックランスとライトニングボルトと補充分を刻印しました。これで残りは0枚なので、オババの店で補充しなければいけません。


「さて、ヒツジと花火は手を貸して」

「ん? 何すんの?」

「お姉様、どうぞ」


 それぞれ別の反応をしながらも手を差し出してきます。こうも簡単に言うことを聞いてしまうと、お姉様は心配です。ですが、二人の手を掴み、遠慮なくMPを流し込みます。


「……んんん」

「ちょ、何これ」


 ふむふむ、ヒツジの方は余裕がありそうです。ただ、花火の反応には違和感を覚えました。二人同時ということもありMPの消費が激しいですが、眼福なのでよしとしましょう。


「あ、熱い」

「お、お姉……」


 悶える様子を見ていると。


 ピコン!

 ――――System Message・スキルを伝授しました―――――――――

 【魔力操作】を伝授しました。

 SPを2入手しました。

 ―――――――――――――――――――――――――――――


 どうやら二人に教え終わったようです。可愛い子が息を乱しているのは見ていて楽しいですが、無意味にやるのは好みではないので、次の機会を楽しみにしましょう。


「詳しいことはハヅチに聞いてね」


 この後も何度か模擬戦を行い、解散となりました。ハヅチのPTは固定PTですが、完全に固定しているわけではなく、他の知り合ったPTとメンバーを入れ替えたりと、他のプレイヤーとも交流しているらしく、ある程度の自由時間があるそうです。ハヅチはその時間を生産に費やしたりしているようですが、持ち物装備の場合、ステータスに影響しないため、スキルから複製が出来るとかで、大した時間はかからないそうです。私は街へ戻ると、オババの店へ行き、魔力紙を補充しました。手持ちの魔力紙が少なかったため、ハヅチの分は補充しきれていませんが、明日でいいということなので、用意だけしておきましょう。ついでにトーナメント用の鞄に刻印し、魔石を埋め込んだので、後は闘技場へ納品しに行くだけです。

 闘技場へ着くと、どこかのコロッセオの様な作りになっていました。中に入り、納品受付へと向かいました。数人のプレイヤーが納品に訪れるプレイヤーを確認しているようですが、普通の装備品を納品するプレイヤーは、間違いなくトップ生産者のはずなので、何かしらの繋がりを作ろうとしているのでしょうか。見た目からして生産者に見えない私には声をかけてこないはずなので、さっさと納品を済ませてしまいましょう。


「おいあんた、生産者か?」


 さて、今日はやることもありませんし、ログアウトしましょうか。ラクダを狩るほどの――。


「おい、聞いてんのか!」


 突然肩に手を置かれたので払い除けながら振り返ると、見たことのないプレイヤーがいました。まったく、聞いていないのに何なのでしょう。


「……」


 不機嫌な眼差しを向けると、相手はたじろぎ、勢いが無くなっています。どうやら用もないようですね。


「…………ま、待ってくれ。あんたは納品に来た生産者だろ。報酬はちゃんと用意するから、俺にも装備を作ってくれ」

「……はぁ、人違い」


 さて、気分が悪いですが、今日はログアウトです。





 翌日、宿題に追われていたためログインが遅くなりましたが、ハヅチの特訓の手伝いに参加し、スクロールの追加を行いました。やはり、他のプレイヤーが使うのと、自分で使うのではタイミングが違うらしく、スクロールの消費が激しいようです。それと、微妙にハヅチの装備が変わっているので、ラクダの皮で装備を更新したようです。

 この日も、ハヅチの手伝いをし、ログアウトしたので、明日はトーナメントです。詳しい予定は知りませんが、後で本人が教えてくれるでしょう。

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