39話目 牧場長
さすがに、今日は仕事をしよう。昨日は、想定外のことがいろいろあって舞い上がっていたが、今日からは勤め人らしくしよう。
ドアを出て左へ向かい、エレベーターに乗り最上階へ。白い廊下を行き、インド人を右へ。今度は、インド人の像がはっきりと見えた。なぜ、ひと目見ただけでインド人と分かったかというと、その像は坊主頭で、
これは、インド人で、かつヨガを極めた者にしかできないパンチであることを、俺は知っているのだ。そして、その事実が宇宙人にも浸透しているのかと思うと、なかなかに感慨深いものがある。
いや、もしかすると、宇宙から地球に輸入されたアイデアなのかもしれないが。
右手の壁を通り抜けると、間もなく、スチームクリーナー似の兵士が、昨日同様、扉を守っていた。
もはや、顔なじみなので、片手を上げて軽く通り抜けようとしたそのとき。
「貴様、地球人だな!」
昨日同様、兵士は光線銃をぶっ放してきた。光線が、顔のすぐ横をかすめる。
「あれ、昨日は通してくれたじゃないですか」
「その手には乗らん」
「覚えてないですか。昨日、ハニワの欠片と一緒にここに来た者です。ハニワの修復と、おっぱい星人ビジネスのためにと説明したら、通してくれたじゃないですか」
「あいにく、おれは昨日、別の場所に配置されていた。お前のことなど知らん」
兵士は、
「とりあえず、撃つのやめませんか」
「銃を撃ちたくてこの仕事をしている」
このセリフは昨日も聞いた。兵士になる動機とは、みんなそんなものなのだろうか。
「そんなに撃ちまくって、当たったらどうするんですか」
「負傷をして、運が悪ければ死ぬだけだ。実際、過去に
そういえば、最初に母艦に来る前にササキが言っていた。地球人が母艦に乗るには、最悪、死を覚悟する必要がある、と。
その理由がこの兵士であることに、今さらながら気づいた。
そして、もうひとつ、今日はササキが一緒ではないことに気がついた。いや、そのこと自体は認識していたのだが、それが意味するところに気づいたというべきか。
何かあったときに、宇宙人相手に事情を話してくれたり、俺相手に状況説明をしてくれる存在が居ないのだ。これは、思ったより厄介な事態かもしれない。
ここへ来て、ササキの存在の大きさを感じた。
今までひどい扱いをしてきたが、今度会うことがあったら、もう少し優しく接しようと思った。
さて、この場をどうしたものか。
「ステンノさんから頼み事をされていて、ハニワ工房に行かないといけないんですよ」
実際にはまだ頼み事はされていないが、昨日、ステンノに言われた言葉を思い出し、苦し紛れに言ってみた。
「ステンノ樣だと……? ああ!」
兵士の
「貴様、まさか! 昨日、ステンノ様と一緒にスイス方面の扉を行き来したやつか!」
「あ、そうです」
「通ってよーし!」
これは、この兵士が偶然にも、昨日、スイスのあの扉の守りをしていたということだろうか。
まあ、結果オーライだ。通らせてもらおう。
「紛らわしいので、通行証を着けておくように! でないと、撃ってしまうからな」
横を通り抜ける間際、兵士はそう言いながら、4度目の光線を発射した。
ようやく母艦の中に入ることができた。昨日は、案内板を頼りに移動したが、今日もうラインが使えるので、直接牧場へと移動した。
牧場は、当然ながら、昨夜と同様、黒い金属に覆われた施設だった。ラインから出た場所がロビーのようになっており、そこから長い廊下が伸びている。
廊下の左右の壁には、等間隔でガラス窓のようなものがはめ込まれており、まるで水族館のように思えた。
さらに、牧場内を移動するためのラインも張り巡らされているようで、あちこちにラインの先端が見える。
廊下に入る手前のところに受付があり、犬顔の受付嬢が座っていた。来意を告げるために歩みよると、その受付嬢が、犬顔なのではなく、犬星人であることが分かった。
「すみません。わたし、山田鮮魚店の
つぶらな瞳で見つめてくる、スピッツの受付嬢に言うと、彼女は口角を大きく上げてリズミカルに息を吐き出し、尻尾を振りながら応えた。
「ハッ! ハッ! 少々お待ちくださいませ!」
続けて、受付デスクの上にあるボタンを、右手の肉球で押し、卓上マイクに向かって吠えた。
「キャンキャンキャン! キャキャンキャン」
数秒後には、牧場内のとあるラインから、牧場長らしき者が姿を現した。
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牧場長は何星人? どんなやつ? なんでもいいので特徴ください。
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