16話目 案内

 扉の前には、こちらに銃を向けた、人型の兵士が居た。そいつは、全身を白い装甲で固め、関節部分にのみ黒い裏地のようなものが見える。ずいぶんと、意地の悪そうな顔に見えたが、どうやらそういう形のヘルメットをかぶっているらしい。


「こういう兵士、見たことあるでしょう」


 ササキが言った。


「ああ、なんか有名な映画に出てるやつだよね」

「それです」


「スターソルジャーみたいな名前の」

「それは16連射のシューティングゲームでしょう」


「その映画に出てくる、スチームクリーナーみたいな名前の兵士」

「それは、全然汚れが落ちないインチキ商品でしょう」


「君、結構、地球の事情に詳しいね」

「だてに、大昔から土器やってませんよ」


 あえて、しばらく白い兵士を無視して会話を続けていたが、とうとうそうもいかなくなった。


「きさま、地球人だな!」


 言うやいなや、兵士はいきなり撃ってきた。光線が、顔のすぐ横をかすめた。どうやら威嚇射撃らしい。


「ここへ何しにきた!」


 再度ぶっ放してきた。最初に無視された腹いせなのか、やたら荒々しい。


「わたくし、こういうものでして。この度、こちらの母艦の中でおっぱい星人を養殖されていると聞きまして、ビジネスのお話ができないかと」


 そう言って名刺を差し出した。


「ビジネスだあ?」


 あからさまに怪しみつつも、名刺を受け取ってくれた。


「山田鮮魚店……あんた、あの会社のもんか」


「あ、弊社をご存知なんですか」

「そりゃな。このビルの1階にある、人身売買の会社だろ。この母艦からも、何人なんにんか出向してるんじゃなかったか」


 ササキのことか。いや、「何人か」と言ったな。うちの会社には、ササキ以外にも変なのが紛れ込んでるってことか。


「しかし、山田鮮魚店のもんだとしてもだ。地球人がどうやってここに来た」


 兵士は銃口をこちらに向け直した。


「僕が案内してきたんですよ。この人は、この通り、だいぶこちら側に来てしまってましてね。もう母艦自体も見えてるんです」


 ようやくササキが喋りだしてくれた。こいつ無しで話を進めるのはさすがに無理があった。

 念の為、内ポケットの中からササキを取り出して、兵士によく見えるようにした。


「ハニワがそんなところで何をしている。祝賀パレードはどうした!」

「それが、この通りでして、ハートブレイクでボディブレイクなんですよ」


「何を言ってるのかまったく分からんが、ボディ修復のために母艦に入りたいということか?」

「はい。ついでに、さっきこの人が言った、おっぱい星人ビジネスの話も本当です。この人は、割れた僕をわざわざここまで連れてきてくれたんです。もう、こっち側の存在なので、地球人ではありますが、危険はありません」


「良いだろう。通れ」


 と言いながらも、兵士は三度ぶっ放してきた。


「なんで撃つんですか」


 素朴な疑問をぶつけてみた。


「銃を撃ちたくてこの仕事をしている」


 答えになってるのかよく分からなかったが、とりあえず殺されなくて良かった。

 脇に避けた兵士の横を通り、扉を開いた。


 薄暗い空間に無数のコンピューが並んだ、いかにも宇宙船の内部らしい光景を想像していたのだが、そうではなかった。


 中は、廊下同様の白さで、だだっぴろい空間になっていた。入ってすぐ横に受付らしきものがあり、母艦内の案内図のようなものが書いてあった。

 操縦室、遊戯室、牧場、ハニワ工房、レストランなど、思った以上にたくさんの施設があるようだ。


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 まずはどこに行く?

 上に書いてない施設でも可

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