13話目 撤回
この問に、しばし悩んだ。
自分の心には、まだ疑念があるのだ。
いっぽうで、本当に宇宙人の話をしている可能性も捨てきれない。
あごに手を当て、悩んでいるさなか、ふいにひらめいた。
この地球に、いや日本に、それどころか自分の身の回りにも確実に存在する、ある星人がいることを。
この回答であれば、冗談としても成立する。しかし、相手が本気だった場合にどうなるか。それは出たとこ勝負だ。
意を決して答える。
「おっぱい星人フェア……なんでどうでしょう」
「良いですねえ。山田さんのところで、そっち方面のネタも扱ってるんですか。魚介星人専門だと思ってましたが」
こう来たか。そっち方面とはどっち方面なのだろう。
ここは適当に話を合わせるしかない。
「ええ、まあ。探してみると、意外と身近なところに居るものでして」
「それは頼もしい。では、次の目玉商品は、おっぱい星人刺しですかね」
まずい。このままでは、加藤が刺し身にされて、スシルーのレーンに乗せられてしまうかもしれない。
「刺しも良いですが、
加藤の身を案じつつも、余計な提案をしてしまう。
「僕はローストが良いと思います」
心臓が止まる思いだった。この声を発したのは
「お、ローストも良いですね」
「刺しだと、最近は衛生上の制約が多いですからね」
と、再びハニワ。
「たしかに。それを考慮すると、ローストが良い落とし所かも知れませんなあ」
再び、普通に応える
そんなやりとりを聞いていて、つい声に出して言ってしまった。
「おいハニワ。なにを普通に会議に参加してんだ」
「まあまあまあ。会議ではたくさんの意見が出たほうが良いじゃないですか」
なんだ、この
「あの、
おかしな質問である自覚はあったが、とっさのことで、他に聞きようが無かった。
「ハニワさんでしょ。そこに居る」
「これをご存知なんですか?」
胸ポケットからハニワの破片を取り出し、テーブルの上に置いてたずねた。
「そりゃそうですよ。ハニワさんとは長い付き合いですからね。あ、ハニワさんというよりも、ハニワ族さんといったほうがいいですかね。ところで、ハニワ族さんは、今日は祝賀パレードじゃないんですか?」
「アクシデントで、この通り砕けてしまいましてね。戦力外通告を受けたというところです」
なんだ、この会話は。
戸惑っていると、ハニワが小声でささやく。
「お困りのようなので言っておきますが、おっぱい星人は、人間がいうところの牛ですよ」
なんだって。加藤じゃなかったのか。
牛と考えれば、たしかに、先ほどの会話もつじつまが合う。
しかし、問題がある。うちの会社では、牛なんて扱ってない。なんせ、うちは山田鮮魚店なのだ。
「テンダーロイン握りなんてどうですか。話題性も抜群です。寿司界に新しい風を吹かせましょう」
「なるほど。あえての高級路線ですな」
まずい。こちらの気も知らずに、2人で完全に盛り上がっている。
今のうちに、おっぱい星人フェアの提案を撤回するべきか。
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