9話目 処理

「祝賀パレードに行ってました」


 そうか。そう言えば、今日はそんな行事があった記憶がある。


「祝賀パレードって、あえてはっきり言わないけど、とっても偉い人の、例のアレだよね」

「そうです。例のアレです」


「なんで、マッターホルンちゃんを置いてまで、祝賀パレードに?」

「強制参加なんですよ。僕たちハニワは、こういう行事のときに、偉い人の周囲を守ったり、参加者にまぎれて賑やかしをしたりするんです」


「え、ハニワって、そんな仕事をしてるの? 古墳の中とか上とかに並ぶのが仕事じゃないの?」

「それは大きな考え違いというものです。僕たちハニワは、太古の昔から、偉い人に仕えてきたんです。そんな僕たちの姿を見た太古の人間たちが、偉い人を埋葬した古墳に、僕たちの姿を真似た像を置いたんです。つまり、現在の人間たちがハニワだと思っているものは、僕たちの姿を真似て作った像であって、本当のハニワではないんです」


「へー。そうだったんだ。全然知らなかった」

「それはそうでしょう。僕たちのご先祖は、平安時代には人間に化けて、その存在を消すようになりましたから。そこにはいろんな事情があったみたいですが」


 これはなかなか壮大な話になってきた。

 ここを深追いするのはやめよう。


「まだ、パレードはやってるよね? 途中で帰ってきちゃって大丈夫なの?」

「朝の点呼にだけ顔を出して、途中でこっそり抜けてきたんです。大丈夫なのかと言われると、大丈夫ではないんですが、どうしてもマッターホルンちゃんを放っておけなくて」


「ここに戻ってきてどうするつもりだったの?」

「彼女をどこかに埋めて、僕も一緒に埋まろうと思ってました。そうすれば、ずっと彼女と一緒に居られるから」


「それはまた、悲しい決意だね」

「悲しいのは、こうしている間にも、あなたが彼女の肉を食べ続けてることですよ。一体どういう神経をしてるんですか」


「これは失礼。つい箸が止まらなくてね」

「あなたのせいで、僕は、身体からだも心もバラバラですよ。責任とって、僕と彼女を、安全な場所に埋めてください」


「え! 面倒くさいな」

「ここは、人としてやらないといけないところだと思いますよ。ハニワが言うのもなんですが」


 埋めるといったって、こんな巨大なクロマグロをその辺に埋めたら、数日後には、とんでもない悪臭を放つようになって、動物に掘り返されたり、通報されて業者に処理されるのがオチだ。


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このハニワと、クロマグロ、どう処理する?

どこでどうするか。場所と動詞でお答えください。

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