第84話 賢者の塔
賢者の塔にいる魔物を倒すために、妖精達から情報集めを始める。特に、塔の地下にはネズミが多くいるみたいで、ネズミの妖精に来てもらって話を聞くことに。モージル女王と一緒に来たネズミの妖精は、鼻が高く、目がクリッとした可愛い女の子の妖精。俺の前に来て報告を始めると、常に顔と目を小刻みに動かしている。
「賢者の長は、最上階に1日の大半は居ますでチュわ。
食べ物だけを持ってこさせて、一人で過ごしていますでチュー。
賢者達は常に2、3人は居るでチュね。
雇われている女の子達は、どの子も若いでチュわ。
女の子達の間ではチュー、賢者の妻になろうと喧嘩が絶えないでチュね。
賢者に言い寄って、恋人に選んで欲しいみたいでチュ。
辞めていく女の子達もいるのでチュが、常に人を募集チュています。
怪我をして辞めていく女の子達も、1人や2人ではありませんでチュよ。
中は、修羅場の様になっているでチュー」
賢者の塔の内部が修羅場……?
ワイバーン戦の時に若い賢者が城に居たけれど、いつのまにか居なくなっていた。実力を伴わない賢者で、魔物が来ても何の役にも立たなかったのを思えている。あの時の俺は賢者に憧れていて、一目彼を見たいと思っていた……。
今は、彼らを
ここは、姉ちゃん達の美貌……、を利用しようかな……? 塔に潜入させて、女の子達を追い出す。我ながらいいアイデア。
さっそく、エイル姉ちゃんに作戦の概要を
「分かったわ、トルムル。
今回の作戦に参加してくれる姉さん達を募集するのね。塔に潜入して、女の子達を追い出す。できるのなら、賢者達も追い出せばいいのね。
あとは、賢者の塔がある国のヤールンサクサ王女に連絡しないといけないわね。後継者会議の時に、賢者の塔に関して
……。そうだ、それを忘れていたよ。
それにしても、エイル姉ちゃんからそれを指摘されるとは、俺も老けてきた……? イヤイヤそれはないな、たぶん……。
姉ちゃんの見方が、大局を見れるようになったんだ。姉ちゃんの親友がこの国の王女で、彼氏は王子。彼等と話す会話の内容が、庶民的なわけないしな。どうしても、世界的な話になっていると思う。それに、後継者会議に参加している同年代の王子や王女に触発されたのかも。魔物の脅威から、世界を救う為に彼等は真剣に話していたし。
「エーねー。あー。
ヤー、サーサ……」
だめだ、言葉ではヤールンサクサ王女と言えない……。王女や王子達は長い名前が多すぎだ!赤ちゃんの俺としては、非常に言いにくい。長いのは威厳を出すためかな?
と、とにかくここは、
『エイル姉さん。ヤールンサクサ王女にコーヒーとビスコッティのお土産をお願いします』
「分かったわ。
ヤールンサクサ王女にコーヒーとビスコッティのお土産を作ればいいのね。任せて。タップリと用意して持っていくわ。それに、私たちの分や、姉さん達の分も作らないとね。モージル妖精女王の為に、小さなビスコッティもいるわ」
要領が凄く良くなったよ、エイル姉ちゃん。俺が一言いえば、先の事まで考えている。エイル姉ちゃんと友好の儀式をする妖精をそろそろ決めないと。
賢者の塔に巣食っている魔物を倒してから考えようかな。
今は、賢者の本を全部読むのが先。
とにかく妖精の数が多いので、読むだけでも大変。
それに、本の後半には最上級魔法の上をいく魔法が書かれてあるので、これも読まないといけない。少しだけ読んでみると、土性魔法は人間の形をした巨人が現れると書かれてある。
今までは、巨大なオッパイが上空に出現して、下にいる魔物を圧死させるだけだ。近い将来、この魔法が使えるかもしれないけれど、少しだけ不安が残る。
それは、最も恐怖心を植え付けられた人に、巨人が似ると本に書かれてあることだ!
その意味する所は、新生児の頃に恐怖心を俺に植え付けた、アトラ姉ちゃん似の巨人が出現することを意味している。超強力な魔法だけれど、アトラ姉ちゃんの前では使いたくないんだけれど……。
何故なら、この巨人は服を着ていないみたいで、オッパイ丸出しで戦うみたい……。それを見た姉ちゃん達が、俺に示す反応は……? アトラ姉ちゃんが、それを見て喜ぶかな?
それとも……怒るかな?
考えるのはもう止めよう。まだまだ先の話だし……。
◇
ヤールンサクサ王女の小さな体が、怒りに震えている。
「それは、本当のことなのですか!?」
リトゥルが王女に再び言う。
「ああ、間違いのない事じゃよ。
それで、ハゲワシ殿に頼んで賢者の塔にいる魔物退治をお願いしたんじゃよ」
情報が漏れて、賢者の塔にいる魔物が逃げるといけないと思ったんだよな。それで事前連絡しないで、賢者の塔があるこの国の城まで来た。
表面上は親善訪問にしたけれど、本当の目的を今初めて王女に話した。ま、驚くのは当然だよね。
「元賢者の長であるリトゥル様も、最近まで賢者の長が魔物だとは気が付かなかったのですか?」
リトゥルは悔しそうに言う。
「ヤールンサクサ王女は痛い所を突いてくる。まっこと、その通りなんじゃよ。
まさか、あの有能な若者が魔物とは! 当時は全く気が付かなかったんじゃよ。
今回は、
エイル姉ちゃんが、今回の作戦を俺の代わりに話してくれる。
「塔にいる女の子達が戦いの時に巻き添えになるので、追い出しています。
すでに、姉さん達とヒミン王女が塔の侵入に成功しており、ほとんどの女の子達の追い出しに成功したと報告がはいっています」
ヤールンサクサ王女は少し考えてから、俺を見た。
「役に立たなかった賢者達でも、人々にとっては希望そのものでした。この世から賢者達が居なくなってしまうと、人々は希望を失います。賢者に変わる希望の光が人々には必要です。実力と知名度からいえば、噂のハゲワシが新しい賢者の長になってもらうのが妥当だと思うのです。
そこでトルムル様にお願いがあるのです。ハゲワシであるトルムル様に、賢者の長になって欲しいのですが?勿論、各国の王や女王達の賛同は必要ですが、間違いなく了承されるでしょう」
お、俺が〜〜〜〜〜〜!! 賢者の長に〜〜!!!
まだ、俺、赤ちゃんなんですけれど……。
突然の申し出に、頭の中が掻き乱される。賢者の塔にいる魔物を倒した後の事は考えていなかった……。よく考えれば、賢者がこの世界に居るだけで、人々は安心して暮らせる。精神的に支えがないと人々は不安になってしまう。理屈はわかる。わかるけれど、俺がその賢者の長に……?
それに、リトゥルからスケベの何たるかも習い始めていないんですけれど……? いまだに俺は、オッパイ恐怖症が再発する。アトラ姉ちゃんの大きな硬い胸に抱かれると、完全に恐怖を拭い去る事ができない……。スケベを極める事が、俺には出来るのだろうか……??
エイル姉ちゃんが助け舟を出してくれる。
「この件に関しまして、考える時間を彼に与えてくださると嬉しいです。私個人の意見では、トルムルの名前を出さずに、噂のハゲワシが賢者の長になるのは問題ないと思うのです。
まだ赤ちゃんのトルムルが賢者の長になると、彼の事をよく知らない人々は、逆に不安になると思うのです」
あ、そうか。そういう手もあったか。俺の名前を出す必要はないんだよな。
あと、他の賢者達も必要だよな。俺一人より、賢者は多い方が人々は安心をする。姉ちゃん達とヒミン王女が、実力的には賢者級。それにウール王女も賢者級の実力の持ち主だし。姉ちゃん達に賢者になってくれと言うと、困惑するかな?
それにしても、ヤールンサクサ王女はまだ8才で、これだけの事を考えるのは凄いと思う。それを考えると、超可愛いウール王女が8才になる頃には、それ以上の能力を発揮しそう。楽しみでもあるけれど、想像できない程、凄い高い能力を発揮する可能性が高いと思うのは気のせいか……?
◇
後日、エイル姉ちゃんと、リトゥルの3人で賢者の塔に行った。
エイル姉ちゃんが、塔のドアに付いている威厳のあるドアノッカーを鳴らす。
ゴォ〜〜ン、ゴォ〜〜ン。
重厚なドアがゆっくりと開くと、中から背の高い、超〜〜美人なお姉さんが出てきた。え〜〜と、確か女の子達を追い出して、塔に侵入した姉ちゃん達しか居ないはずなんだけれど……? この人、誰……?
その人は俺を抱き上げると、大きな胸の谷間で強く強く抱き締める。
い、息がで、できない〜〜!! この抱き方は、アトラ姉ちゃんだ〜〜!!
思いっきり大暴れをする俺。恐怖が俺の心を再び支配していく。やはり、スケベになるのは絶対に無理だ〜〜!!!
エイル姉ちゃんが、またしても俺を助け出してくれた。
「アトラ姉さん!
また、トルムルを強く抱いているわよ!」
「あ、ごめんな。
今回は、凄〜〜く、凄〜〜く、凄〜〜〜〜く、優しくトルムルを抱いたつもりだったんだけれど? おかしいな??」
こ、これが、凄〜〜く優しくだって?
光の妖精と友好の儀式をアトラ姉ちゃんにと考えていたのだけれど、考え直そうかな? これ以上強くなったら、俺は姉ちゃんに抱かれた瞬間に即死するよ〜〜!!!
「トルムル達が来るのを首を長くして待っていたわよ。本当に待ちくたびれた。
戦闘準備は既に整っているから、今からでも最上階に突入できる」
よ〜〜く見ると、本当にアトラ姉ちゃんで、今まで見た事がないほど超〜〜美人に化粧をしている……。元々美人だったけれど。
それにしても、まるっきりの別人にしか見えないんですけれど?
「オォ〜〜。
ハゲワシ殿の姉さんは美人じゃのう」
そう言いながらリトゥルは、アトラ姉ちゃんに必要以上に近付いて行く。
姉ちゃんにリトゥルの手グセが悪い事を言おうとしたら、姉ちゃんが突然、リトゥルに張り手をする。
バチィィ〜〜〜〜〜〜〜〜!
リトゥルは吹っ飛んで行き、はるか彼方に飛ばされた……。
すでに姉ちゃん達の間では、リトゥルの手グセの悪い事が伝わっていたみたい……。
「今、飛んで行ったのが、リトゥルなんだろうエイル?」
「ええ、そうだけれど……」
エイル姉ちゃんもビックリしているほど、はるか遠くに飛ばされたリトゥル。まさか、死んではいないよね! 飛ばされた方に意識を向けると……、無事みたい。良かった〜〜。怪我をしているかもしれないけれど、自力で治せるよね。
ま、今回は、リトゥルが居ない方がいいかも。明らかに、リトゥルよりも姉ちゃん達の方が強そう……。リトゥルが塔に戻って来る頃には、戦いが終わっている気がする。
塔の中に入ると、またまた見知らぬ超〜〜美人の姉さん達が居た。
ま、まさか、この人達も姉ちゃんなの……?
「「「「トルムル〜〜、待ちくたびれたわよ〜〜」」」」
その人達は代わる代わる、その柔らかな俺を胸で抱いく。少しづつ、少しづつ、恐怖心が和らいでいく。
「ムチムチの肌に戻ったわね、トルムル」
「あ、本当だね。
ツルツルで、絹のようだわ」
「みんな心配していたのよ。
スキュラを倒した頃、トルムルの肌がカサカサしていたから」
ま、ま違いなく、こ、この人達は、姉ちゃん達とヒミン王女だ〜〜! みんな化粧をしているから、全く分からなかった。塔に侵入する為に、化粧で変装した? ディース姉ちゃんは、日頃から化粧をしていたけれど、いつもと違う化粧なので、全くの別人みたいだ……。
化粧、恐るべし!!!
「トルムル、どうしたの?
私達の顔を、怖いものでも見ているようにと……、思うのだけれど……?」
……。
化粧って、ある意味怖いよ……。全くの別人になれるんだから。
き、さてと、気持ちを切り替えて、賢者の最上階に塔にいる魔物の気配を探り始める。賢者は1名居て、最上階には人間の気配を出している魔物が1匹。
「ねー。い、くー。
バブゥーー!」
おっと、またバブゥーって言ってしまった……。気合いが入ると、どうしても言ってしまうんだよな。これで本当に賢者の長になれるんだろうかとても疑問だ。
と、とにかく、俺はハゲワシに変身して階段のある方に飛んでいく。姉ちゃん達も武器を持って来て、階段を登り始める。
姉ちゃん達とヒミン王女からは、緊張感が全く伝わってこない。ピクニックに行くように、。お喋りをしながら階段を登っているんだけれど?
賢者達を倒した最強の魔物に、俺達、本当に勝てるのだろうか……??
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