第41話 猛禽類……?

 マズイ!!


 状況が思わしくない!!


 数に圧倒されて学園内に入り込まれている。

 火炎魔法が使えなくなって、苦戦しているのが分かる。


 どうする俺……?

 このまま見ているだけなのか……。


 血の匂いを嗅ぎつけたのか、猛禽類が戦場の周りに集まりだした。


 ……?


 そうだ、俺は折り紙をツルの姿に変えれるよな。

 俺自身を、猛禽類に姿を変えて家に帰ればいいのでは?


 たとえ見つかっても、猛禽類が家の裏庭に舞い降りたとしか思わない。

 よし、これしかない!


 俺はカッコイイ猛禽類を手の中にイメージする。

 イメージできたので、自分自身に魔法をかけた。



 どうだ?


 えーと……。

 自分では分からないな……?


 でも、幻の翼が横から生えているのが分かるので成功かな?

 これで怪しまれないで家に帰れるよ〜〜。


 猛禽類が、弧を描く様に家の裏庭に舞い降りた俺。

 部屋の窓を重力魔法で開けて中に入った。


 すぐに店に飛んで行くと、父ちゃんが俺を睨みつける。


「ど、どうしてハゲワシがこんな所に!?」


 ハ、ハゲワシーーーー!!

 マジで……。


 俺……、ハゲワシに見えるの?

 何で……?


 あ……。

 もしかしたら……、赤ちゃんなので頭の毛が薄いからか……?


 カッコイイ猛禽類にしたかったのに……。

 ある程度、元の形に似るんだ……。


 ツルの折り紙でも分かっていたけれど……。

 早く、フサフサの髪の毛が生えてこないかな〜〜。


 おっと、今は緊急時。

 俺は元の姿に戻った。


 父ちゃんが再び驚いている。


「ハ、ハゲワシがトルムルになった!

 いや……、トルムルがハゲワシだったのか……」


「バブゥー」


 俺はそう言って、いつものように右手を上げる。

 そして、ダイアモンドがしまってある引き出しを指さした。


「トルムルはダイアモンドの中の魔法を使いたいんだね。

 分かった、ちょっと待ってくれよ〜〜」


 父ちゃんの理解が早くて助かる〜〜。

 父ちゃんが出してくれたダイアモンドに手を触れる。


 ほとんど空だった俺の体内に、ダイアモンドから魔法力マジックパワーが流れて来る。

 よし、ほぼ満タンになった。


 あとは……、皮の防具を装着しないとな。

 俺……、赤ちゃんだから肉体的な防御力がほとんど無いし……。


「トルムル、学園から緊急の鐘が聞こえるけれど何が起こっているんだい?

 父さんも学園に行った方がいいかい?」


 えーと。父ちゃんはどちらかというと治癒魔法が得意なので、そちらの方がいい気がする。

 学園の方を指差して言う。


「まー、もー」


「まーもー、……?

 え!


 魔物が学園に!?

 それは本当なのかトルムル?」


「とう」


 今度は父ちゃんを指さして、次に城を指さした。


「城?

 そうか、父さんは城に行った方がいいと言うんだね。


 戦闘経験のない父さんは、そちらの方で治癒魔法を使えばみんなの役に立つと」



「とう」


「分かったよ。

 準備をして城に行くから、何かあったら城に来てくれよトルムル」


 ありがとう父ちゃん。

 怪我をした人達が城に運び込まれているのを見たので、間違いなく父ちゃんの治癒魔法が役に立つ。


 俺は部屋に行って、皮の防具を装着した。

 そして俺は、再びカッコイイ猛禽類に姿を変えて……。


 仕方なく……、ハゲワシに姿を変えて空に舞い戻って行った。


 学園に戻ると、さらに状況が悪化していた。

 怪我人が増えていて、城に向かう人が多くなっている。


 学生らしき人達もミノタウルスと戦っているのが見える。

 あ、エイル姉ちゃんとヒミン王女も校庭で戦っている。


 二人一組でミノタウルスと戦っているけれど、苦戦している。

 ミノタウルスのパワーに負けて後ずさりしている……。


 俺は急降下して右手を口の方に持って行った。

 そして、初級火炎魔法の火玉魔法ファイアボールを、魔法力マジックパワーを少しだけ使ってミノタウルスに発動した。


 俺の初級攻撃魔法はランクが1つ上がるので、中級の火嵐魔法ファイアストームになってミノタウルスを襲った。

 ミノタウルスは猛火に耐えきれずに地面に倒れた。


 ミノタウルスが霧散して、そこには魔石が現れる。


 俺はその魔石の上に、優雅に舞い降りた。


 エイル姉ちゃんとヒミン王女が、目の玉が飛び出るほど驚いて俺を見ている。


「ど、ど、どうして、ハゲワシが私達を助けたの?

 わ、わ、わけわかんない……。


 しかも、火嵐魔法ファイアストームを使っているし……?」


 俺はエイル姉ちゃんを見つめながら言う。


「エーエ、ヒーヒ、バブゥー」


 そして、俺は右の翼を上げる。


「そ、そ、その仕草は……、ト、トルムル……。

 もしかして……、トルムルが……、ハゲワシに化けているの?」


 ば、化けているって……。

 少なからず変身と言って欲しかったよエイル姉ちゃん……。


「とう」


 ヒミン王女が驚きながらも、興奮して言う。


「さすがトルムル様です。

 これだと、誰も人間だとは思いません。

 エイル、後ろからミノタウルスが!」


 俺は再び舞い上がった。

 そして、エイル姉ちゃんに迫って来たミノタウルスに、先ほどと同じように火玉魔法ファイアボールを発動した。


 俺の攻撃魔法はランクが1つ上がるので、中級の火嵐魔法ファイアストームが再びミノタウルスを襲った。


 ミノタウルスは霧散して、魔石がそこに残る。

 俺はそのまま飛んで、校庭にいるミノタウルスを片っ端から同じ方法で魔石に変えていく。


 校庭でミノタウルスと戦っていた人達はあっけにとられて、俺を目で追っている。

 ハゲワシが魔法を使えて、何でミノタウルスを攻撃しているのか不思議がっている。


 えーと……。

 説明はできないので森の方に俺は飛んで行く。


 学園の近くの森を見ると、教授達が今も戦っていた。

 アトラ姉ちゃんの姿が見えない……?


 アングルボーサ教授が少し離れた所でミノタウルスに囲まれながら戦っているのが確認できた。

 そのすぐ近くには誰かが倒れている。


 誰だろうと思ってよく見ると……。


 え〜〜〜〜〜〜!!

 アトラ姉ちゃんだ!!

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