第40話 攻防

 ミノタウルスが学園に迫っているのに、有効な対策が立てられない。

 4回しか最大魔法を使えないので、広範囲に広がっているミノタウルスに全て当たらない。


 もはや考えている暇はない!


 もうすぐ、ミノタウルスの前衛がアトラ姉ちゃん達と接触する。

 あ……、アトラ姉ちゃんが剣を抜いて何かを始めようとしている。


 そうか、伝説の魔剣、超音波破壊剣ソニックウエーブディストラクションソードを使おうとしている。


 今使わないとダメなのを、アトラ姉ちゃんは知っているんだ。

 防御の高いミノタウルス戦では、最初に防具を破壊しないと不利になる。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 凄い!

 ここまで防具の音が壊れる音が聞こえた。


 ミノタウルスも深手を負っているのが分かる。

 よし、俺も早速しないとな。


 いつものようにオシャブリを吸って精神統一する。

 手の中に、最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブのイメージを開始する。



 イメージが完了した。

 いくぞ〜〜〜〜〜〜!!


 耳をつんざく音と共に、目に見えない最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブがミノタウルスを襲う。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 どうだ?


 よし、うまく防具を破壊できて、深手を負わせた。

 今度は違う範囲に向けようとしたら、ミノタウルスの群れの中から大声で叫んでいるのがいる。


「ギガコウモリを倒した奴出てこ〜い!

 俺はギガコウモリの義兄弟で、弟の仇を取りに来た〜〜!

 早く出てこないと、町を殲滅してやるぞ〜〜!」


 えーと……。

 ミノタウルス達は俺が目当てなの?


 どうしよう?

 下に降りて行って、バブゥーと言っても通じないだろうし。


 と、とにかく、ミノタウルスをやっつけるしかないよね。

 さっき言ったミノタウルスを中心にして、最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブを発動する。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 さっきと同じように防具が壊れる音がしてくる。

 ギガコウモリの義兄弟と名乗るミノタウルスも、防具を破壊されて狼狽している。


 どこから攻撃されたか分からなかったみたい。

 周りを見回しているだけで、右往左往しているよ。


 残りのミノタウルスも同じように最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブを発動して、防具を破壊した。


 これで、ほとんどのミノタウルスの防具が破壊できた。

 しかし、深手を負っているとはいえ、ミノタウルスは戦意を失ってはいないのがここからでも分かる。


 町の方を見ると、大騒ぎになっている。

 子供達を迎えに来ている親御さんらしき姿が大勢見える。


 それに加えて、武装した人達も学園へと向かっているのが確認できた。

 城からも、大勢の武装した人達が学園へと向かっている。


 見慣れた姿があって、思わず微笑んでしまった。

 ラーズスヴィーズルだ!


 武具をつけながら城から学園に走っている。

 慌てて駆けつけようとしているのが分かる。


 俺は魔法がほとんど空だけれど、家に帰ればダイアモンドに入っている魔法を利用できる。

 しかし問題なのは、このまま降りれば誰かに見つかるのは間違いない。


 飛んでいる姿を見せてはいけないよと、父ちゃんに念を押されている。

 王妃様からも、ウール王女と俺に同じことを言った。


 2人の身の安全を守るためには必要だと、王族独特な威圧感で言われている……。

 ウール王女と俺を守るためには必要だと分かるんだけれど……。


 もう俺には、やれることがないのか?

 下では戦いが始まっている。


 アトラ姉ちゃんを見ると、最前線で戦っている。

 ここから見る限りでは善戦していて、ミノタウルス相手に力負けしていない。


 やはり凄いパワーだ!


 近くではアングルボーサ教授が戦っているのが見える。

 アトラ姉ちゃんと同じように戦っている。


 あの妖麗な姿で、どう戦うのか近くで見て……。


 あ、いや……、そう意味ではなく、今後の参考の為には見たいと思っただけで……。


 ん……?


 弓矢……?


 ミノタウルスを次から次へと素早く倒している教授がいる。

 弓矢にしては、連射を繰り返すのが速すぎて違う気が……?


 あ、でも、弓矢だ。

 瞬きを1回する短い間に3回も矢を連射している。


 凄い!


 ミノタウルスの防具がなくなったので、急所を狙えば一発で倒せるとは思う。

 けれど、あまりにも早すぎる技は神技といってもいいくらいだ。


 オッ!


 町からの応援と、城からの応援が到着して参戦し始めた。

 数ではミノタウルスが多いけれど、気迫では負けてはいないのが分かる。


 教授、町の人達、城の人達が一丸となって戦っている。

 しかし、あまりにも数が多いために、最前線が後ろに下がりつつある。


 このままでは学園内に入り込まれてしまう。

 俺も参戦したいのだけれど、魔法を供給しないと何もできない。


 どうする俺……?

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