第4話 トイレトレーニング

 エイルお姉ちゃんに抱き上げられた俺は、お腹が空いたので言葉を発してみた。


「バブー」


「あ、トルムル……、私の胸の谷間をのぞいているわ」


 え……?

 新生児だから、ぼんやりとしか見えません……。


 頭に当たっているのは、エイル姉ちゃんの胸?

 本能で、オッパイの位置を見たのかも?


「トルムルは赤ちゃんだから、おっぱいが欲しんだよ。

 父さんがミルクを持ってくるから」


「分かったわ、お父さん。

 そうか、同級生の男の子達と違うんだね」


 いや、その〜〜。

 でも、もしかしたら……?


 いやいや、本能でオッパイが必要なのは事実です。

 下心で、姉のオッパイを見たいとは思いません……。


 俺は母ちゃんの意思を継いで、大賢者になりたいんだ!

 寄り道をする暇は、なぁ〜〜〜い!


「バブゥー」


「何、トルムル?

 右手を上げて、上を見ているけれど?」


 う〜〜。

 言葉が通じない。


 お父ちゃんがミルクを持ってきてくれた。


 チュバ、チュバ、チュバ。


 体に合った飲み物のせいか、とても美味しく飲める。

 更にエイル姉ちゃんの抱き方がいいのか、俺は哺乳瓶のミルクを飲み干した。


 しかし一気飲みをしたからか、吐き気がしてきた。

 や、やばい、このままだと……。


 が、我慢できない〜〜!


 バ、ピューーーー。


「あー、トルムル!

 私の胸にミルクを吐いた〜〜!」


 ご、ごめんなさいエイル姉ちゃん。

 吐くのを止められなかった。


「ごめんエイル。

 お父さんが言い忘れていたよ。


 新生児は胃が真っ直ぐで、ゲップさせないとミルクを吐きやすいんだ」


「そうだったんだ、知らなかったわ。

 これでいいのお父さん?」


 エイル姉ちゃんが俺を縦に抱いて、背中を軽くトントンと叩いてくれた。


 ゲップ〜〜。


 大きな音と共にゲップが出た。

 何だかお腹が……、スッキリとしたみたい。


 う、嘘だー!

 今度は、ウ、ウンチをしたくなった。


 止めろぉーーー!

 俺のお尻の筋肉、ウンチを止めろぉーーー!


 ブリ、ブリ〜〜。


 お尻の筋肉は、俺の言う事を全く聞いてくれなかった。


 その後俺は、お父ちゃんとエイル姉ちゃんによってオシメを替えてもらった。


 いくら俺が赤ちゃんとはいえ、とても恥ずかしかった……。


 俺は……。

 大賢者になる前に、トイレトレーニングをしなければと心に硬く誓っていた。

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