第1話 筋トレと胎内教育

 神様に言ったことを俺は思い出した。


『なるべく若い体でお願いします』


 ……。


 ど、どうやら俺は、胎児に転生をしたらしい。

 予想では、10才の子供だと思っていたのに……。


 けれど、胎児とは!?


 余りにも若すぎる気がするんですが……?


「貴方、私達の赤ちゃんが生きていたんです。

 あきらめていたのに、こんなに嬉しいことはありません。


 産婆さんに来て頂いて、お腹の子供を見て頂きました。

 最初、心音が聞こえていないので、諦めないとだめだよって言われて……。


 でも、でも、でも……、奇跡が起きたんです!!

 その後この子……、私のお腹を力強く蹴ったんです!」


「本当に!?

 良かったねナタリー。


 これで7人目の子供が無事に産まれそうだ。

 君には本当に感謝しているよ」


 え、7人目?

 俺の兄弟は6人いるのか。


 少し、多くね……?

 父ちゃーーん。母ちゃんを愛しすぎだよ〜〜!


「でも……、産婆さんが言うには、『貴女の体が、出産に耐えられるか難しい。

 くれぐれも体には気をつけるんだよ』って言われました」


 え、それってマジなの?

 母ちゃん、……体が弱いの?


「治癒魔法でなるべく私も協力するから、丈夫な赤ちゃんを産んでおくれ」


 ……?

 治癒魔法?


 魔法って確か言ったよな。

 この世界は魔法が使えるのか〜〜。


 これは産まれてから楽しみが増えたな。


 ……?

 ちょっとまてよ、俺?


 それまでここで……、何をすればいいの?


 の〜〜んびりと、母ちゃんのお腹の中で、出産まで過ごすのは性に合わないし……?

 でも……。


 ここでは何もできない。

 ウーーーーーー!!


 いや、待てよ!

 もしかしたら、できる……?


 俺は最初に、自分の指が動くのを確認をする。


 やったね動いたよ!


 それなら最初はグッパー、グッパーからだな。


 俺は何度も繰り返し、指の筋力が増すように頑張った。

 何度も、何度も繰り返す内に、少しづつ早く、しかも力強くグッパーができるようになっていった。


 他の筋トレもできるか考えた。

 手の先に足の先が当たっている。


 これだよ、これ、これ!


 手で足の先を握ると、足を伸ばした。

 しかし、足の力が強すぎて手から離れ、母ちゃんのお腹を内側から蹴ってしまった。


「貴方!

 また赤ちゃんが私のお腹を蹴っているわ」


「元気な赤ちゃんみたいで私も安心だよ。

 一時はどうなるかと思っていたのでね。


 もしかしたら、今度は男の子かもしれないね」


「そうなるといいですね。

 女の子ばかり、続けて6人生まれましたから」


 俺の弟姉は、姉ちゃん達なのか。

 まてよ……?


 もしかして、俺も女に生まれるのかな?


 た、た、確かめてみないとな!

 俺は恐る恐る、チンチンとタマタマの場所を手で確かめる……。


 あ、あった〜〜〜〜!!

 嬉しい〜〜。


 これほど嬉しいことはないね。


 っていうか、女として生まれても面白かったかもな。

 でも……、男から求愛されると……?


 やめ、やめ、やめ。

 想像するだけでキモい。


 心は男だから、男から求愛されるのだけはダメーー!!


 とにかく、これで男として俺は生まれる。

 母ちゃん父ちゃん、念願の男の子の誕生だよ。


 なんたって体は、2人の遺伝子から生まれたんだし。

 この体に最初に宿っていた魂は天に召されたらしい。


 俺がこの体を引き継いだ。

 天に召された魂の分まで頑張らないといけないな〜〜と、俺は心に硬く誓った。


 ◇


 翌日、母ちゃんが俺をお腹の上から撫でて話しかけてきた。


「トルムルおはよう」


 おはよう母ちゃん。

 優しく俺を撫でているのが分かって、とても嬉しい。


 え……?

 名前で呼んだよね。


 俺の名前はトルムルなのか。

 うん、なかなかいい名前。


 ありがとう、母ちゃん。

 でも、俺が男の子だとどうして分かったのかな……?


「お腹の中の子に話しかけると、頭が良くなるのよ。

 これから毎日、色々な勉強をしましょうね。


 そして、トルムルには賢者になって欲しいんだ。

 もちろんトルムルが望めば、だけれどね」


 やった〜〜と。

 筋トレだけでは、退屈になるなと思っていたんだよな。


 胎内教育をしてくれるんだね、母ちゃん。

 ありがとう。


 でも、賢者って何……。

 賢い人……?


「この世界はね、魔法が使えるのよ。

 魔法は、手の中でイメージできたことを、体内にある魔法力マジックパワーを使うことによって発動する。


 そうすると、イメージと同じ事が起こるのよ」


 へーー。

 意外と簡単に魔法ができるんだ。


「でもね、手の中でイメージができても、レベルが足らなかったら発動しないわ。

 それに、イメージに合うだけの魔法力マジックパワーがないと、同じく発動しないのよ」


 だよね。

 そう簡単に魔法が使えるわけないし。


 こうして母ちゃんは、俺に色々な事を教えてくれた。


 魔法はもちろんのこと、魔物と魔王の存在。

 国の仕組みなどを。


 俺は生まれるまで、多くの知識を母ちゃんから教わった。

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