第7話 魔力検査─2


水晶に手をかざす。

あぁ。神様。闇でないことを祈ります。


心のなかで祈っていれば、パアーという感じで光った。





「なんだ?これは…」


「変だぞ!?こんなこと、初めてだ!」


司祭様も神官も取り乱している。

私も、この状況が飲み込めていない。




結果は、何の属性か分からなかった。

真っ白な光で、外に外に光の範囲が広がっていたのだ。

私以外の令息、令嬢はざわざわしており、どういうことですの?とか、さすがはクリエラ公爵家!などと聞こえてきた。

ジルリファを見ると、さすがはと言うべきなのか、他と同じように困った顔をしていた。

本当はこの状況が楽しいくせに、他と合わせているのだ。

私と目が合えば、ふっ、と柔らかい笑みを零し、ニヨニヨと笑った。

そんな彼に苦笑し、もう一度周りを見ると、先程の男の子がいた。


彼は、やっぱりというような表情をし、眉を寄せていた。

その顔に、ますます既視感を覚える。


「セレスティーナ公爵令嬢。まだ、属性もわかっていないので、何か起こるかもしれませんが、その時はこちらへお越しください」


「はい。分かりました」


優しく仰有ってくださった神官長にお辞儀をし、席へと戻った。

本当に…何なんだろう。





最後の一人が終わり、今はパーティーだ。


結果、エミリアは、月乙女だった。

エミリアの時にいくつもの色が混ざりあった光が降り注ぎ、水晶は割れてしまった。

神官長が月乙女だ!と叫ぶと、教会は静寂に包まれた。


(…エミリア、可哀想だったな…)


そう思った。

月乙女だと突然わかり、世界が一変して、これからもコントロール力を身に付けたり、世界を救えなど言われたり、王太子の婚約者候補になったりするのだ。


それを、目の前にいるジルリファとローガンに言えば、ジルリファは複雑そうに、ローガンはクスクスと笑った。

首を傾げれば、ジルリファは、はぁ…とため息を吐いた。


「ジルリファ様、最近ため息が多いですよ」


「あぁ…うん。君がもう少ししっかりしていれば減るんだろうけどね…」


……私、しっかりしてる…よね?

年上だよ?成人迎えてるよ?


「あのね、僕は、エミリア嬢が婚約者候補になるのはあり得ないと思っているし、もしそうでも、君が婚約者だから」


「え?でも、属性も分からない意味不明の公爵令嬢より、月乙女の慈愛に満ちた伯爵令嬢の方がいいと思うんですが」


実際、周りもそう仰っているみたいですし。と付け加えればジルリファはチラリと目を動かした。私たちの会話を聞いていた子はサッと目を逸らした。


「……とにかく、僕は婚約破棄はしない。他の誰にも恋はしない。僕の心を動かせたのはセレスだけなんだ」


「へぇ…、そうなんですか?」


腹黒王子からそんな言葉が聞けるなんて…長生き…ううん。転生はしてみるものね。


感動していれば、暫しの間静かな時を過ごした。


「セレス姉さん。あっちに美味しそうなマフィンがあったよ。姉さん、好きでしょ?」


ローガンが、話題を変えようと、マフィンの話をしだす。

ちょうどお腹も空いてたし…。


「うん。じゃあ、食べてくる。えっと、ローガンは?」


「僕は、少し殿下とお話が…」


ローガンが申し訳なさそうにし、ジルリファを見る。

ジルリファも何かを察したようすで、頷いた。


い、いつのまにそんなアイコンタクトできるくらい仲良くなったのかしら?


男の子って不思議だ。


──ローガンが成長し、ジルリファと仲良くなっていたのがとても嬉しかったお姉ちゃんで   した。









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