第6話 魔力検査─1


今日は魔力検査の日。

この国の十二歳の子達が身分関係なくすることだ。

ゴトゴトと馬車に揺られ、王都の教会を目指す。

お尻が痛い…。クッションとかあったら良いのに。

そんな呑気なことを呟くけれど、気分は優れない。


もしも、私の属性が闇だったら。膨大過ぎたら。

どうすればいいのだろう。


ゲームの断罪イベント終了後、セレスティーナの魔力が暴走してしまう。

元々、魔力が多すぎたセレスティーナは、コントロール力を幼い頃から身に付けなければならなかった。しかし、彼女は面倒くさいの一言でその練習をしなかった。

それが仇になったのだ。そして、月乙女であるエミリアヒロインがセレスティーナの暴走を止め、セレスティーナは意識を失う。同時に、エミリアも『良かった……』と言い、それはそれは綺麗な涙を流し、攻略したキャラに支えられるというものだ。

当然、セレスティーナは意識を取り戻せば処刑…となる。……と、タッキーが饒舌に語ったのを覚えている。


あぁ。今日で運命が決まるのだ。

闇属性であれば、断罪・処刑イベントは逃れられないと言っても過言ではないだろう。


「セレス姉さん?」


「……ローガン」


私と同い年のローガンも、魔力検査に行くことになっている。

火属性なのよね、ローガンは。

なんか、意外?かな。木とか土っていうイメージだから。


「気分、悪い?」


「ううん。そうじゃないの。緊張してるのね。多分」


ローガンに、そして自分に大丈夫と言い聞かせる。


「それならいいけど…。無理はしないでね?」


「えぇ、分かってるわ。ローガンも遠慮なんていらないからね?」


「うん」


ふんわりと笑うローガンに癒され、笑顔を溢す。

ローガンは私にとっての心のセラピーだ。






さぁ、やって来たわよ。

魔力検査は身分の高いものからだから…、ジルリファ、私、ローガン──。

うむむ、ジルリファの属性…気になる。ゲームでは水なのだけど。

それより、小さい男の子がさっきからチラチラとこちらをみている気がする。

金髪に、翡翠色の瞳。男の子…ではなく男の娘ね。

どこかで見たことがあるような…?

私の考えは、司祭様の有り難いお話によって消え去った。


司祭様の話が終わり、次は検査だ。


「ジルリファ・スティファン王子、こちらへ」


「はい」


ジルリファ!顔が、疲れてるよ。

その様子に苦笑いを浮かべていると、ローガンが『ずるいなぁ…』と呟いた。

そうだよねぇ。女子の視線総取りしてるのはずるいわあ…。


みんな、彼の一挙手一投足を見逃すまいと集中している。

十二歳の子供にこれは…キツいよ。

ずるい…は、軽々しすぎたかも。


心の中でごめんなさいと言うと、ジルリファは水晶に手をかざしていた。

あの水晶は属性と魔力の量が分かるようになっている。

淡く水色に光る。…水属性だ。魔力の量は多い。

ちなみに、量がどうやって分かるのかというと、光る範囲だ。

魔力が多ければ多いほど、範囲は広く、逆に少なければ狭くなる。


司祭様はふむ、と呟き、それを記録した。

ジルリファはもとの位置に戻り、安堵の息を漏らしていた。


「セレスティーナ・クリエラ公爵令嬢」


「……っ!はい!」


──いざ、出陣!






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