第4話 魔性の公爵令息参上!
「なるほどね。君は異世界の人なのか」
「信じてくれますか…?」
「うん。信じるよ。その乙女ゲーム?とかはよく分からないけど、僕が君を幸せにする」
「いえ、それは別にいいのです。殿下がヒロインとくっつけば!」
そう。私は、アクセサリーを作りたいだけ。
恋人とか二の次なの。
「くっつく気はないんだけど。……ヒロインか。名前とか特徴は?」
「名前はエミリア・ペチルス伯爵令嬢。特徴は、えっと、銀髪にバイオレットの瞳です。可愛いですよね」
まさに月乙女って感じがする。
妖精並みだよ。可愛かったもん。
「僕はセレスティーナ嬢の癖のない黒髪が好きだけど」
「またまた~」
「君は、ポンコツ?」
「いや、ポンコツって。まぁいいですが。年下に言われると変です」
「年下に…。そっか、君は年上なんだよね」
「はい!殿下のお姉さんですわ!」
お姉さん…?義姉?ハッ…!
「ローガン!」
攻略キャラ2
ローガン・クリエラ
魔性の公爵令息。男女問わず虜にし、フェロモン駄々漏れでヤバい。
文武両道の才色兼備。
クリエラ家に養子として入り、義姉のセレスティーナにいじめられ、辛い日々を送る。
学園に入ると、エミリアに出会い、心のやさぐれを治してくれる彼女に惹かれていく。
「ローガン?攻略キャラ…だっけ?」
「はい!弟になる予定のローガンです!」
あれ?攻略キャラに近付かないって決めたけど…弟は無理!
可愛がりたい!お節介焼きたい~!
兄弟に憧れてたの…!
「顔がゆるっゆるだね」
「だって、弟が出来るんですもん!」
「僕にも、構ってよね」
「善処します」
面倒臭いなぁ。
「面倒臭いって思ったでしょ」
「いえー?ほら、早くご飯食べましょ」
サンドウィッチを口に運ぶ。
ん、美味しい。
「本当に猫被んなくなったね」
「尽くしてくれる方が好きなのでしょう?私はその反対になりますから。そうすれば、性格の不一致と言って婚約破棄が出来るのですよ?」
気兼ねなく、婚約破棄できるように。
ヒロインいじめたら断罪・処刑イベントまっしぐらだからね。そのルートは絶対進まないよ。
「はぁ…。僕、絶対(セレスティーナ嬢を)振り向かせるから」
「えぇ、(ヒロインを振り向かせるのに)頑張ってください」
笑顔でそう言えばジルリファは違う…と呟いていた。
なんだろう?
あ、このお肉美味しい。
◇◇◇
お父様に連れられ、応接間に入ると、紺色の髪と瞳の美少年がいた。
ローガンだ。
「セレスティーナ、弟になるローガンだよ」
「ご機嫌麗しゅう、ローガン様」
緩みそうになる顔を必死に保つ。
ローガンは、不安そうに、こんにちはと言った。
「そんなに緊張しなくて良いよ。セレスティーナ、遊んでおいで」
「はい!いこう、ローガン」
「はひっ…」
可愛い~!!
撫でたいっ!
ローガンの手を引っ張って、屋敷の裏庭へと向かう。
ここの頂上に登れば、絶景が見られる。
「見て、スゴいでしょう?ここからの景色は」
頂上に着き、街の方を向く。
「とても…」
ローガンの瞳がキラキラと輝き、形の良い唇は少し開いている。
私の弟、可愛いわ。
「あのね、ローガン。改めて自己紹介をするわ。セレスティーナ・クリエラ。
ローガン、貴方のお姉ちゃんよ!」
「お姉ちゃん?」
はうっ!
貴方は私を萌え死にさせるの?
天使だ。控えめにいって、尊い。神。
「慣れないこともあるだろうけど、その時は私に訊いて。同い年だけど、お姉ちゃんだから。呼び方はお姉ちゃんでも何でもいいよ」
ドンッと胸を叩く。
ふっ、決まったわね。
「……セレス姉さん」
「いき、いきなり愛称なのね?」
「え?駄目でしたか?」
「ううん!可愛すぎて…。あ、敬語も要らないから」
もうちょっと、距離を縮めよう?
ほら、怖くないよ~。怪しくないから…。
「セレス姉さん、あの、どうして僕に優しくしてくれるの?」
「え?優しくするのに、理由って必要?……それに、ローガンは家族なの。優しくしないわけないじゃない」
婆ちゃんが言っていたのだよ。
優しくしない子には神様の怒りが飛んでくるって。
もしかしたら、他人からすれば私の優しさは偽善と受け取られてしまうかもしれない。
エゴかもしれない。でも、私はそれでもいいから、誰かに認めてほしいの。
認めてくれる人がいてほしいんだ。
人は、誰か、自分を認めてくれる人がいないと生きていけないと私は思う。
◇◇◇
「ローガン、貴方には、運命の人が現れるわ」
姉弟での優雅なお茶の時間。
私は目の前にいる弟に言った。
「ゴホッ!?と、突然なに…」
「私の勘よ」
「僕、最近セレス姉さんがポンコツなのかなって思うんだけど…」
「酷くない?」
ジルリファもそんなこと言ってたけど~!
ポンコツは酷いと思う。
「酷くないよ。セレスティーナ嬢」
「殿下!?」
慌てて挨拶をしようとすれば、手で制された。
「セレスティーナ嬢、その子が噂の弟かい?」
「えぇ、ローガンです。可愛いですよね」
「……ふっ、そうだね」
くつくつと笑うジルリファ。
悔しそうに顔を歪めるローガン。カオス。
「セレス姉さん。さっきはポンコツなんていってごめんね?」
ローガンに上目遣いで謝られたらそんなことどうでも良くなっちゃうんだけど…。
魔性の公爵令息。手強いわ。
「へぇ…?君は姉を愛称で呼ぶのかい?」
「はい。仲良しですから。ふふ、婚約者同士だというのにまだ嬢付けで、しかも殿下。進歩していないみたいですね?」
「……それは…、そう、そうだよ。今日はそのためにここへ来たんだ。セレスティーナ嬢、いや、セレス。もう殿下はやめてくれないか?」
セレス?あ、殿下、私を愛称で…。
う、うーん。タッキーに見せてもらったときは嫌々セレスティーナと呼んでいた気がする。
シナリオが変わってる…?
「殿下をやめるとなると、どう呼べば」
「ジルリファ。いや、ジルでもいい」
それは…。少し気が引けるな。
エミリアに誤解されてしまうかもしれないし。
仲が良くない婚約者を演じたいのよね。
「ジルリファ様」
「──っ、」
まっすぐに、ジルリファを見詰めて呼ぶと、ジルリファは固まった。
──おーい?大丈夫?
目の前で手をぶんぶん振っても反応なし。
「ローガン…どうしよ…」
弟なのに私よりバリバリ頭の良いローガンに助けを求めると、ローガンも固まった。
「えっ…」
─その後、二人の魂が戻ってきたのは十分後だった。
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