第21話 誘拐!?
どんよりとした薄暗い朝方、昨日の天気予報では豪雨になると報道されていたので
昨晩ずっと義妹の
急に蓮季が飛び出した時に追いかけていればよかったと思い後悔の念が残る。
不安になる気持ちを抱きながら歩いていると、
「おはよう浩太。珍しいなこの時間に登校するなんて」
爽やかスマイルをしながら幼馴染みの
「よう海斗。昨日眠れなくてな」
蓮季との件もあるが海斗の妹である
「何かあったのか? 相談に乗るぜ」
「別に相談にするまでもないさ」
蓮季の件は伝えたとしても、涼音の件を伝えたら海斗の事だから今日一日バカにされると思い、話を逸らす。
今日一日だけは学校を休むべきだと思いながら
昼休みに入り海斗と一緒に昼食を取っているとき、浩太はポケットからスマホを取り出して着信履歴を確認したが、蓮季からの着信がなく、少し不安になり、席を外して人気のない廊下で蓮季に連絡をする。が通話に出ない。
自宅に帰ったら自宅に連絡しようと思い、浩太は教室に戻り、学食で買った焼きそばパンを口にするのであった。
授業が終わり、アパートに早く着いた浩太は急いでスマホを取り出して、実家に連絡しようとした時、スマホの着信の音が部屋中に鳴り響き、着信相手は父親からだった。
「どうした親父?」
『浩太そっちに蓮季ちゃんはいるか!?』
とても慌てた様子で父親は通話に出る。
「いや、来てないけど……。蓮季に何かあったのか?」
『ああ。蓮季ちゃんが昨日から自宅に帰ってきてないんだ!』
「何だって!! あれから帰宅してないって事は何かあったのか!?」
父親からの言葉に額から冷や汗がにじみ出る。やはりあの時、蓮季を追いかけるべきだった。
『昨日の朝、浩太の住んでいるアパートに向かってから帰ってないんだ。蓮季ちゃんはちゃんとアパートに来たか?』
「ああ、来てたよ。でも途中で帰ったから、その時に何かあったのかもしれない!」
『ばかやろう!! どうして帰るとき、駅まで見送ってやらなかったんだ!』
父親の激しい剣幕に浩太はたじろいでしまう。
「しょうがないだろ、こっちだって急用というものがあったし、それに急に帰りだして見送りできなかったんだよ」
『今、
「大丈夫だ親父。まだ事件や事故に巻き込まれていると決まったわけじゃない。俺も心当たりのある場所を探してみるから」
激しい剣幕から一転、今にも泣き出しそうに喋る父親を慰める。
『頼むぞ浩太! まあ、お前が見送らなかった責任もあるんだから当然だな』
最後の言葉にイラッとしながら浩太は通話を切る。
(何やっているんだあのバカ! 親父には嘘ついたけど、昨日から帰ってこないとなると間違いなく事件や事故に巻き込まれた可能性が高いな)
浩太は腕を組んで蓮季がいそうな場所を考え、駅前のネットカフェを思い出し、もしかするとそこに蓮季がいるかもしれないと思い、急いで部屋から飛びだし浩太は全速力で駅前のネットカフェに向かうのであった。
(ダメだ、いない……)
ネットカフェの店内で蓮季のスマホに着信を入れると奥の部屋から快適な着信音がなった。
急いで浩太は着信音がなる部屋に向かい、勢いよく扉を開ける。
「蓮季!」
部屋にいたのは中年の男性だった。
男性は勢いよくドアを開けた浩太に驚き目を見開いていた。
「……誰ですか?」
「間際らしいんじゃっ! このボケッ!!」
男性のいる部屋のドアを勢いよく閉めて受付のへと向かい、受付のスタッフに聞いては見るがそういう人物は来ていないと言われ、店内を出る事にした。
漫画喫茶から出ると勢いよく雨が降り出していた。
傘を差しながら不安な気持ちで歩いていると浩太のスマホから着信音が鳴り、急いで手に取ると着信先はなんと蓮季からだった。
「蓮季、今どこにいるんだ! 心配したんだぞバカ!」
震えた声で蓮季に語りかけたとき、浩太の顔が青白くなる。
『バカとは、ひどい言われ用だな』
声の主は蓮季ではなかった。太い男の声に浩太は恐慌しだす。
「誰だテメェ! 蓮季に何をした!」
浩太は不安や恐怖が次第に激しい怒りにへと変わる。
『俺の名は
蓮季の旧姓は安達なのだ。
「米倉高校だと!?」
米倉高校は県内いちの不良が集まる高校。だが、米倉高校の番長は
『前から小泉に目を付けていたんだが最近、舎弟から小泉は浩太という一つ年上の彼氏がいると報告があったんだ』
「――いや、彼氏じゃないです(誰が彼氏だ! 蓮季のやつ、学校でホラ吹いてやがったのか!)」
『え!? 彼氏じゃないのか?』
「当たり前だ!」
『なんだよ驚かせやがって……、じゃあ、おまえにはもう用はない。切る」
「ちょっと、待て!」
危うく相手のペースに飲まれ、そのまま通話を終えるところだった。
『何だよ……』
「蓮季に何をするのかわからないが、大人しく返してくれたら、警察には突き出さないでやる」
『俺が返すと思うか? 悪いが小泉は俺の物だ誰にも渡さない』
「お前も
『俺を豚と呼ぶな!!』
「いいか、好意のある人物にはちゃんと告白して相手に伝えろ!」
『うるさい! 俺に指図するな! お前さっき彼氏じゃないと言っていたが、連絡先の登録名や着信履歴の名に『マイダーリン浩太』になっているぞ。もしかしておまえら結婚しているのか!?』
「蓮季が付けた名前だろ! 勝手に変なあだ名を付けられてこっちが迷惑してるわっ!」
まさか夫婦と思われる壮絶な勘違いをされて、浩太の眉間に青筋が浮き上がった。このまま蓮季を助けず、通話を切ろうと思ってしまうほどに。
「夫であろう者が、自分の嫁に迷惑しているだと、この最低人間がっ!」
「監禁しているおまえに言われたくねぇよ!」
桜井と話してるみたいで余計に殺意が強く沸いてしまう。
「おまえみたいな男に小泉が恋を抱くはずがない! 小泉は俺だけを見ていればいい、俺以外の男を見るのは絶対に許さん!」
この自己中心的な感じ、桜井そっくりと思い、この件が片付けたら桜井に八つ当たりをしようと浩太は思った。
「とにかくテメェとサシで話がしたいからどこにいるか教えろ!」
「それは無理だ。俺と会いたかったら自力で見つけるんだな」
相手の場所を知るために浩太は挑発させて相手を向きにさせて居場所を吐かせようと試みた。
こういう不良はものすごく短気な正確だから絶対に吐くに違いない。
「さては、俺の事が怖くて会いたくないのか」
「そんな挑発、俺には効かないぞ。おまえと話すのも飽きたから切るぜ、じゃあな」
「まて! おい!」
そこで通話が切れた。
浩太の挑発的な態度に室井はビクともしない。残念ながら知能は桜井以上であると理解した。
(……クソッ、あの野郎。あいつの隠れ家の場所は米倉高校の生徒の誰かが知ってるはずだ。)
浩太は疾風の如く米倉高校に向かうのであった。
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