第19話 まさかの展開!?

 昨日小泉浩太こいずみこうたは実家から高校に向かうと担任の小林こばやし先生に三時間こっぴどく叱られ、二十枚にも及ぶ反省文を泣き泣き書かされる羽目になった。

 そのせいであり、呼び出しを食らった翌日は目覚めが悪く、肩が重苦しい。


(昨日は散々な目に遭った……)


 眠たそうに大きくあくびをし、朝食を作るのが面倒なので仕方なく朝食を取らず学校に登校をする事にした。


 朝食を取らなかった事を登校してる最中に後悔し、お腹を空かしながらゆらゆらと校門近くに着くと、いつもは一学年上の桜井に喧嘩を売られるのだが、今朝は珍しくその場にはいなかった。先に登校していた幼馴染みの芝崎海斗しばさきかいとに聞いてみると、熱を出して寝込んでいるらしい。『バカは風邪を引かない』と昔は言い伝えられていたが、今の現代では『バカは体調管理ができないから風邪を引く』と言い伝えられたいる。


(……よかった桜井先輩は俺が思っていたとおりのバカな人だ)


 海斗に昨日の通話の件を聞き出す。


「なあ海斗、昨日の通話で何か俺に伝えたい事があると言っていたけど何だ?」

「あっ、その件なんだけど、他校の不良共がお前を潰す計画をしているみたいだから気をつけろよ」

「他校? どこの高校だよ?」

「そこまでは知らないけど、最近ぶちのめした生徒の高校じゃないか」

「ぶちのめした奴なんて数え切れないほどいるからわからん。まあ、いつでもそいつらの挑戦は受けて立つぞ」


 苦笑いをする浩太に周りの登校している生徒達は恐怖で身をすくみだす。


          ☆


 一通りの授業も寝ずに受け、ようやく下校時間になり浩太は伸びをして下校の準備をする。いつもなら海斗と下校するのだが、今日はとても大事な用事があるため、急いで下校した。

 少し息を切らしながら下校してアパートに着くと、部屋のドアの前で海斗の妹の涼音すずねが立っていた。

 白のワイシャツに腰にブラウスを巻き付け、丈の短いミニスカートで、THEギャルと言わんばかりの着こなし。


「ごめん。急いで帰ってきたんだけど待った?」

「いいえ。わたしも来たばかりなんで」


 ポケットから部屋の鍵を取りだして解除したら涼音ちゃんを部屋の中にお招きした。

 このボロアパートに暮らして女性をお招きするのは人生で二回目、夢でも見てるかのような気分に浩太はなった。

 憂鬱ゆううつな気分から咳払いをして脳内を現実に戻し、遊園地での鈴音に言われた件の本題に入る。


「それで俺に聞きたい事って何?」


 一昨日遊園地から帰るとき、涼音に「話したい事があるから浩太さんの住んでいるアパートに訪ねてもいいですか?」と言われたのだ。

 テーブルで向き合うように腰を下ろし、少しの間、静寂な空気が流れる。

 鈴音はあまりにも緊張して目をキョロキョロと動かし落ち着きがなく、浩太もこの静寂で重い空気の中じっとただ座っているのも辛く声をかけようとした時、

「……浩太さんは今、彼女とかいますか? それか好きな人とか?」

「いや、まだいないけど。それに好意を抱いてる人物もいないけど……どうして?」

「いえ……その……何というか……」


 唐突な質問に浩太は目をぱちくりさせる。

 いきなり鈴音の言葉から好意を抱いてる人物または彼女がいるか、と聞かれても、今まで彼女いない歴=年齢の浩太には悲しすぎる質問だった。

 鈴音本人も唐突だった質問に慌てふためいていたため、浩太は飲み物を飲むように促す。


「鈴音ちゃん。とりあえず冷たい麦茶を飲んで落ち着いてよ」

「はっ、はい! いただだだきまああっす!」


 言葉を噛み噛みになりながら鈴音は勢いよくゴキュゴキュ、と喉を鳴らせコップに入っていた冷たい麦茶は一気に無くなりテーブルに置くと、浩太はすかさず麦茶をコップに注ぐ。

 涼音は胸を押さえ一呼吸する。


「浩太さんはわたしのこと、どう思います」


 これまた唐突な質問に浩太は返答に困る。


「どうって言われても……俺は涼音ちゃんの事かわいいと思うよ」


「ほんとですか!?」


 テーブルから身を乗り出す涼音に浩太は少したじろぐ。


「ああ。涼音ちゃんは俺の妹みたいな感じだからな」

「……妹かぁ~」


 その言葉に涼音は落胆してしまう姿に、自分が何か涼音に対して失礼な言葉を言ってしまったのかと思い、急いで話題を変え、

「それにしても涼音ちゃん、変わったよね。昔は無口で大人しい感じだったのに今は何というか明るくなった感じがする。あと見た目もね」

「そうですか。こっちのわたしの方が浩太さんは好きですか?」


 少し興奮し涼音は、はにかむ態度を見せ、浩太はホッと胸をなでおろした。


「もちろん。俺は明るく元気な子が好きだよ。それとさっきから気になっていたけど、『さん付け』しなくてもいいよ。俺たち幼馴染みなんだし、昔みたいに接してくれて構わないよ」

「それじゃ……『お兄ちゃん』と呼んでもいいですか?」


 涼音ちゃんはモジモジしながら上目遣いで質問するのを見て、なぜかゾッと鳥肌が立った。


「……ああ、いいよ(今ここに蓮季はすきがいなくてよかった)」

「もしかして馴れ馴れしくてイヤでしたか?」


 悲しそうな瞳をするような小動物みたいに見つめてくる涼音に、思わず浩太は首を左右に大きく振りかぶる。


「全然いいよ。だけど、涼音ちゃんが俺にお兄ちゃんと呼ぶと海斗がヤキモチ妬くんじゃないかと思ってね」


 今度は激昂げきこうする子猫みたいな面構えになる涼音に喜怒哀楽きどあいらくが激しい子だな、と浩太は思う。


「あんなバカ兄貴にヤキモチ妬かれても全然うれしくないです。ていうか妹にヤキモチ妬く兄とかってキモッ」


 海斗に対する涼音ちゃんの態度に浩太は苦笑となにか見えない刃物で刺されたような精神的なダメージを受けた感じがした。


 もし蓮季に『キモい』などと言われたら立ち直れないので、絶対その言葉だけは言われないような行動をしようと今後心がけようと感じた。


「もしかして、俺に聞きたい事って彼女はいるか聞きたかったの?」

「……えっ! そうでもない――いや、そうでもあるというか…………」


 急に涼音が共同不審になる光景を見た浩太はやはり様子がおかしいと感じた。

 もしかして海斗とのなんらかのトラブルを起こし、その相談をしに訪れたのだと浩太は感じてその事を聞いて見る事にした。


「今日の涼音ちゃんなんか変だよ。もしかして海斗のやつに酷い事でもされたの? もし力になれる事があれば協力するよ」

「バカ兄貴とは関係ないです。むしろあんなゴミ、眼中にありませんから。――今日聞きに来た理由も含めて、浩太お兄ちゃんに私の気持ちを伝えたい事があったんです」

「俺に伝えたい事?」


 自分に伝えたい事、浩太はすごく気になりだす。一体涼音はどんな話をするのか。

 大きく深呼吸をした涼音は、意を決して浩太に伝える。


「わたし浩太お兄ちゃんの事が――」


 突然、部屋のドアベルが鳴り響く。


「ごめん。ちょっと席を外すね」

「…………はい(こんな時に誰だよ)」


 絶好のタイミングに突如来客が来る。もしかして海斗が訪れてきたのかと浩太はドアの覗き穴に目を通して見ると思わぬ人物に驚愕きょうがくをしてしまう。


 ドアの前にいたのは

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