第15話 まさかの早朝エロイベント発生からの地獄のバッドイベント発生

 翌朝、パレードのような大音量のスマホのアラームが鳴り響き、小泉浩太こいずみこうたはスマホのアラームを解除しようと手を伸ばすと、柔らかく弾力のある物に触れる。

 クッションとは違く、とても大きいボールのような物で掴み強弱を付けながら揉むと弾力が変わり、とても揉み心地が良く癖になりそう。

 何度もこの癖になる感触を味わっていると、

「ひゃん」


 耳元の近くで子猫のような小さく可愛い鳴き声がささやく。

 半分眠気はあるが重い瞼をゆっくりと開けると衝撃的な光景に浩太は完全に目覚めてしまう。

 義妹の蓮季はすきの顔が間近にあり、癖になる柔らかく弾力がある大きなボールの正体は蓮季の豊満な胸で、浩太は寝ぼけてパジャマの上から何回も揉んでいたのだ。

 悪夢から目覚めたように勢いよくベッドから浩太は起き上がる。

 

「お兄ちゃん、いつまで触っているの」

「わあっ! ごめん、て何で俺のベッドに転がり込んでいるんだ!」

 

 ムクッと蓮季起き上がり、目をこすりながら浩太を見つめる。起きた姿の蓮季はとてもかわいいかった。

 

「……だってお兄ちゃんと一緒に寝たかったから」

「だってじゃねえよ。いつの間に忍び込んだんだよ、油断も隙もないな。いい歳して一緒に寝ようとするなよ」

「それじゃ、わたしご飯の支度をするから」

「話を逸らすんじゃねえよ! (押し倒すぞ!!)」


 蓮季はみだらになった服装を整える。可愛い女性がこんな仕草をしたら、世の男性は心を擽られるに違いない。

 

「まったく、早く部屋から出て行け」

「わかっているよ。お兄ちゃんも早く着替えてリビングに下りてきてね。今日は一緒に遊園地に行くんだから」


 伸びをしながら蓮季は浩太の部屋から出ていった。

 

「朝からハプニングイベントが発生するなんて、とんだエロ――いやギャルゲーの展開だな……」

 

 ため息を漏らしながら普段着に着替え、部屋を後にした。

 蓮季が料理している間、浩太はテレビを点けて、わかりもしない朝のニュース番組をボーッと見ていると蓮季は朝食をテーブルに並べる。

「お待たせお兄ちゃん。さあ、冷めないうちに早く食べよう」

「おう」

 食事ができあがり食卓には、白米、味噌汁、卵焼きに鮭のムニエル、昨日の料理より少し簡素な料理ではあるが一口頬張ると絶品で勝手に箸が進む。


「ほんと美味しいな蓮季の手料理わ」

「そう、お兄ちゃんに言ってもらうと作ったかいがありました」

「家事も完璧、勉強も完璧にできるということはスポーツも蓮季は得意なのか?」

「スポーツはさすがに苦手かな……、そんな完璧な人間なんてエロゲーの主人公だけだよ」

「イヤイヤ、そこは漫画の主人公、と言うところだろ」


 朝から衝撃発言をする蓮季の台詞に浩太は呆れて苦笑いをした。どうやら頭の中はエロで浸食されてしまっている。

 見た目が可愛く絶世の美女と言っても過言ではない妹が実際ド変態だと思いたくもない。

 ため息交じりに食事を終え、浩太は少し休憩してる間、蓮季は食器を片付け終わると部屋に戻って今日着ていく服に着替えにいった。

 着替えを下着しか持ってこなかった浩太は着替える必要はなく、蓮季が着替え終わるまでリビングに待つ事にする。

 しばらくすると階段を降りてくる激しい足音が聞こえた。


「お兄ちゃん、お待たせ!」

「おっ、おう」

 

 リビングに入ってきた蓮季の衣装にまるで女神を見るように浩太は見入ってしまう。

 白ブラウスを着て、明るい紺のサペンダースカートを穿いた蓮季の衣装。


「ん? お兄ちゃんどうしたのマジマジと見て――もしかして私に見とれている」

「そんな訳あるかよ俺たちは兄妹。蓮季の服装見てもなんとも思わん」

「ふ~ん。まあ、そういう事にしておくね」

 

 身体が締まって出てるところはかなり出ているため、街中まちなかに出たらきっと、いやらしい目で男どもの視線が集中してしまう恐れがあるため、もっとダボダボな見窄みすぼらしい格好で出かけてほしいと思うが、それを蓮季に伝えたらそれこそまた何を言われるかわからない為、服装のことは口に出さない事にした。

 

「……じゃ、行くか」

「うん」

 

 自宅を出て、浩太と蓮季は都内にある有名な遊園地に向かった。

 

 地元の駅から三つ目の駅に降り、改札口を抜け、そこからバスで三十分走ると遊園地『メズミーランド』前のバスターミナルで降りる。


 自宅からここまで着くまでに蓮季はあまりにも浮かれて浩太の腕をコアラのように強く絡ませて満面の笑みを見せていた反面、――浩太の場合は蓮季の巨大な豊満の胸の感触が腕に伝わり興奮しすぎて心臓破裂しそうになっていた。


「暑苦しいから離れろ」

「離れたらカップルじゃなくなるしゃん」

「俺らはカップルじゃなくて兄妹だろ。それに誰が見てるかわからないから勘違いされると困る」

「むしろ私は勘違いされた方が良いんだけどな」

「離れろ!」

 

 浩太は無理に蓮季を引き剥がそうとするがそれを蓮季は拒み、まるで植物の蔓に巻き付かれたようなギッチリと浩太の腕を絡んでくる。

 そんなやりとりをしていると見慣れない不良連中が浩太達の周りを囲んできた。


「なあ、ボク。彼女と喧嘩?」


 時代を感じるヘアスタイルに思わず浩太は腹の底で笑い抱えていると蓮季はリーゼント野郎の『彼女』というワードを訊いて目が星のように輝きだす。


「今あなたは私の事を彼女と呼びました!?」

「……ああ。呼んだけど、もしかして違うのか? だったら俺と」

「――はい私はこのかっこよくて目がキリリとしたまるで人を殺しそうな目。そう動物で例えるなら野良オオカミみたい。そんなオオカミみたいな人物は私の……」

「――なんだが知らないがこいつのヤバいかも……、おいおまえら行くぞ」


 浩太の話になると蓮季の瞳が薬をやっている時みたいな興奮状態の目で、さすがのリーゼント野郎は危機感を覚え、仲間達と退散しようとしたとき、蓮季は逃げようとする不良達に大声で叫び出す。


〈彼氏なんでえぇぇぇぇぇぇぇす!!〉


 遠ざかる不良達に聞こえるように蓮季は大声を上げて叫んだ。

 異常な兄好きのおかげで浩太の出る幕はなかったので一安心した。


「逃げちゃったね。もっと私が浩太さんのことどれだけ好きか熱く語りたかったのに……」

「俺でもあんなにぐいぐい来られたら逃げるは……。それと恋人同士じゃないんだから呼び捨て禁止ね」

「チッ、バレたか……」

「さりげなく言っても俺の耳にはちゃんと聞こえている」


 ムスッと拗ねる蓮季の頭を優しく撫でる。


「さあ、早く遊園地の敷地内に入ろうぜ」

「うん」


          ☆

 

 遊園地の周りにはかなりの家族連れやカップルたちで埋め尽くされていた。

 

「まるで人がゴミのようだ」

「某アニメの台詞を吐くのもいいけど早く敷地内に行こう」


 強引に蓮季に手を引っ張られ入場ゲートでチケットを渡し入る。

 お互い人混みの中を縫うように歩いていく。

 

「最初はどのアトラクションに乗るんだ?」

「ジェットコースターに乗りたい」

 

 浩太は身体中から冷たい汗が流れ出る。


「いきなり迫力のあるアトラクションに挑戦するのか!?」

 

 強引に連れて行かれ、しかも運悪く遊園地で一番人気のアトラクションの為、四十分も待たされ、ようやく乗る順番がきた。

 安全ベルトを身体に装着し、いよいよジェットコースターがゆっくりと動き始める。

 徐々にジェットコースターが登り始めると同時に浩太の心臓の鼓動がバクバク鳴り響く。

 てっぺん付近に近づくと、吸い込まれるように急降下し始め、一瞬失神しそうになったが隣に蓮季がいるため、何とかその場をしのぎ地獄のようなマシーンに浩太は振り回されることになったのであった。

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