第14話 混浴風呂!?

 興味のないゲームを無理矢理やらされ、ゲームに苦戦している浩太こうたの耳元で義妹の蓮季はすきの罵声を浴びせられながら、何とか好きでもない近親系の恋愛ゲームのエンディングを見る事ができた。

 必死浩太がゲームのエンディングたどり着いたのを見て蓮季は満足したのか立ち上がり食事の準備をしに台所に向かう一方、ゲームに全てのエネルギーを使い果たした浩太は魂の抜けた亡骸なきがらの状態になっていた。

 ゲームのやり過ぎで脳内がバグりだしている中、夕食を作っているエプロン姿の蓮季を見て身体中が熱くムラムラし出してきた。

 

「お兄ちゃん食事ができたよ。ん? どうしたのお兄ちゃん」

「――いや、なんでもない! さあ、食事にしよう」

「うん」

 

 料理を運んできてテーブルに置いてる蓮季の身体に手を伸ばそうとした浩太はハッと現実に返る。

 恋愛ゲーム? のやり過ぎで危うく目の前にいる蓮季に手を出してしまうところだった。

 テーブルには、エビチリ、シューマイ、唐揚げ、などの数々の料理が並べられた。


「すごいな。これみんな蓮季が作ったのか!?」

「うん。お兄ちゃんが喜んでもらうために、一生懸命作ったよ」

 

 香ばしい料理のせいで浩太のお腹が悲鳴を上げてしまいいただきます、と手を合わせると同時に飢えたハイエナのような勢いで、テーブルに並べている料理の数々を口に頬張っていく。

 あんなにたくさん並べてあった料理もあっと今に浩太はペロリと平らげる。

 

 頭が良くて料理もできる最高の妹なのに一部分の欠陥さえなけりゃ完璧なのにと浩太は思い、食べ過ぎて膨らんだお腹をさすりながら一休みしていると、蓮季がまたよからぬ言動を始めた。

 

「お兄ちゃん。明日わたしとデートしよう」

「デートって、俺たちはカップルじゃなくて兄妹だぞ。デートというよりは、ただのお出掛けだろ。それと明日は自宅でゆっくりしたいんだけど」


 何か裏がありそうな感じなので自宅で過そうと蓮季に頼むが聞く耳を持たない。

 

「今日から三日間お兄ちゃんは、わたしの言う事を聞く約束でしょ」

「ウグッ、そうだったな」

 

 約束は約束なので仕方なく呑むことにはしたが、蓮季の事だあまり変な命令を出さなければいいと不安になる。

 

「そういう事で、明日は遊園地に行こう」


 意外にな事を言い出したので内心ホットはした。蓮季の事だからいかがわしい場所に行こう、と言ってくるんじゃないかと内心不安をしてしまっていた。だが、遊園地は常に人混みが多いところでもある、浩太はあまり人混みの多い所は正直苦手なため乗り気はしなかったが、義妹の約束のため、しょうがなく頷いた。

 

「わかった。明日遊園地に行くか」

「お兄ちゃんと遊園地楽しみだな」

 

 蓮季はキャッキャッ、と甲高い声を上げながら胸を躍らせている姿を浩太は見逃さなかった。

 

「俺も蓮季と行くのは楽しみだよ。――それじゃ、夕食も食ったことだし俺は風呂に入ってくる」

 

 有頂天になっている蓮季を放っておいて、浩太はリビングから出て脱衣所に向かった。

 暖かい湯船につかり、疲れを癒やしながら浩太の脳内で先ほどまでプレイしたギャルゲーを思い浮かべていた。

 

 ギャルゲーのイベントで主人公が湯船に浸かっていると浴室へ妹が入ってきて、一緒に入浴するというシーンを思い出す。

 

(まあ、ゲームのイベントだしほんとに妹が入ってくるはずは――)

「――お兄ちゃん、入るよ」

 

 浴室内で突如、妹の恋愛イベントが発生。


 バスタオル一枚を身体に巻き付けた蓮季が浴室に侵入してきた。

 幸いスッポンポンで入ってこなかった事に、慎み深さが蓮季にあると思い良かったと心底思う。と一瞬思ったがよくよく考えれば入ってくる事自体異常だ。

 

「何勝手に入ってくるんだよ!」

「兄妹なんだからいいじゃん」

「よくねえよ。弟ならともかく、おまえはだろ。妹と仲良くお風呂に入る兄がどこにいるんだ!」

 

 大人二人がギリギリ入れるスペースの浴槽に蓮季は無理矢理入り込んで、お互い体育座りで入ることとなった。

 蓮季との距離が密接なため、浩太は挙動不審になる。それもそのはずバスタオルを身体に巻き付けたせいで脹よかな胸の部分が強調しているのだから。

 

「ねえ、わたしずっとこうしてお兄ちゃんと生活できたらいいなって夢に思っていたの」

「おっ、俺は勘弁してほしいね。妹と一緒に風呂なんて冗談じゃない。両親に見られたら切腹もんだぞ」

「そしたらわたしも切腹してあげる」

「とにかく俺はもう出る(この妹は本当にしそうだから怖い……)」


 これ以上いたら浩太の理性は限界になるため、理性のあるうちに浴室から直ちに退散しようとすると、蓮季はボソッと吐いた言葉に浩太は立ち上がるのを一瞬止める。

 

「……お兄ちゃんは小さいころの思い出を覚えていたりする?」

 

 しんみりした口調で蓮季が話す。

 

「小さいころの思い出か……あんまり覚えていないな。俺の記憶力は人並み以下だからな」

「……そうなんだ」

 

 何かいつもと雰囲気がうし、蓮季の言葉の続きが気になるため、再度湯船につかる。

 いつもとの様子が違うため何か悩みを溜めているんじゃないかと少し不安に浩太はなっていた。

 

「なあ、蓮季は小さいころの記憶って覚えているのか? 別に話したくないなら無理に話さなくていいぞ」

「お兄ちゃんなら構わない、むしろお兄ちゃんだからこそ聞いてほしい」

 

 蓮季の重そうな過去の話に浩太は耳を傾けた。

 

「わたし小学生のころイジメを受けていたんだよね」

「マジで! 今は大丈夫なのか!?」


 その言葉に浩太は今まで誰にも見せた事がないような激しい怒りの表情を見せる。できたばかりの妹がイジメを受けていた、というのだ。浩太が起こるのも無理はない。

 もしかして今でもイジメを受けているんじゃないか、と心配になっていたが蓮季は苦笑いをし否定する。

 

「大丈夫だよ。今はいじめられていないし、むしろ高校に入ってから沢山の友人ができたよ。……それとしつこく私に近寄ってくる男子生徒も」

「そうか、それなら安心した。もし何かあったときはすぐ俺に言え、蓮季を悲しめたやつは全員病医院送りにしてやる! ――あと、しつこく近寄ってきた男子生徒の名前と住所を教えろ殺しておくから」

「……お兄ちゃん……顔が怖い」

 

 蓮季に近寄ってくる男子生徒のワードにさらに怒りの感情が湧き、悪魔に取り憑かれたような表情の浩太を蓮季は見て恐れをなす。それも当然、浩太のキレた表情を見て、怖がらない人物なんて親友の海斗と親父以外いないのだから。

 

「すっ、すまん。俺の顔が怖かったか?」

「……うん。でもわたしのために怒ってくれてうれしい。それに小学生のときもイジメられていたわたしを守ってくれた人がいてね。その人のおかげでイジメを受けなくなったんだ」

 

 蓮季の頬は鮮やかな桜色に変わるのを見た浩太は別な意味で腹を煮えたぎる。

 

「まあ、今はイジメを受けてなくて安心したよ。それに名前と顔はわからんが蓮季の初恋の相手もわかったしな」

「お兄ちゃん、もしかして妬いてるの?」

 

 蓮季は浩太の身体に寄り添いながらニヤリと笑う。

 

「バッ、バカッ! 妹にヤキモチを妬く兄貴がどこにいる!」

「またまた、顔が熟したトマトのように真っ赤になっているよ」

「あーもう、俺は出るぞ!」

 

 浩太は立ち上がり、そのまま浴室を出て行った。

 

 寝間着に着替え、一人暮らしをする前に使っていた自分の部屋には蓮季が使っており、仕方なく両親の部屋のダブルベットで浩太は就寝するのであった。


 今日一日色々な出来事はあったが、中でも浩太が一番気になっていたのは蓮季が幼少期に出会っていたという初恋の相手であった。

 初恋相手の話しをしているときの蓮季は浩太と話すときのいやらしい表情とは打って変わり恋を抱いている女性らしい表情をしていたので浩太は少し嫉妬しながら深い眠りにつくのであった。

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