第12話 妹は性欲の塊
ポケットからスマホを取り出し発信者を確認すると幼馴染みの
「何だ海斗?」
『浩太。例の動画を送ってくれ』
桜井と蓮季の告白動画をまだ、海斗に送るのを忘れていたのであった。
「わかった。部屋に戻ったら送る。間違いなく再生数が伸びるから広告もちゃんと付けるんだぞ」
『わかっている。もちろん分け前は半々だよな』
通話元でもわかる海斗の欲望の笑みに浩太は渋々了承をする。
ほんとは動画の収入は全て浩太の物になるのだが、浩太はパソコンを持ってなく、それに動画編集なんて機械音痴の浩太にとって無理だ。だから高性能パソコンと編集技術もある海斗にやむを得なく頼むことにした。
「チッ、抜け目のない野郎だな……。わかったよ。一応蓮季の顔だけはモザイク入れといてくれよ」
『わかった。編集するの時間が掛かるから早めにデーター送れよ。またな』
そこで通話が切れた。
儲けは
「お兄ちゃん。わたしの顔にモザイクを入れるって何の事?」
ニヤけた表情から一変、青ざめた表情に変わる。
蓮季が隣にいたの忘れてた浩太は何て言い訳しようか考える。
「蓮季、何か欲しいものはあるか? お兄ちゃんが好きなの買ってやるぞ」
異常に優しい浩太に疑問を持った蓮季は、何か隠しているに違いないと問い詰める。
「話を逸らさないで! 電話でのやりとりを、わたしに詳しく説明して!」
「何言っているんだ。お前には関係の無い事だがら忘れろ」
「もしかして……さっきの桜井さんとの告白の事と関係がある?」
一瞬ドキリとし背筋から冷たい汗が流れる。
表情を出さないように素の顔を出すがあまりの不自然な態度のため余計に疑われてしまう。
「さあ、早く帰ろう。今日は良い天気だ」
「ごまかさないで。――もしかして私をネタに動画をネットでアップするつもりでいるでしょ」
バレてしまった。どうごまかすか考えていると蓮季は浩太の顔近くまでグイグイと寄せてきた。
なんともいえないフローラルな香りに魅了されてしまうが、今はそんなことを考えている訳にはいかない。
「…………わかったよ、正直に全部話すよ」
眉毛をつり上げて問いただす蓮季に、言い訳ができず、とうとう本当の事を打ち明ける事にした。
蓮季に今までの海斗とのやり取りを打ち明けると、殺意ある眼差しをぶつけられ浩太は死んだ人間のように肌を青白くさせる。
「お兄ちゃん――歯を食いしばれっ!!」
「待て! 落ち着け。話し合いをしよう」
「言い訳は聞きたくない!」
浩太の人生終了の合図。蓮季の勢いあるパンチが、浩太の顎に命中する。
「さすがは我が妹よ……見事なパンチ」
「妹がピンチのときに動画を撮って尚且つ、その動画をお金稼ぎに利用しようなんて見損なったよ! 最低!」
浩太は勢いよく宙に舞い、そのまま地面に
もう蓮季を使って、お金稼ぎをしないと心に命じた浩太だった。
☆
それから浩太は自分が借りているアパートの部屋に着くと何故か蓮季も一緒に付いてきた。
「どうして俺のアパートに来るんだ。もう日が暮れてきたし早く実家に帰れ」
「私今日はここに泊まることにしたから」
「はっ!? 何言っているんだよ駄目に決まっているだろ」
「もう、実家には連絡したし、嘘だというならお兄ちゃんも実家に連絡入れなよ」
そう言われた浩太はポケットからスマホを取り出して実家に連絡を入れると義母の紀香が電話に出て、蓮季の泊まりの件を訊いてみると許可をしたことを告げられた。
「嘘だろ……」
「そういうことだから、お邪魔しま~す」
「おまえ着替えとかはどうするんだ。俺のは貸さないぞ」
「後でお父さんが持ってくるって」
「マジかよ……」
実家の両親の許可を得ているため今回はやむを得ず浩太の住んでいるアパートに泊まる事を許すのであった。
アパートの狭い一室で浩太と蓮季は食事をしていた。
料理はもちろん蓮季の手料理で、出されている料理の全てはお金が出せるほどのクオリティーだ。
こんな素晴らしい手料理を二人で仲良く会話を弾みながら食事をするはずなのだが、今回はその逆だ。
何故なら浩太と海斗が企んでいた桜井と蓮季の告白動画を世界で有名な配信サイトに投稿しようとしている事をバレてしまったのだからである。
食事中、蓮季はこちらを睨みながらご飯を食べている。
その鋭い怒りの視線を向けられたまま食事をするのは非常に精神的にキツい。
「蓮季の作った料理はほんとうに美味しいな、おかわりいいか?」
蓮季は無言で浩太の持ってる茶碗を受け取り、山盛りに白米を入れて茶碗を返した。
「…………」
蓮季は無言でモクモクと白米を食べていると、いきなり箸を勢いよくテーブルに叩きつける。
「お兄ちゃん、これなんですか?」
浩太が押し入れの隅に隠していたアダルト本十五冊を見せつけ、思わず浩太はたじろいでしまう。
「おまえ何でそれを持っているんだ!?」
「お兄ちゃんの私物はどこに置いているか全て把握しているんだからね! そんな事よりこの本の事について言いたい事があるの!」
「男というものはな常に発情している生き物なんだよ。エロ本の一冊や二冊ぐらい置いてあるのは当然なんだ」
実際一冊や二冊で収まるほどの数ではない。
「そんな事は百も承知。私が言っているのはそういう事じゃない!!」
「じゃあ、何で怒っているんだよ」
「こんなにたくさんのエッチな本があるのに妹系のエロ本はなぜないの! せめて妹系じゃなくても近親相姦のエッチな本ぐらい所持してよ!」
蓮季の台詞に思わず浩太は顔を引きつってしまう。
まさかエロ本を置いていることではなく、妹系のエロ本が無くて怒りに満ちている蓮季の姿を見て、いつか性犯罪での加害者でニュース番組に報道される日が近いと確信してしまう。もちろん被害者は浩太だが。
「いやさすがにマニアックなジャンルに興奮なんてしない。もし俺が仮に妹の事を性的な目で見ていたら蓮季はどうしていた?」
「そのままベッドに連れ込み襲う」
義理の妹の頭は性欲に侵略されていた。
「おまえ、俺の部屋出禁な。この事親父と紀香さんに報告するから」
「別に良いですよ。それで出禁になったら外で襲えばいいんだから」
「一回お前の頭の中を確認しても良いか?」
「そこは頭の中ではなく、服の中を確認しても良いか、でしょ?」
「もう黙るから許して」
「わかればよろしい」
どこで話しが脱線したか忘れてしまったが、これ以上この義理の妹に話しても下ネタしか返ってこないと思った浩太はとりあえず黙る事にした。
美琴は十五冊のエロ本を何を思ったのか自分の鞄に無理矢理入れてしまい始めた。
「何しているんだ蓮季!?」
「これは責任持って私が処分します」
「そんな……」
浩太は落胆してしまう。今夜寝る前に何冊か読もうと思っていたのだ。
反論をしたかったが、蓮季から返ってくる言葉がどうせろくでもない回答が来ると思い諦める事にした。
それから夕食も終わり入浴の時も勝手に入ってこようとするので、急いで父親ではなく義理の母親の紀香に『蓮季に犯される』と緊急連絡すると、直ぐに父親と紀香が浩太のアパートに来て、蓮季を無理矢理父親の車に乗せて実家に強制送還されてしまう。
台風が去ったような気分になり真は一段落してお風呂に入ることにした。
それから数日後、浩太のアパートに自分宛の小包が届き、中を確認すると妹系のエロ本が大量に入っていた。
数えるとざっと三十冊入っている。送った犯人は考えなくても理解した浩太であった。。
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