第5話 妹との約束
蓮季を見送って自宅に着いた浩太は直ぐに親父に連絡を取った。
TRRRRRRR
『よお、浩太どうした?』
「どうしたじゃねよ。さっき
『そうか。今日からおまえの妹になるんだから、ちゃんと兄らしく振る舞ったか?』
「ああ。それと俺はてっきり妹じゃなくて弟の方が出来たと思っていたよ」
昨日の父親からの発言だとてっきり浩太は弟が出来たと勘違いしてしまった。まんまと父親にはめられてしまった。
『妹はイヤか?』
「別にイヤじゃないけど……何というか……その……最近になって、女性との接し方がわからないんだ」
『おまえの顔は女性受けしないもんな』
高笑いする親父の声に怒りを覚えて浩太は眉を吊り上げ大声で、
〈あんたの遺伝のせいだろっ!〉
『俺じゃなくて、おまえの顔は俺の父さんのその股父さん、つまりお前の
「許すまじき曾ジジイッ!」
どうして母親系統に似なかったのかと自分自身悔やむ。
『そういえば浩太の曾じいさんも顔の人相の事で困っていたと言っていたらしいな。でも曾じいさんもあの顔で綺麗な奥さんを貰ったんだ。浩太もきっといい彼女ができるよ』
「余計なお世話だ」
『まあ、このまま年老いても
「どういう意味だよ」
『意味を言わなくてもわかるだろ』
父親の考えることはろくでもない事だとわかる。
「妹と付き合うなんてごめんだ」
『かわいくてもか?』
「……もちろんだ」
『おっぱいがでかくても?』
「…………」
『ダハハハハ。冗談だよ冗談。本気にするな』
「クソ親父が!」
『スマンスマン』
通話口でゲラゲラ大爆笑している父親に百回ほど殺意が湧く。
「会話を強制的に変えるけど蓮季がアパートに訪れる前に、何か言っていなかった? 特に俺のこととか?」
『ああ。お兄ちゃんに早く会いたい、て騒いでいたよ。だから今日我慢できなくて浩太のアパートに訪れたんだろうな。もしかして迷惑をかけていたか?』
「別にかけてないよ。むしろ一緒にいて楽しかった(ほんとは、精神ごと妹に吸い取られてクタクタだけどな)」
『ん、何か言ったか?』
「いや、何も言ってないよ」
ついつい心の声をうっかり浩太は口ずさんでいた。幸い声が小さかったので親父には聞き取れなかったみたいだ。
『そうか。明日新しい母さんも浩太が来るのを楽しみに待っているからな』
「なあ、本当に俺が顔出しに行っても大丈夫なのか?」
浩太は内心不安が
父親は若いうちだけの青春だからしょうがない、と笑い飛ばしていたけど新しい母親に学校でのトラブルに巻き込んだら離婚の危機になりかねない。
浩太自身も揉め事を起こさないように自分なりに努力はしているみたいだが、なにせ向こうから喧嘩をふっかけられるから相手をするしかない。
『安心しろ、お前の喧嘩っ早いのはもう知っているし、顔の怖さもな。早く会ってみたいって喜んでいたぞ』
「顔の怖さは余計だ。でもまあその事を知っているなら安心して明日行けるよ。蓮季にも約束したしな」
『それじゃあ、明日待っているぞ』
プツ、と通話が切れた。
問題児に会いたいという新しい母親に対してすごく変わり者だと思う。
通話を終えた浩太は、お菓子を食いたくなり深夜コンビニ行くことにした。
暗い夜道の寂しく電灯がチラつく通路を歩いて行くと目の前にいつも行きつけのコンビニストアが見えてきた。
だが浩太の目の前にイヤな光景が写る。
不良達五人がコンビニの前で
「おいちょっと待て!」
少し太り気味の体格のいい制服姿の青年が浩太の方へと向かってくる。
「なんのようですか? 俺今忙しいんですけど、くだらないようだったらもう行きますので」
そのまま自動ドアの前まで歩いたとき、突然頭部に痛みが走る。
背後を振り返るとさっき声を掛けてきた小太りの不良青年が浩太の後頭部目掛けて隠し持っていた警棒で勢いよく叩き付けてきたのだ。
後頭部からたらたらと流血するのを手で確認すると浩太は眉間に青筋を立て子太りの不良高校生目掛けて鋭い右ストレートをかます。
「ぐはぁ」
強烈な一撃を食らった子太りの不良青年はそのまま大の字に倒れこむ。
倒れた子太りの不良の顔面は原型がとどめてないほど
「根性なしが」
地べたで気絶している子太りの不良青年を後に浩太はコンビニでお菓子を買いに店に入っていく。
会計を済ませた浩太の大量の流血姿を見た店員はビックリして二度見をしていた。
アパートに着いた浩太は玄関を開けて部屋の隅にある救急箱の中にある消毒液と包帯を取り出して頭部の処置を行う。
処置が終わり洗面所の鏡で自分を見つめると包帯だらけの額を見て思わず苦笑してしまった。
明日包帯だらけで実家に行ったら、きっと新しい母親が
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