第4話 楽しい一日
二人でアパートに帰ると早速、
幸いある程度の調理器具は実家から持ってきてあったので、それを使い蓮季は調理を始める。慣れた手つきで、食材を調理する姿に感心した。
近くで眺めていると調理の邪魔になると思い、その場から離れ
しばらくすると食欲をそそるスパイシーな香りが部屋中に充満してくる。
「お兄ちゃんお待たせ」
白米の上にカレーを載せた皿を持ってきた蓮季は、テーブルの上に二人分置く。
見た目は一見普通のカレーと変わりない。いただきます、と声を上げてスプーンでカレーと白米を絡み合わせて口に運ぶと、口の中でピリリとした香辛料の刺激と熱々の白米が絶妙にマッチをしている。
誇張抜きで、今までこんなカレーを食べたのは初めてだった。
「すごくうまいよ蓮季」
「そう言ってくれると作ったかいがあった」
浩太は額に汗を流しながら、カレーをがっつり口に運ぶ。後味の辛さが癖になり口の中にカレーがなくなるにつれてどんどん口に入れていくと、いつの間にか山盛りにあったカレーがすっかり無くなった。
「おかわり」
「はい。夜まで食べられるように沢山作ったからどんどん食べてね」
浩太はあまりの美味しさになんとカレーを三杯大盛りでおかわりした。
少し遅めの朝食を済ませ、蓮季は食べ終わった食器をを洗って、浩太は部屋でテレビを見ながら一息ついていた。
「お兄ちゃん食器も洗い終わったし、なにかしない?」
「別にいいけど、食べた後すぐ後片付けをしたんだから少し一息ついた方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だよ。今日はお兄ちゃんと満足するまで遊びたいんだから、それに体力には自信あるんだから」
「いいぞ。そしたらゲームでもするか?」
「うん。私ゲーム好きなんだ――あっ、最近発売されたゲームがあるじゃん。これやろうよ」
浩太と蓮季は陽が暮れるまで置き型ゲーム機『トゥイッチ』の対戦ゲーム『スプラッシュッテューン』を対戦プレイする。
スプラッシュッテューンとはペイント銃を装備して対戦相手の身体に付いている的により多くペイント弾を当てた方が勝利するという対戦ゲームだ。
蓮季はゲームが得意らしく、悔しいことに一度も勝つことができなかった。
「お兄ちゃん案外弱いね」
浩太のあまりにもゲームの下手さに蓮季は不服みたいだ。
「おまえが強すぎるんだよ! 何だよあの超人的な動きと的確な銃の撃ち方は、おまえはゲーマーか?」
「ゲームは好きだけど、ゲーマーではないと思うけど。ちなみにボタンの連打は一秒間に二十連打できるよ」
「高○名人を超えてやがる!」
「次は何のゲームするの? アクション? それともレーシング?」
両手にソフトを持って見せてくる蓮季に浩太は呆れて物が言えない。
「まだゲームができる体力持ってるのか……」
「まだまだこれからだよ」
正直ゲームをやる体力はもう尽きたし外は暗くなってきているので、蓮季を帰らせることにする。
「蓮季、もうかなり陽が暮れてきたから、帰ったほうがいいぞ」
「まだお兄ちゃんと一緒にいたい……ダメ?」
上目使いで子犬のように目を
「ダメだ。また今度遊びに来い」
「いいの!?」
「泊まるのは禁止だけどな」
「えぇぇぇっ! そんな、お兄ちゃんがいないと、わたしの精神が崩壊しそう」
「おまえが泊まると俺の理性が暴走します」
「ええ。そんなに私のこと襲いたいの!」
目を輝かせてこちらを見つめてくる蓮季が発情してる猛獣に見えて浩太は一歩身を引いてしまう。
まず女性の語るセリフではない。
「女の子が襲うというワードを使うな」
「だって理性が暴走するんだよね私の豊満な胸や綺麗なお尻を見て抑えきれない精力が我慢できなく欲望のまま自我を忘れて私に――」
「わかったからそれ以上言うないでくれ、俺が悪かった」
これ以上言わせるとダメな気がすると思い蓮季の会話を強制的に終わらせた。
「じゃあ今日は泊まってもいいよね?」
「なんでそうなるんだよ……。明日、実家に顔を出すつもりだから今日は帰るんだ。蓮季の母親にも挨拶しないといけないしな」
「それってつまりわたしと結婚するために?」
両手で頬を抑えて腰をモジモジさせる。
「おまえ一度病院に受診した方がいいな(たのむから腰を振るな! ムラムラするぞ)」
「失礼な! こう見えても健康管理には充分に気をつけているんだよ」
「身体はともかく心配しているのは頭の方だよ。いいか蓮季、何か勘違いしているぞ。俺は新しくできた母さんに挨拶する意味で、蓮季と結婚するために了承をもらいに行くわけじゃない。そもそも俺たちは未成年で兄妹なんだぞ」
残念な頭の妹に仕方なくこと細かく説明すると眉を八の辞させてムスッとフグのように頬を膨らませて
「……もういいよ。今日は帰る……」
「素直な蓮季は好きだぞ」
「結婚したいぐらいに好き!?」
「だからなんでそうなるんだ……」
「ムッ、そこはお兄ちゃんも素直になって欲しいんだけどな……」
「俺はいつも素直だ」
蓮季は頬をプクッと膨らませる姿に浩太はかわいさのあまり心を打たれそうになる。
不満な表情をしながら蓮季はトコトコと重い足取りで玄関まで向かう姿はまだ浩太の部屋から出て行きたくないんだと感じ取れてしまう。
蓮季は玄関前に立ち止まり、
「明日の朝早く来てね。約束だからね。約束を破ったら許さないんだから」
不服を浮かべる蓮季の顔を見て浩太は苦笑する。
「もし、約束を破ったら一体何をされるんだ?」
「既成事実を作り両親に報告します」
「明日必ず行くから心配するな」
蓮季の事だから本気でやりかねんと思った浩太は明日は必ず早く起きて実家に行こうと心がけるようにした。
「それじゃあ、帰るね」
「……わかった。外も暗いし駅まで送っていく」
「うん」
人の気配がない静けさな夜をカップルのように浩太は可愛い妹の蓮季を駅まで送っていくことにした。
「私、もしお兄ちゃんが出来たらこうやって暗い道を帰るとき付き添ってもらうのが夢だったの」
「まあ、俺も一人っ子だし兄弟は欲しかったな。友達に弟がいるのが羨ましかったときもあったし」
「ねえ、今弟っていった?」
「おう、言ったが――やばっ!」
「ごめんね。新しくできた兄妹が弟じゃなくて妹で!」
とんだ爆弾発言を浩太はしてしまった為、そっぽを向いて蓮季は不機嫌になってしまった。
「怒るな怒るな。確かに最初親父から聞いたときは弟ができると思って嬉しかったが、今はこんな世界一可愛いく家事もこなす妹ができて俺はとても嬉しいぞ」
「ほんとに?」
蓮季はジリジリ顔を近づけてくる。
「もちろん」
「ほんとにほんとに?」
「ほんとだよ。お兄ちゃんのことが信じられないのか?」
「……なんか腑に落ちないけど一応信じる」
「信じてもられて俺は嬉しいぞ」
「それじゃ駅だから。送ってくれてありがとね」
「ああ。また、明日な」
蓮季は顔を横に向けて自分の頬を浩太顔に近づけてくる。
「何だよ」
「別れのチュウをお願い」
「するか!」
キスではなく蓮季のおでこに強烈なデコピンをお見舞いする。
デコピンの衝撃で頭がまともになってくれたら幸いだ。
「もしかしてお兄ちゃんは異性を痛めつけることに興奮する性癖の持ち主?」
むしろ悪化してしまった。
「早くしないと電車に乗り遅れるぞ」
「••••••わかりました」
項垂れながら蓮季は駅の入口へと向かって行き、途中で
台風が去ったような感じには思ったが、今日の一日は浩太にとって今までで一番の楽しい一日だと思いながら来た道を戻りアパートへ帰ったいくのであった。
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