第25話 筋肉と雨音の不協和音 その25(エピローグ)
「あの依存気味が用事で帰った?……嫌な予感がするな。けどまあ学校外なら俺には関係ないけどな。」
松久は紅葉の腑に落ちない行動に嫌な予感がしていた。悠莉が意識を失ったときは否が応でも離れず側に引っ付いていたのに放課後になった途端用事があると先に帰っている。悠莉の安否を確認しないでだ。
明らかに何かあろう行動に松久は一つの可能性を考えた。だが考えるだけで実際にそれが起きたとしても自分には関係の無い管轄外の出来事になるため何も手を打つ事は無かった。
そして、その考えは正しく紅葉は松久の考え通りのことを行おうとしていた。
「ックソ……アイツら絶対に許さねえ!私をバカにして!」
瑞樹は病院の検査が終わると帰路についていた。検査は16時30分までかかりオレンジ色の日差しが照り注ぐ道を歩いて帰っていた。
「MM部だっけ?アイツら全員許さない!一番優れているのは誰か思い知らせてやる!」
道中に転がっている石を蹴りながら誰もいない夕暮れの道を悪態をつき歩いていた。瑞樹という女子生徒はいつも学年2位であり塾や家庭教師は勿論、予習復習ときちんとこなす優等生であった。
平日は学校終わりに夜遅くまで塾に通い勉強し、休みは家庭教師に1日中つきっきりで勉強を見て貰う毎日だった。
これまでの努力を考えると彼女の努力量は凄まじいだろう。だがそれでも学年で成績が2位なのは天才である蓮華がいるせいだ。授業中ふざけたり、つまらない授業なら保健室でサボっている言わば問題児である。
そんな蓮華に負けているのが彼女にとってどれほど屈辱なのかは想像に難くない。自分の努力を軽くステップを踏むように越えてくる。そんな蓮華が邪魔で邪魔でしょうが無かった。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!」
怒りで周りを見えていない瑞樹はとある人物とぶつかった。
「っとごめんなさい。」
「……いいえ、大丈夫です……。」
「アンタ!?一体何しにき……!」
瑞樹はぶつかった人物に思い当たりがあり目を見開いて何かを言おうとした瞬間その人物から腹にスタンガンで電気を流された。
「あっ……!があぁ!?」
腹部の痛みに為す術も無く地面に膝をつき痛みで視界がぼやけ始めたがここで気を失ったらいけないと瑞樹は薄れゆく意識をなんとか歯を食いしばりつなぎ止めた。
「……気絶した方が……楽なのに……。」
スタンガンを鞄にしまい今度は水が入った小瓶を取り出すと動けない瑞樹にゆっくり近付き瑞樹の視界に小瓶を見せつけた。
「な……にを……!?」
「……えい。」
困惑している瑞樹に鼻を摘まみ無理矢理上を向かせ開いた口に小瓶の水を流し込んだ。飲み込んだのを確認すると手を離しソッと離れた。
「何を……飲ませた!?」
「すぐに……わかります……。私はこれで失礼します……。」
そう言うとぶつかってきた人物は足を瑞樹とは反対の方向を向けて歩き始めた。瑞樹は何が何だか理解が追いつかず困惑の色を見せた。
一体自分は何を飲まされた?そもそもなんでアイツがいる?何をしに来た?など多くの疑問が頭を占めていたがそれは間もなく全て吹き飛んだ。
「あっ……!があぁ!い、痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?痛い!?ああああああぁぁぁぁああああ!?」
瑞樹の体からは全身が引きちぎられる痛みが襲いかかった。筋肉の筋が切れるような痛み、動かそうとすると針を刺す痛みが全身を襲いかかった。どうしたのかわからない。どうしていきなり痛み出した?わからない。何で、どうして、痛い痛い痛いと瑞樹の思考は滅茶苦茶に破壊された。
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!あああああぁぁぁぁああ!!」
夕暮れの道に少女の悲願する声が木霊し続けた。だが誰もいない道には助けてくれる人物はおらず救急車を呼ぼうにも全身が痛いのでは身動き一つ取れない。
そんな最悪な状態に絶望していると新たに女子生徒が目の前に現れた。
「派手にやったね。ふむふむ、これが紅葉ちゃんの魔法の威力……か。いやー蓮華ちゃんと紅葉ちゃんの魔法を見れて私は大満足だよ。ね?瑞樹ちゃん?」
「お……前……!?っがぁ!?」
目の前に現れたのは悠莉を襲うようけしかけ、魔法を見れて満足と使い捨てられた菫だった。瑞樹は睨みを決めるが全身の痛みが襲いかかりすぐに悲痛な顔へと戻った。そんな苦しみ藻掻いていると菫はその様子を只ずっと観察を続けた。
「毒と言っても色んな種類があるからね。恐らく今回は神経系の毒かな?他にもどんな毒を作れるのかな?あはは、楽しみだね。」
一体次に何が起こるのか他にどんな事が出来るのか菫は考えるだけで楽しくてしょうが無かった。
「魔法」は一般的に見たら威力が無く持ってて損は無いが特も無いように思われている。だが菫は違った。菫は「魔法」というのは使いようだと考えている。
ちょっと火をだせるのなら引火しやすい物や油などに使えば火事の一つや二つ簡単に引き起こせる。そのため菫は「魔法」は危険な代物だと考えている。
「ふ…ふふっ……ああ最高だよ。今日だけで2つも珍しい魔法を見れた。本当にありがとう、道化師さん♪」
「く……っそがぁ!?」
瑞樹の悲鳴は悲しく奏でられると夕日はその声から逃れるように沈み、暗い夜を告げるべく退場していった。
それから瑞樹は3日三晩激痛に際なわれ始めは復讐心が燃え上がっていたが、激痛により次第に薄まっていた。
そして残ったのは痛みを和らげて欲しい苦しいのはもう嫌だと、どうしてこんな事になってしまったのか。後悔の念が押し寄せてきていた。
三日間の激痛により瑞樹の心は完全に折れていた。もうMM部、蓮華に仕返しをする気はすっかり無くなっていた。
変わりにあるのは許してほしい、痛いのはもう嫌だと悲願だ。それからは写真件を瑞樹が合成で作ったと先生達に説明して謝り、蓮華達には近づかないようになった。
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