第10話 MM部へようこそ! その10

 悠莉が楓と紅葉の場所へ着いたのは2度目の沈黙が続いてから数分が経った後だった。


 全速力で走ってきた悠莉はその場の空気がどんな居心地が悪いものでも関係なくやることは既に決まっており全ての元凶であった小森を睨みつけ言い放った。


「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……ま、待たせたな……。アンタが……ぜぇ……ぜぇ……やったことは……はぁ……全部、聴いた……ぜぇ……。」

「息を整えてから喋りなさいよ。」

「櫻井先輩……こんにちは。」

「ようやく登場したと思ったら締まりませんね。」


 ここまで来るのに体力を使い切ってきた悠莉は疲労で笑ってる膝を両手で押さえ激しい息切れをしながら満身創痍の状態で何とも締まりが悪い情け無い登場を披露した。


「ちょ、ちょっと……タイム……オェ……苦しい……。」

「どんだけ疲れてるのよ…何したらそんなになるのよ。」

「お、屋上から飛び降りたり……はぁ……はぁ……町内マラソンしたり……。」

「アンタ何言ってるの?」


 格好のつかない登場だが悠莉の登場によりあの薄気味悪い空気は奇麗に無くなった。それから悠莉の意味不明な言葉に呆れながら楓も緊張の糸が切れたように強ばっていた表情は緩み普段通りに戻っていた。


 悠莉の呼吸が整うまで紅葉は背中をさすり続け、緊張感も何も無くなった空気に小森は予想していたよりカッコ悪い悠莉の登場に溜息をつきながら話せる状態になるまで待つしかなく、悠莉が話せる状態まで呼吸を整えられるのに数分かかった。


 そしてようやく呼吸を整え改めて小森に指さし言い放った。


「お前のやったことは全部浩一郎君から聞いたぞ!どうしてこんな事をしたのか話してもらうぞ!」

「話していいんですけどさっきの間抜けな姿を見た後に話すのはなんか精神的に嫌ですね。自分まで間抜けに思います。」


 あっさりと自白する気があった小森は喋ろうと思っていたが、悠莉の間抜けな姿に全部見破られたせいで話すのは屈辱的に思え、薄気味悪い笑みは消え怒りが出てきた。


「それに対しては同情するわ。でも話してくれる約束でしょう?どんなに悠莉が情けなくて間抜けな登場でも約束は約束よ。」

「はぁ~……約束でしたからね。仕方ないです。」

「俺が間抜けっていう件いる?いらないよね?」


 会話の中で何度か間抜けという言葉が悠莉に襲いかかりかかりここまでくるのに弱った体には精神攻撃を受けきれるほど弱っており地ベタに這いつくばり倒れ込んだ。。


「櫻井先輩はそのままでも……大丈夫ですよ……。間抜けでも……平気です……。」

「追い打ちは止めてくれ!」


 紅葉からの追い打ちを受けながらもこんな事を引き起こした理由を話してくれる小森に視線を向け、緩んでいた空気が小森に吸い込まれ三度小森から放たれる薄気味悪い空気に支配され悠莉と楓は反射的に背筋が伸び体勢を立て直すと小森から出される言葉を息をのみながら待ち構えた。


「MM部に相談にきた理由は飽きたからです。」

「飽きたから……だと……?飽きたからってどういう意味だ?!」

「そんなに騒がないで下さいよ。ちゃんと説明しますから。」


 浩一郎の想いを利用し踏みにじったあげく自分を脅迫の材料にしてまで行った小森から出た理由が『飽きたから』というふざけた理由に悠莉は怒りを露わにするが小森は耳障りと鬱陶しいと云わんばかりに顔を背け話を続けた。


 悠莉が怒っている隣では楓も同じように怒りを感じていたが楓の分も悠莉が怒りを露わにしていたため楓は何も言わず爪が食い込むほど強く握りこぶしに作りだしていたがその握りこぶしを優しく包むように小さい手が置かれ楓はその手の主を見ると紅葉が何も言わず楓の握りこぶしを包み込んでいた。


 紅葉のおかげで握りこぶしから力が抜け包み込んでくれた小さな手をお礼を言うように握り返し小森の話に構えた。


「浩一郎君から聞いたなら私が望んでいるのはわかりますよね?」

「幸せの絶頂期から絶望して快楽を得たいっていう歪んだ欲望だろ。だけど相談に来た日の筋肉からは『辛い助けて』って聞こえたがそん時は絶望してなかったのか?」


 理解のできない欲望を吐き捨てるように投げると、前回聞こえた筋肉達の声も本物だったのかしるため張本人に問い詰めた。


「いえいえ、絶望していましたよ。ただあれぐらいじゃ快楽には足りません。」

「だから盗撮された時筋肉から笑い声が聞こえたのか、ようやく快楽になるものを与えられたから!」


 どうやら筋肉達の声は間違ってはいないかったが、悠莉は筋肉達の声を聞くよりも小森の心の声を聞くべきだった。


 筋肉達からでた情報を十二分に活躍できていない自分の無力さに悠莉は握りこぶしを作り激しく後悔した。


「正解です。浩一郎君と恋をして私は本当に楽しくて嬉しい幸せの絶頂期にいました。だから今が絶望するのにちょうどいいタイミングだと思ったんです。今絶望したらきっとあの絶頂期との差で強い後悔と罪悪感と悔しさを味わえる。そんな素敵なタイミングだったのに浩一郎君ったらお預けしてきたんですよ?せっかく後一押しで極上の快楽を味わえたのに酷いことはできないって中途半端に止めちゃって……。そんな風にされてこれ以上は望めないとわかったんで皆さんに後処理をお願いしたかったんです。」

「後処理って……アンタ何言ってんのよ!」

「つまり、浩一郎君からはもう快楽を貰えないから捨てるが後処理が面倒だから俺達にやらせた……って事でいいのか?」


 人の感情を完全に無視している小森の言葉だけを組み合わせると徐々に小森がどんな人物で考え方をしているのか読めてきた。


「はい!部長さんの言う通りです!」


 楓の怒声をものともせず悠莉の言葉を詫びれる様子もなく笑顔で自分の言いたいことが伝わってよかったと安心していた。


 無邪気な子供が行う自覚の無い悪意を感じさせる小森に悠莉は声を荒げる事無く静かに俯き自分の言った言葉を否定せず笑顔で肯定された事がショックだったが声は出さずにいた。


 そんな悠莉の真意を気にせずに小森は自分の言葉がしっかり相手に伝わっているのが嬉しく、笑顔を浮かべながら自慢のオモチャを自慢するように声色をあげ楽しそうに話しだした。


「浩一郎君との時間は本っ当に楽しくて嬉しくて気持ちが良くて心が満たされていたんです!私のことを考えてくれたら嬉しかったしキスをしてくれたのも気持ち良くて頭が惚けていました!お互い好き同士で周りから見たら理想的な恋愛だったと自負しています!それほど幸せの絶頂期でした!」

「だったら何でわざわざそれを壊すような事をするのよ!そんなに幸せでいられる時間なんてそうそう無いでしょ!」


 楓は小森の心情や価値観を一切理解できることは無く、理想的な恋愛をできる幸せならばわざわざ壊す必要など一ミリも理解できなかった。


 幸せでいられる時間はいつも限られている。しかもその時間は何の訪れもなく消え去っていく。悠莉のお母様もなんの前触れもなく亡くなり、そのときの悲しみは悠莉の次に感じていたと自負している。


「はい!これだけ幸せの時間なんてそうそうありません!だからこそ絶望しがいがあるんですよ!絶頂期から地ベタまで一気に転落して恋心も恋人も自信も信頼も人望も自尊心すら全てを失う!その時の事を考えただけで……もう快感です……。」

「アンタ……狂ってるわよ。そんな、そんなわけのわからない欲望に付き合わされた浩一郎君はどうすんのよ!浩一郎君はきっとアンタを本気で好きだったのよ!?それなのに……、人を好きになるって簡単じゃないのよ!ましてやそれを壊すような事なんてしちゃいけないのよ!」


 届くかと思ったが小森の反応はどうしてそれがダメなのかわかっておらず、あたかもそれが当然と言うように主張を変える気はなかった。


「どうしてですか?好きなんて人それぞれですし私がどんなものを好きでいても良いですよね?」


 小首を傾け自分の一体何がいけないのか理解できていない小森に楓の説得も意味をなさかったが意味が無いからと言ってここで言葉を止めてしまう訳にはいかなかった。


 小森のいう好きの感じ方は確かに人それぞれでどんな形を持っていてもいい、それは誰かがとやかく言う問題では無くむしろ受け入れるべき相手の個性とも言える。


 しかし小森のその言葉を受け入れてしまったら小森の考えに呑まれて肯定してしまいそうになるのが怖く楓は小森の考えを否定し続けた。


「確かにどんな形の好きに誰かが文句を言うのは間違ってると思う。でもアンタがやってる事は絶対に間違ってる!」

「別にいいじゃないですか。人様の恋愛事情なんてどういう終わりを迎えても……。私と浩一郎君の恋は終わったんですから傷心中の私達を放って置いて下さいよ。」

「ホント身勝手でわがままし放題ね……。人の恋心をなんだと思っているのよ……!」


 お互いの価値観の相違から楓は小森から一歩も引かず異様に噛みついていた。小森の言い分を認認めてしまえば今後も浩一郎のような純粋な思いを持った子達が今後も異常性癖者の魔の手に落ちてしまう危機感が感じられた。


「快楽……ですかね。至極極上で同じ味が一つもない禁断の快楽だと思ってます。」

「っ!アンタいい加減に……!?」


 ついに堪忍袋の緒が切れた楓は距離を保っていた小森に近付き右手を上げ振り落とせば小森の頬を打つことができる位置まで踏み込んでいた。


「それが答えなんだな。それがお前がしでかしてきた事に対しての答えとして受け取っていいんだな?」


 悠莉は楓が小森に平手打ちを喰らわす直前に手首を押さえ、悠莉の目は小森をすでに危険人物だと認識しており部員を傷付ける可能性がある存在と押さえていた。


「構いませんよ。今まで言ってきたことが私の答えです。」

「そうか……。それはもう相談内容が解決したと判断していいのか?」


 悠莉は顔を下げ呟くように小森に最初に話した契約のことを聞き出した。急にそんな昔の話を出されて思い出すまで時間がかかったが屈曲思い出せず適当な返答をした。


「はい?ああ、そうですね。バレちゃいましたし楓先輩を見る限りじゃ私の願いは叶えられそうにないので解決って事でいいですよ。皆さん、私のわがままに付き合ってもらってありがとうございました。」


 悠莉はとうに我慢の限界を超えて直ぐさま掴みかかろうとした楓の前に腕を伸ばし静止させ、止められた事に納得がいかない楓から殺気のこもった視線で射貫かれたが悠莉は気にすることなく小森の本心を聞いていた。


 それとこの問題は元々小森から依頼されたものでMM部として彼女の依頼の解決になったのか本人に問いかけ解決したと言い切り、そうなってしまうとMM部としては解決した件をほじくり返す真似をしてまで関与することが出来ずMM部としての活動はここで終了となった。


 楓もその事には気が付いているが部として関与できなくなったからと言って、見て見ぬ振りをすることはできずここで引く気は無く小森に問い詰める勢いを殺さなかった。


 そして、悠莉の手で静止させられていたがその手を退かそうと手を伸ばすと楓の手は目の前にあった悠莉の手を掴むことは無く空を切り、くるはずの衝撃が無かったことに体のバランスが一瞬前に崩れるが直ぐさま踏み止まり突如として消えた悠莉の手を探し前を見ると、悠莉は小森の方に歩いて距離を人一人入らないほどにまで縮めてた。


 ベンチに座っている小森の真っ正面で止まると大きく息を吸い込み深く息を吐くと悠莉は鋭い眼光光らせ痛みを無視しながら右腕を大きく振りかぶりそのまま拳を作りベンチに座っている小森の左頬を全力で殴り飛ばした。


 ベンチに座ってとっさに回避する動作をとることができず悠莉からの拳の威力を殺せずそのまま受けてしまいベンチから放り出され地ベタに叩き落とされた。一種何が起きたのか理解できるまで時間がかかったかが左頬から尋常じゃない熱く強烈な痛いに小森は地面に這いつくばってながら悠莉から殴られたのだと把握できた。


「小森の言う通り好きは人それぞれだ。何を好きになってもいいし、止める権利なんか無いけどなぁ……それでもだなぁ、テメェ勝手な欲望に浩一郎の本気の気持ちを利用してるんじゃねえぞゴルァ!」


 地面に這いつくばっている小森に肩で呼吸をしながら右腕を振るませながら怒りを露わに露わにした。


「っぶ!……い……ったぁ……。普通女の子を殴りますか!?いっつつ……」


 小森は殴られた左頬を押さえつつ蹲り数秒受蹲ったまま動けなかった。それ以前に自分が何をされたのか予想がつかなかった。急に左頬に強烈な衝撃を受けたと思ったら視界は転がり気が付いたベンチから転げ落ち地面の上に蹲っていた。


「安心しろ俺からは一発で終わりだ。後はテメェを浩一郎に会わせて謝罪させる。テメェの考えを正そうなんてもう思わねえ、だけど浩一郎には謝罪して貰うぞ。答えはハイか了解だ。」

「っつぅ……選択肢無いですね……いてて……。もし嫌だと言ったらしどうします?」

「左頬を殴ったから平等になるよう右頬を殴る。」


 左頬を殴ったら右頬も殴ると断言してくる悠莉に冗談の余地はなく小森の心は恐怖感が生まれ始めた。


「櫻井先輩……それ一発じゃない……。」

「言っても無駄よ紅葉……。それよりどうすんの小森さん?大人しく謝罪しに言った方が賢明だと思うわよ。アイツ本気でするわよ。」

「そうですね……楓先輩の言う通りです……。流石にあんなの2発も喰らいたくありません。」

「ならすぐに行くぞ。菫先輩に連絡して浩一郎君を引き止めてて貰う。」


 小森は悠莉からの拳の痛みに蹲りそうになりながらも殴られた左頬を押さえ消えるかわからない痛みが引いていくまで地ベタに座り込んでいた。


 悠莉が菫と連絡を取っている間地ベタに座り込んでいる小森の側に楓が近付くと、小森は殴られると思い反射的に目を瞑り両手で顔を庇う体勢に入った。


 目を瞑ってしまったことで視界から色が消え真っ暗になり楓が何をしてくるか視覚から認識することができず暗闇から生まれ芽生えてきた恐怖心の成長は早く小森は身を縮め震え始めた。


 悠莉ほどの力は無いにしろ全力で殴られたらたとえ両手で防御をしていても悠莉に与えられた痛みがまだ残っている以上どんな攻撃がきても体にダメージは入ってしまう。


 どう転んでも痛みがくるのは避けられないと思った小森はよりいっそう強く目を瞑り体を強ばらせた。


「そんな怯えなくていいのよ。ほら頬見せて、アイツに殴られたんだから何もしなかったら酷く腫れるわよ。」

「え?な……何で?」

「女の子なんだから顔が腫れたら大変でしょう。ほら冷やすから大人しくしてる。」

「あ、は、はい……。っちべた……!」

「我慢しなさい。冷やさないと冗談抜きに腫れるわよ。アイツと本気でケンカして味わったんだから間違いないわ。まあその分悠莉の顔面も腫れさせたけど。」

「そんな恐ろしいことしてたんですね……。いっつつ……。」


 暗闇から訪れた感覚は体を蝕む痛みや怒声では無く怪我をしている小森への心配するような優しい声と左頬を包む暖かな感覚だった。


 予想外の感覚に小森は戸惑いつつ抵抗する気が微塵も起きず楓の言われるがまま痛みが続いている左頬を差し出し、楓の鞄から湿布とアイシングを取り出し頬の手当を受けていた。


 どうして楓がここまで手当をしてくれているかわからずどう反応したらいいか迷っていると楓はそんな小森に対して軽く息を吐きながら少し困った表情を浮かべていた。


「アイツの拳痛かったでしょ?」

「メチャクチャ痛いですよ……。まだヒリヒリします……。」


 悠莉から殴られた左頬を摩りながら涙目を浮かべていた。女の子相手にこんなことをして悠莉のこころは痛んでいたが部員への危害がでる可能性としては軽いものだと感じた。


「見境が無くなったり怒りが頂点に達すると老若男女問わずぶっ飛ばすのよ。だから私はそうならないように止めないといけないんだけどね……。ごめんなさい、止める事ができなくて……。」


 楓が何に謝っているのかわからないが楓から感じられる後悔は重いものに感じおいそれとは聞けぬ雰囲気はあった。


「あ、いや……。そんな、別に気にしてないので……。ああ、だから鞄からアイシングやら湿布が出てきたんですね。」

「一応何があってもいいように常備しているの。」

「そうなんですね……。」


 左頬のアイシング受けながらばつの悪い表情を浮かべている小森に楓は怒ることも同情することも無く自分の責任だと攻めながら静かに手当を続けた。


 楓は悠莉と暴走するのを止めるように約束をしていたにも関わらず悠莉を止めることが出来なかったのは疎か、自分の怒りを制御できず真っ先に掴みかかろうとした自分の弱さに嫌悪していた。


 約束も守れず小森に傷を負わせ、悠莉にも殴らせてしまい楓は後悔で頭がいっぱいになり、小森は後悔などが快楽になると言っていてが快楽になるどころか心臓を押し潰し罪を背負わされるように重い痛みしかなかった。


 目を伏せ唇を噛んでいる楓に紅葉は楓の側まで近寄りいつもは楓の方が身長が高くできないが今は小森の治療のためしゃがみ込んでしているため紅葉より頭の位置が低くなっているおかげで紅葉はいつ自分がされているように楓の頭を優しく撫でた。


「ちょ、ちょっと紅葉どうしたのよ?」

「楓先輩、辛そうだったので……。少しでも……紛れたらと思って…。」


 紅葉は思い悩んでいる楓から出ていた哀愁が気になりキャラではないがアタマを撫でストレスを少しでも軽減しようとした。


「もう……そんな頭撫でられるようなキャラじゃないんだから恥ずかしいわよ。」

「ご、ごめんなさい……。迷惑でしたか……?」

「ううん、そんなことないわ。慰めてくれてありがとうね紅葉。」

「元気になれたなら……よかったです……。」


 紅葉から撫でられた頭から心にあった重たい痛みが抜け落ち楓の気持ちは軽くなり紅葉にお礼を言うと満足げに笑顔を見せお礼が嬉しく撫でる手を止めないでそのまま続けた。


 紅葉から頭を撫でれ続けているところに菫との連絡が終わった悠莉が近付き3人の中に入ってきた。


「菫先輩と話してまだ学校にいるみたいだから一度部室に集合する事になったがいいか?」

「平気よ、小森さんは動ける?痛みが酷かったら悠莉が担いでいくわよ。」

「大丈夫ですよ。楓先輩から湿布も貼ってもらいましたから。」

「私も……大丈夫です。」


 4人から承諾を得たので悠莉は急いで学校へ戻ろうとしたが、異様に自分の達にの目にショッピングモールの客からの目線を集めれたている。


「よーし、それじゃあ行くぞ。って何だか視線を感じるが何だ?」

「今頃?こんな人の多いショッピングモールで女の子を殴り飛ばしたら注目されるのは当たり前でしょう。」

「あ……。」


 いざこの問題をしようと最後の仕事に取りかかろうと気合いを入れたのはいいが、やたらと周りの視線が悠莉に集まっており中には野次馬になっている箇所もあり先ほどまでは怒りなどで周りを気にしている余裕も無かったが今は何とか一段落し余裕ができたことでようやく悠莉は自分が何をやらかして周りはそれを見ていたのか思い出した。


 思い出してからの悠莉の行動は早く、その場を早急に離脱するため紅葉を片手で担ぎ楓に小森のことを任せて風の如く疾走した。


「やってしまったー!また…かよー!バカヤロウ!」

「櫻井先輩の腕……逞しい…。」


 悠莉の背中で現状に似つかない発言に悠莉はスルーしながら抱えたまま走り出した。


「気付くのが遅いのよこのバカ!小森さん大丈夫?ついてこれる?」

「だ、大丈夫です!」


 左頬を押さえながら辛う時で楓についていく小森は一体自分は何のためにこんなことをしていたのか疑問が生まれた。


 初めは浩一郎を利用して絶望による快楽を求めていたはずが、今はよくわからない部の人間達にアッサリ見抜かれ引っ叩かれた後に全力疾走をしている。どうしてかわからないがそれがあまり悪くない感じがしていた。


「ああもうヤダ!また変な噂たてられる!勘弁してくれよ!」

「自業自得でしょうが!巻き込まれた私達に一言ないの?」

「すいませんでした!」


 騒々しく疾走していく悠莉達の姿は賑やかなショッピングモールでも高い存在感を放ちながら注目の的になっていた。係員や巡回中の警備員から注意されながらも速度は落とさずショッピングモールの出口まで全力疾走で駆け抜けてた。


 そしてその勢いのまま今度はショッピングモールから学校まで休み無く速度も落とさないまま向かった。

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