3-6 テーブルトーク


     × × ×     


 交渉のテーブルは夕食の席に設けられた。

 両家の面々が向かい合う形で座り、さながらお見合いのような空気になっている。


 もっともイングリッドおばさんには諸般の理由から別室に控えてもらっており、キーファー家のほうはヨハン・フランツ・エミリアの三兄妹だけが座っているため、外形的には『親戚の寄合にありがちな子供だけ集められた部屋』に近い。

 さらにいうと公女の従者扱いとなるエマとモーリッツ氏については、主人と同じテーブル席に座ることが許されず、窓際に粗末な椅子を提供されている。よって位置関係としては『入社試験の最終面接』に準じている。

 どちらにしろ居心地は良くない。


 テーブルの上には温かい豆スープのほか、冬の同盟国内ではめったにお目にかかれない野菜や果物が並べられていた……よく見たら作り物だった。


 ヨハンは不細工なスイカの向こうから公女に話しかけてくる。


「おいマリー。お前の後ろに座る猿のような小娘が、手紙に書いてあった魔法使いだな」

「わたしの大切な友人でもありますわ」

「そっちの赤茶毛は何者だ。ドーラといったな」

「その子はわたしの財産管理人です。公社代表でもあります」

「ほほう……よかろう。両名の同席を許してやる。終生の栄誉とするがいい」


 ヨハンの指示でテーブルのセッティングが始まる。

 少女たちが公女おれの両隣に椅子を与えられ、よりお見合いらしくなってきた。

 別にそういう席ではないけど。


「うええ。なんで野蛮人があたしの前なのよ。抜群にありえないわ……」


 対面に座った新大陸出身の少女に対して、エミリアは汚いものでも見たかのような顔をしていた。

 対してエマはいつものように眠たげな目のまま。彼女の性格からして、機会があれば相手の弱味を読みとるつもりだろう。ぜひやってみてほしい。


 ヨハンの弟フランツのほうは、赤茶毛の少女のあでやかな晴れ姿に照れてしまっている。

 小太りの少年がちらちらと自分ドーラを見てくる様子に、モーリッツ氏はなぜか満足げだ。以前からドーラの可愛さに自覚的というか、妙なこだわりを持っているんだよね、この人……。

 ちなみにフランツは若くして既婚者(先代マウルベーレ伯の娘と結婚している)、モーリッツ氏は言わずもがなオッサンだ。いいのか、それで。


「うまい」


 エマが肉料理に舌鼓を打つ。珍しく表情が生き生きとしているあたり、お世辞ではなさそう。

 大国の宮殿で雇われているだけあって、キーファー家の料理人は昔から腕利きだった。三周目の今に至るまで味に不満を覚えたことはほとんどない。

 前回ヴェストドルフ大臣から訊いた話によると、ヨハンが子供の頃に財務相にかけあってライム王国やクレロ半島から一流料理人を呼び寄せたそうだ。

 もっとも我が家のジョフロア料理長とは比べものにならないけどね。あの人は天才だから。


井納マリーは食べないの」

「もちろん食べる……いただくつもりよ」

「肉が余ったら、エマがもらってあげてもいい」

「余りません」

「ケチ」


 エマは不満そうに舌を出す。

 彼女の緋色のドレスには肉料理のソースがたくさん付いてしまっている。あとでおばさんに怒られるだろうな。

 エマとモーリッツ氏は弔問用の地味なドレスを破ってしまったので、余所行きの豪奢なものに着替えていた。

 公女はそのままなので落差がすごい。さっきエミリアに笑われてしまった。ちくしょう。


 不意にヨハンがテーブルを叩いた。


「おい。オレの前で目移りするな。女のくせにはしたない」

「それは……ヨハン様から目を離すなということですか」

「牛肉に集中しろと言っている!」


 ヨハンは二皿目の肉料理を荒々しく手づかみする。

 なるほど、そういうことね。

 次第にマリーの顔が赤くなってきた。我ながら恥ずかしい勘違いをしてしまった。またもやエマからメス堕ちを疑われかねない。


「エマ……してないからね」

「んふ?」

 

 多分に挽き肉を含んだ返答。

 我が家の魔法使いは公女おれの痴態より肉料理のおかわりに夢中だった。



     × × ×     



 一通りの料理をいただいて。

 本物の果物がデザートとして運ばれてきたところで、改めてヨハンから話しかけてくる。


「マリー。先ほど教会で話した件だが。たしかオレのマックスが欲しいとかほざいていたな」

「はい」

「お前の魔法使いと交換でもいいのか」


 彼の双眸がエマを捉えた。

 それはまずい。


「エマは手放せません。わたしの大切な友人ですもの」

「ふん。やはり女とは交渉が成り立たないな。対価だ。相応の対価を渡さなければ、ヒューゲル家にマックスをくれてやるわけにはいかん」

「お金ですか」

「金を含めて、オレが欲しいものだな」


 彼の言い分は正論だった。

 公女がおねだりしたら気前よくプレゼントしてくれないかな……なんて甘い考えは捨てたほうがよさそうだ。

 かといって、今の自分には魔法使い一人分の対価・国家予算級の金銭など用意できるはずがなく、別の方向から要求を続けていくことになる。


「マックスさんに任せたい役目があるのです。あの方にしかできないことです」

「我が海軍と砲兵隊も奴を求めてきている。貴重な新兵器を女の遊びに付き合わせたら兵営は不満を抱く」

「遊びではありません」

「では奴に何をさせたい。オレに説明してみせろ」


 ヨハンはオレンジの皮を剥き始める。

 エミリアはぶどうの甘味に幸せそうな笑みを浮かべている。

 フランツはじいっと公女おれの説明を待っているようだ。


 はたして、今の彼らに俺たちの計画を話してよいものだろうか。

 まだ時期が早すぎないか。


「……ドーラさん、お願いできますか」

それがしに任せてもらおう」


 モーリッツ氏がリンゴを片手に立ち上がる。

 彼は廊下に控えさせていた公女官房カンマーの若者を呼び寄せると、地図や図解・グラフといった、いわゆる『ポンチ絵』を両手に掲げさせた。

 あらかじめ説明用に準備していたらしい。すごいな。


 モーリッツ氏は公女が同じ人生を何度もやり直していることには触れず、万物の条理をねじ曲げる魔法使いが特定の大国に集積することで想定外の厄災が起きかねないと説いた。

 また魔法使いを多く持たない領邦が、大国や諸外国に虐げられる可能性も指摘した。

 大君同盟の加盟国・約三百家の領主たちが近隣諸国の傀儡となり、同盟自体が分割されかねないとも。


「そこで列強に対抗するために『そよ風のマックス』を我々の私掠船で使わせていただく。風神アネモイのごとき力は逆風を切り裂き、一方的な海上行動が可能となります。その戦術的優位をもって奴隷ギルドの商船から魔法使いと家族を強奪する」

「ほ、法的に許されることなのかい?」


 フランツが小声で指摘してきた。

 モーリッツ氏は悩むことなく即答する。


「ヒューゲルには海上航行に関わる法令・条約は存在しません。内陸国ですので」 

「金印法度や大君法典の条文には抵触すると思うよ……僕は詳しくないけど……」

「某からマウルベーレ伯フランツ閣下に申し上げるまでもありませんが、そのような文字の羅列が守られる時代は終わりを迎えます。強制力のない法令など小説と変わりません」

「はっ! 野蛮ね! あなた、すべからく粗野な発想だわ!」


 兄フランツに代わって妹エミリアが、赤茶毛の少女に噛みついた。


 やっぱりそういう反応になるよね。今の時期だと。

 これが不作(一六六六年)の後になると、同盟内の社会体制が崩れてきて、社会不安をもたらした『徳』のない支配者は打倒してもよいという風潮が流れてしまい、ついにはルドルフ大公の反抗につながるんだけど……今はまだ一六六四年だから。


 もちろんエミリアの内心には、おそらく自分より目立つ存在を排除したいという思惑もあるはずだ。


「しかも、さりげなくあたしたちの叔父・畏れ多くも大君陛下の権威をバカにしてくれたわね! 許せない、今すぐ出ていきなさいよ!」


 案の定、彼女は赤茶毛の少女に退室を迫ってきた。

 モーリッツ氏はわずかに頭を下げてから、流し目で公女おれに助け船を求めてくる。

 対応できないというより、あの手の高飛車女子が苦手みたいだ。実は俺も苦手だ。なんて言ってられないよね。


「エミリアちゃん。ごめんね。うちの家臣が失礼しちゃったわね。でも、そんなに怒らないで。あなたの可愛い顔が台無しよ」

「うっぜえ! クソ田舎の乳牛デブ女は黙ってなさいよ!」

「は?」


 反射的に目の前のリンゴを投げつけてやりそうになった。もう千賀滉大も顔負けのストレートをぶちかましてやりたかった。危ない危ない。

 落ちつくべきだ。公女は決して太っていない。同年代の子供たちと比べると日頃から節制しているほうだ。身体も動かすようにしているし。

 そもそもマリーをけなされて、まるで自分のことのように怒りを覚えるのは本来なら変な話じゃないか。何十年分の愛着はあるけどさ。


「二人ともやめろ。オレは女のケンカがキライだ。いずれ姉妹となるのだから、仲良くしてくれ」


 ヨハンが仲裁に入ってくれる。

 さしものエミリアも兄には逆らえず、右手に持っていたオレンジを机に戻してくれた。

 こちらもリンゴをバスケットに戻しておこう。


 ヨハンの目はモーリッツ氏に向けられている。


「ドーラ。お前の計画はたしかに古代の蛮族のようだ。だがオレは気に入った。低地の海乞食の真似をしようとは、あのオエステ相手に」

「お兄様、何を仰いますの!」

「エミリアは関わらなくていい。お前の嫁ぎ先のオーバーシーダー公を悩ませるのは可哀想だからな。オレとフランツはこいつらの計画に乗ってやる」

「えっ」


 ヨハンの発言に当のフランツはビックリしているけど、いわずもがな兄の方針に抗える人ではない。

 その点でエミリアにはまだ反論できるだけの胆力があった。


「いけませんわ。お兄様はヒューゲルの田舎娘のすこぶる下品な色香にたぶらかされています。もしお父様が生きてらっしゃったら、海賊の手伝いなんて許されるかしら。いいえ、許されるはずありませんわ!」

「どうやらエミリアの父上とオレの親父は別人らしいな」

「お兄様!」

「亡き先代は、必ずあの世でオレを認めてくれるだろう。それでこそヨハンだ、キーファーに栄光をもたらす名前だと。何度もそうなるように言い聞かされてきた」


 キーファー公爵家の家系図に『ヨハン』の名前は三回出てくる。

 初代ヨハンは一族の中興の祖とされている。

 兄系と弟系に分かれていた領地を武力統一して、選定侯の地位を取り戻し、時の大君より北方出兵を命じられた時にはローセ系の分領公国群クニャージから大君同盟を守り抜いたらしい。

 前回タオンさんから教えてもらった歴史の話では、初代ヨハンの成功は有能な家老が「ほぼ代行」しており、初代自身はあまり城から出てこなかったそうだけど。


「いずれ叔父上たいくんに仇なす奴らと戦わねばならん。そのためにオレは力が欲しい。ヨハンの名に相応しい力が」

「…………」

「エミリア。もう決めたことだ。不満そうにするな。女らしく笑っていろ」


 ヨハンは手を伸ばして、まだ十三歳の妹を撫でる。


 ──よし。決まった。

 キーファーとマウルベーレが『海賊船』に加わってくれた。

 もはや交渉は成功したといってもいい。

 あとは結婚の延期を取り付けるだけ。


かしこき方々のおぼしに敬意を示したいと存じ上げます」


 モーリッツ氏は深々と頭を下げると、部下に新たなポンチ絵を掲げさせた。

 今後の具体的な行動計画が示される。

 準備が良すぎる。


「つきましては海上における『風使い』の運用方針でございますが」

「待て。オレはマックスを手放すつもりはないぞ。あくまで海乞食に協力してやるだけだ」

「畏れながら『風使い』抜きでは計画を進められません。せめてお貸しくだされば」

「貸与か。では、マックスが死んだ時にはヒューゲル政府に弁済してもらうことになるな」

「そのような約束、某の権限では決められませぬ」

「マリー。お前ならどうする?」


 いきなり手番が回ってきた。

 ヨハンは笑っている。

 どうするも何も。


「わたしから対価を差し出せば、よろしいのですね」

「そのとおりだ。わかっているじゃないか」

「ヨハン様はわたしに何を求められますか」


 そう答えながら……自分の中では何となく想像がついていた。

 ヨハンが心の底から欲しがっているもの。

 公女おれはそれをよく知っている。


「お前も知ってのとおり、オレの父上が死んだためにキーファー家の嫡流は三兄妹おれたちだけになった。下手をすれば断絶しかねない。例えばみんなで危ない船に乗り込んだり、な」

「存じております」

「物分かりのいい女はキライじゃない。そうだな。何ならお前のほうからオレに申し出てくれ。お前の従者たちにも伝わるように」


 ヨハンは皮の剥かれたオレンジを口にする。


 つまり、あれか。この男は。

 あなたの子供を産ませてください、とマリーに言わせたいのか。


 おかしいな。前回までのヨハンはそんなまどろっこしい奴ではなかったのに。

 むしろ「オレの子供を産め!」と命令してくるほうがしっくりくる。どこかで変に歪んでしまったのかな。うーん。

 どちらにしろ、こちらの返答は変わらないけど。


「お断りします。公衆の面前で……はしたないですから」

「なら、オレの子供を産んでくれ。これでいいか?」

「お断りします!」


 俺は立ち上がり、ヨハンにリンゴを投げつける。

 今回はそんな流れにはしない。してたまるものか。

 どうしても浮かんでしまうあの子の顔を脳内から拭い去る。ごめんね。


 ……というか、そもそも今の公女はまだ十三だぞ。いくら何でも早すぎる。いっそロリコンと呼んでやろうか。ダメだ。ナボコフの小説『ロリータ』が発表されたのは近代になってから。まだ伝わらない。


 こちらのリンゴを片手で捕球したヨハンは、そのままかじりついた。


「ははは。ドーラとやら。今回の話はなかったことになるかもしれんな」


 くそう。イライラさせやがって。

 他に方法はないものか。ヨハンを納得させられるような対価を見つけないと。


 公女おれはエマの肌に触れる。

 何とかならない?


「……エマが対価になってあげようか」


 それは駄目だ。

 君が近くにいない状況はもう二度とごめんだ。耐えられない。嫌すぎる。

 他にはないかな。公社のタルトゥッフェル専売権を売るとか。そんなことしたらヒューゲルを強国に育てられなくなる。本末転倒だ。くそったれ。

 妙案を生み出せない自分が恨めしい。


 ヨハンもヨハンだ。

 一周目の時はあんなにもあっさり結婚の延期を許してくれたのに。

 あの時は──。


「……ヨハン様はいつか、キーファー公領はオレとお前のものになると仰っていましたわね」

「ん? そんな覚えはない気がするが、たしかにそのとおりだ。オレの父母もそういう約定で結ばれたからな」

「つまり、この国はわたしとあなたのものになるのですね」

「夫婦になるからにはそうなる」

「では、延期はやめて明日にも結婚を致しましょう」


 公女の提案にヨハンはわかりやすく喜色をあらわにする。

 彼にとっては待ち焦がれた言葉だったのかもしれない。なにせ初恋の相手から結婚を承諾されたのだから。


「ハハハ。ようやく子供じみたワガママを取り止めたな。けっこうなことだ。お前も大人に」

「そして……わたしの所有物にもなったマックスを公社に貸し出しますわ。これであなたの子供を産まなくても『海賊船』を出せますわね!」

「なっ、女が屁理屈を」

「男に二言はありませんね?」

「…………ふん」


 公女おれの問いにヨハンは黙り込む。

 沈黙は是とさせてもらう。あとで正式な契約書を書かせてやる。


 これでどうにか守るべきものは守り、手に入れるべきものは入手できた。かなりギリギリのラインまで追い詰められたけど。

 もしシャルロッテがいたら、ここでも前回くらいの条件で婚姻契約を結べたのかな。


 周りを見れば、モーリッツ氏はホッとした様子でドレスの胸元を押さえている。

 エミリアは気に入らないのか、床にツバを吐いていた。兄フランツにそれを咎められると逆ギレする始末。あまりに狂犬すぎる。


「ふふ。井納は井納だね」

「どういうこと?」

「別に」


 エマは少し笑っていた。



     × × ×     



 それから公的な婚姻契約が結ばれるまで約二ヶ月かかった。

 公女おれが振りかざした『お前のものはおれのもの』──さながらジャイアンのような理屈がまかり通ってしまうと、当然ながら両国の政治が混乱してしまうため、あくまでエマ以外の魔法使いだけが両者の共有財産とされた。

 なお、この理屈では公女の肉体および精神は公女の固有財産ということになり、ヨハン側に侵害された時は契約違反の制裁が待ち受けている。

 交渉代理人・モーリッツ氏の役人文学が大いに活用された形になる。

 後から気づいたヨハンはとても怒っていた。

 公女おれたちが一旦ヒューゲルに戻ることになった三月下旬まで根に持っていたほどだ。


「ドーラ。お前には一杯喰わされたな。おかげであいつが気を許すまで据え膳に手がつけられんぞ」

「それは御愁傷様でございます」

「お前のせいだからな。全くとても女とは思えん手腕だ」

「誉め言葉と受け取っておきましょう」

「失礼な発言だったか」


 ヨハンは馬車に乗り込もうとしていた赤茶毛の少女の手を取ると、きちんと跪いてキスをしてみせた。

 そして「らしくしやがれ」と捨て台詞を吐いて、公女の元に戻ってくる。


「マリー! 海賊の件はその女と……オレの家臣、フルスベルク中将に一任しておく」

「わかりました」

「船で盗んだ魔法使いは山分けだ。ごまかすなよ」

「当然ですわ」

「よし。次に会うのは結婚式の日だな。女が浮気しないようにしてやろう」


 ヨハンの狙いは読めていた。

 彼に抱き寄せられそうになる前に公女おれは身を屈め、相手の右手をかわしてから馬車に逃げ込む。

 さすがに追いかけてこない。哀れな奴め。


 馬車の中では、イングリッドおばさんが呆れたようにため息をついていた。

 その右隣では赤茶毛の少女が、自分の手の甲を見つめている。


「どうされました、ドーラさん」

「いや……お前の旦那は先々代のキーファー公に似ている。敵将だったが、自信にあふれた方だった。他者に見せつけるような行いばかりしていてな」

「手の甲のキスなんて、いずれ慣れますわよ」

「そうなりたくないものだ」


 モーリッツ氏はため息をつくと、目の前で眠そうにしているエマに問いかける。


「ある政治犯は妹の結婚式に出るために街道を走り出した。牢屋から出られたのはなぜだ?」

「囚人は馬鹿なの」

「そうだな。神話のエピメテウスのような愚図だ」


 ウミガメのスープを始めるつもりなら、自分も乗せてもらうとしよう。

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