第116話 帝都

 レンとの話を終えたユウヤがレティシア達のもとに戻り、レティシア達が作った夕食を食べて二つのテントに分かれて眠りについた。

 その後に二日かけて次の町に移動し、町についてすぐにユウヤは新しい尾行者の気配を感じてレティシア達に気づかれないように小さくため息をついた。


(まあ、一度撃退したから戦力が整うまでは襲ってないだろう)


 ユウヤは新たな尾行者に気づかないふりをしていつも通りに過ごし、必要なものを買い足して宿で一泊してすぐにまた町を出た。

 町を出て少ししてユウヤはルクスに問いかけた。


「それで、次の町までどれくらいかかるんだ?」

「そうだな。五日くらいかな」

「今度は少し遠いんだな」

「まあ、少しだがな」


 ルクスとの話を終えてユウヤがアヴローラに視線を向けると、アヴローラはユウヤに抱きかかえられながら光の球を作り出す魔道具で遊んでいた。

 楽しそうに遊んでいるアヴローラの姿を見て微笑んだ後、ルクスと雑談をしながら日が暮れ始めるまで歩き続けた。

 日が暮れ始めると、舗装された道から少し外れてテントを張りすぐに夕食を作りレティシア達がすぐに夕食の準備を始めた。

 レティシア達が夕食の準備をしている間、ユウヤはルクスに少し気になったことを問いかけた。


「そういえば、さっきの町は最初の町と比べてかなり発展してたが、次の町はさっきの町より発展してるのか?」

「ん?ああ、次の町は帝都だからかなり発展してるぞ。さっきの町が発展してたのも帝都から近いからだな」

「なるほどな」


 ユウヤが納得したような声を上げると、夕食の準備を終えたレティシア達が戻ってきて二人の話を聞いていたレイラがユウヤに話しかけた。


「帝都は本当にすごいわよ。身の回りの物は大半が魔道具で、帝都に住んでいる大人は全員高位魔法まで使えるらしいわ」

「全員が高位魔法を使えるとなると、帝都の魔導士は全員極大魔法を使えるんじゃ……」

「流石にそれはないんじゃ……」


 レイラの言葉にレティシアが何となく思ったことを呟きマユリがそれに苦笑しながら返すと、レイラが首を横に振って返した。


「魔導士だけじゃないわよ。帝都だと極大魔法を使えないと軍に入れないから、帝都にいる軍人は全員極大魔法が使えるわよ」

「……それは騎士もか?」

「当たり前だろ。極大魔法を使えないと他の都市に行かないと軍人にはなれないからな」

「……それは随分と厳しいな」


 ユウヤは問いに対するルクスの言葉に呆れて苦笑しながら返して考え始めた。


(アヴローラを狙ってるのが帝国の軍隊だとすると、帝都で軍に囲まれると少し面倒だな。けど、二年前に比べてレティシアとマユリもかなり強くなってるみたいだし大丈夫だろう)


「ユウヤ、たべないの?」

「ん、悪い。少し考え事をしてただけだ」


 ユウヤは不思議そうに見上げてながら問いかけてくるアヴローラの頭を撫でながら返し、フォークを持ちレティシア達が用意した夕食をアヴローラに食べさせ始めた。

 アヴローラが食べ終わった後に少し急ぎ目で夕食を食べ終え、いつものようにアヴローラを抱きかかえてルクスと一緒に使っているテントに入り、寝る用意を始めた。


「ユウヤ、少しいいか?」

「ん?……ああ、大丈夫だ」


 テントに入ってきたルクスの問いにユウヤは隣ですでに寝ているアヴローラを確認して返した。


「さっきの考え事、もしかしてアヴローラに関してのことか?」

「……まあな。もし、アヴローラが帝国軍に狙われてるなら帝都で軍隊に囲まれる可能性があるなと思ってな」

「確かに、その可能性はあるが、もしそうだとしたらアヴローラはどうして軍隊に狙われてるんだ?」


 ユウヤの言葉にルクスが問い返すと、ユウヤは真剣な顔でしばらく考えてから返した。


「アヴローラが何か問題を起こす可能性があるとか、そんな感じのことじゃないか?前に撃退した尾行者達の話だと殺す気はないようだしな」

「問題を起こすというよりは、何か重要な研究に関係してる可能性があるな」

「まあ、いくら考えてもわからないだろ」

「……そうだな」


 ルクスと少し話した後ユウヤはため息をついて返し、ルクスもユウヤと同じようにため息をついて返した。

 ユウヤはルクスに薄っすらと笑みを浮かべて続けた。


「それに、もし襲われても殺す気でかかれば問題なく突破できるだろう」

「……あの時は殺さないように手加減してたのにいいのか?」

「やらないとアヴローラを守れないならな」

「……まあ、俺はそうならないことを祈ってるよ」

「そうだな。俺も祈っておこう」


 話し終わった二人はすぐに眠り、次の日はいつも通りに起きて帝都を目指して歩き始めた。

 そしてルクスの言葉通りに五日後に帝都に着いた。


「昨日ぐらいから思ってたが、ここ本当に人が住んでる町なのか?」

「……ユウヤ、言いたいことは分かるけど、帝都で間違いないと思うわよ」

「確かに、これはかなり異常ね」


 ユウヤ、レティシア、マユリの三人は帝都を覆う今までの町とは桁違いに高い空気中の魔力濃度に呆れていると、レイラが小さくため息をついて返した。


「まあ、魔法の研究や日常生活で使う魔道具、それに魔道具の作成とかやってるからどうしても高くなるのよ」

「けど、前来た時よりさらに濃くなってるな」


 ユウヤ達は異常な空気中の魔力濃度に呆れながらも帝都の中に入っていった。

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