第115話 天の使い
ユウヤは尾行者達を簡単に逃げ出せないように縄で縛るようにルクスに頼み、少し離れたところでアヴローラを優しく撫でながらレティシア達に話しかけた。
「少しやり過ぎたが、巻き込まれなかったか?」
「大丈夫よ。巻き込まれはしなかったから」
「すごい衝撃だったけど、あれが本気?」
ユウヤの問いにレティシアが返したのを確認してマユリがユウヤに先ほどの戦闘を思い出しながら問い掛けると、ユウヤは首を横に振りながら返した。
「いや、一割も出してない。本気なんてそうそう出せないからな」
「あれで一割以下なんだ……」
「まあ、ユウヤの魔力量は二年前より遥かに多いから……」
ユウヤの言葉を聞いてマユリとレティシアは呆れて苦笑しながらため息をついた。
ユウヤの言葉にレティシア達が呆れていると、尾行者達を縛り終わったルクスと縛るのを手伝っていたレイラが戻って来た。
「待たせたな」
「いや、俺が頼んだことだから構わないさ」
「長話をしないで早く行きましょう。流石に襲撃されることは無いだろうけど、近くだと安心して寝れないからね」
「そうだな。急いで離れようぜ」
「分かった」
ルクスとユウヤが話し始めるとレイラが尾行者達を一瞥して先を急ぐように話すと、ユウヤとルクスはレイラに頷きながら返して移動を始めた。
ユウヤ達が日が暮れ始めるまで歩いた後、急いでテントを張り夕食の準備をしている途中でユウヤは何かに気づき立ち上がり近くにいたレティシアに声を掛けた。
「レティシア、少しの間アヴローラを頼めるか?」
「いいけど、どうかしたの?」
「ああ、少し周りの様子を見て来るだけだ」
「他にも尾行してる人がいるの?」
「いや、気配は感じないが、一応警戒しておくだけだ」
「……そう、分かったわ」
ユウヤの言葉にレティシアは少し違和感を感じたがあまり気にせずに了承し、ユウヤの隣に座って昼間に勝った魔道具で遊んでいたアヴローラに近づいて様子を見守った。
レティシアとアヴローラを一瞥したユウヤはテントを張った場所から離れ、ルクス達が気配を探れないほど離れた場所でユウヤは誰かに声を掛けた。
「ここまで来ればいいだろ、用があるなら隠れてないで出て来い」
「お待たせして申し訳ありません」
ユウヤが声を掛けると少し間を開けてどこからともなく一人の女性が現れた。
女性の服装はユウヤが羽織りにしている着物と似ているようで少しデザインが違う着物のような服を着ていて、薄い布で顔から首を隠しており手は手袋を着け長い袖に隠されて手袋もほとんど見えなくなっている。
ユウヤは肌が一切見えない服装の見るからに怪しい女性を警戒しながら問いかけた。
「お前、何者だ?」
「私は天の使いの一人、レンです」
「天の使い?」
「そんなに警戒なさらなくても大丈夫ですよ。私はユウヤ様への伝言を頼まれたのです」
レンと名乗った女性の言葉にユウヤは警戒をさらに強めて女性を睨みながら問いかけた。
「なぜ俺の名前を知っている?」
「残念ながらその問いに私は答えられません。私は伝言を頼まれただけですから」
「なんなんだ、その伝言って言うのは」
レンはユウヤに睨まれてもまるで気にせずに落ち着いた口調で返した。
レンの態度にユウヤは問い詰めても無駄だと思い話題を変えた。
「伝言は『仮面をつけた白髪の女性を殺して欲しい』です」
「なんで俺がそんなことを?」
「理由は二つあります。一つは近いうちにユウヤ様とその女性が出会うことになるからです。もう一つは、ユウヤ様以外に出来る人がいないからです」
ユウヤの問いに対してレンは丁寧に返し、ユウヤはレンの言葉を聞いて少し考えた後に問い返した。
「……俺が嫌だと言ったら?」
「それは私達も困りますが、一番困るのはユウヤ様ですよ」
「どういう意味だ?」
「ユウヤ様が殺さなければ、ユウヤ様の仲間が彼女に殺されることになりますよ」
「……なるほど、分かった。出来そうならやっておく」
「よろしくお願いします」
少し考えた後のユウヤの了承を確認してレンは現れた時と同じ様にすぐに姿を消した。
レンが消えたことを確認してユウヤは面倒事が増えたと思いため息をついてテントまで戻った。
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