第113話 魔道具
ユウヤとルクスが尾行していた者達について話し終えた後、少しの間雑談をして眠りについた。
寝ている間に襲われることはなく無事に朝を迎えたユウヤはいつも通りに起きようとして何かに服を引っ張られて起き上がれず、欠伸をしながらユウヤの服を掴んで未だに寝ているアヴローラを見て思い出したように呟いた。
「そういえば、アヴローラに服掴まれてたんだったな」
ユウヤは鍛練のために朝早くから起きることが習慣となっているため、まだ外は日が昇っておらず隣のベッドではルクスも寝ている。
そんな時間帯にアヴローラを起こすのは流石に可哀そうだなと思ったユウヤはベッドから起き上がることが出来ずに横になったままアヴローラの頭を優しく撫でた。
「……もう一度寝ようかな」
まともに動くことも寝る前の用にルクスと雑談することも出来ず、やることが無く暇なことに理解したユウヤはもう一度寝るために目を瞑る。
しばらくの間目を瞑っていたが寝付けなかったユウヤは寝ることを諦め、ルクスかアヴローラが起きるまで暇な時間で魔力を増やし制御する修行を始めた。
「珍しいな」
「ん?ああ、起きたのか」
修行をしているといつの間にかルクスが起きてユウヤのベッドの直ぐ傍に立っていた。
「ああ、今起きたところだ」
「そうか。それで何が珍しいんだ?」
「お前がこの時間にまだベッドで寝てることがだよ」
「仕方ないだろ」
「ああ、なるほどな」
ルクスの言葉にアヴローラを指さしながら返すと、ルクスは納得したような顔をした後、微笑みながら続けた。
「まあ、たまにはしっかりと休めってことだ」
「そうだな。しばらくは、魔力の修行に専念するよ」
「さっきまで魔力の修行をしてたのかよ……」
何でもないようなユウヤの言葉にルクスは呆れて苦笑しながら返し、宿を出る準備を始めた。
ルクスが準備を始めたのを見てユウヤもアヴローラの体を優しく揺すり声を掛けた。
「アヴローラ、そろそろ起きろ」
「ん、んー」
アヴローラはユウヤの声に目をこすりながら身体を起こしてユウヤに視線を向けた。
「おはよう」
「ん、おは、よう」
アヴローラは眠そうに目をこすりながらユウヤに挨拶を返し、隣に座っているユウヤに抱き着いた。
急にアヴローラに抱き着かれたユウヤは驚き目を見開いた後、困ったようにため息をついて頭を掻いてアヴローラに声を掛けた。
「アヴローラ、宿を出る準備しないとだから少し離れてくれるか?」
「……はい」
ユウヤに離れるように言われたアヴローラは少し寂しそう顔をしたが、言われた通りにユウヤから離れた。
「アヴローラはいい子だな」
「……うん」
ユウヤが寂しそうに俯くアヴローラの頭を優しく撫でると、アヴローラは嬉しそうな顔をして頷いた。
ユウヤはアヴローラの頭を撫で終わると、ルクスと一緒に急ぎ目で準備を終わらせ、ベッドに座ったままだったアヴローラの隣に座った。
「じゃあ、俺はレイラ達に準備が出来たか聞いて来るな」
「ああ、アヴローラと待ってるよ」
「待ってる」
ユウヤとアヴローラが二人でベッドに座ってルクスを待っていると、すぐにルクスが戻って来た。
「レイラ達準備出来てるってよ」
「分かった。アヴローラ、行くぞ」
「はーい」
ユウヤが立ち上がるとアヴローラは両手を広げながらユウヤの言葉に返した。
アヴローラの行動にユウヤは苦笑して抱きかかえ、ルクスの後に部屋を出た。
部屋の外で待っていたレティシア達と合流して宿の食堂で朝食を食べて宿を出た。
「それで、これからどうする?」
「午前中は大通りで必要な物を買って、午後からは次の町へ移動しましょ」
「次の町まで一日で着くのか?」
「歩きだと三日くらいかな」
「意外と近いんだな」
「まあ、帝国内だしな」
「じゃあ、レティシアの提案通りで良いか?」
ユウヤの確認にアヴローラ以外の全員が頷いて返した。
予定が決まりユウヤ達が大通りに来るとアヴローラは露店を興味深そうに見回し始めた。
「アヴローラは何か見たいものはあるか?」
「えっと、あそこ」
「ん?魔道具の露店か?」
ユウヤの問いにアヴローラが指さした露店には様々な色の水晶や何に使うのかよく分からない物が並べられていた。
魔道具に関してはユウヤは冷蔵庫などのような生活に必要な物以外はほとんど知らず、露店に並べられている商品が魔石を使った道具ということくらいしか分からなかった。
「ええ、魔道具と魔石のお店よ」
「魔石も売ってるのか?」
「魔導士によっては魔石を媒介にして魔法の威力を上げたりもするのよ」
「へー」
ユウヤの疑問に対してレイラが簡単に説明し、ユウヤはレイラの説明を聞きながら露店へ近づいた。
露店に近づくとアヴローラは露店の商品を興味深そうに見始め、ユウヤも何に使うものなのかと興味深そうに見始めた。
「もしかして帝国の魔道具を見るのは初めてか?」
「ん?ああ、よく分かったな」
「なに、帝国の魔道具を初めて見る奴は皆不思議そうな顔で使い方考えてるからすぐに分かるんだよ」
「なるほど」
露店の店主の言葉に納得したような顔をしたユウヤを見て店主は話を続けた。
「気になるものがあるなら、使い方説明するぜ」
「そうだな。じゃあ、この木の筒はなんだ?」
店主の言葉を聞いてユウヤはちょうど目に入った手に乗る程度の赤い魔石がついた木の筒を指さして問いかけた。
店主はユウヤが指さした木の筒を取ると、説明を始めた。
「これは調理とか火おこしに使う魔道具だ」
「へえ、どうやって使うんだ?」
「例えば、この筒に木の棒の入れて起動すると、こんな風に筒の中を炎が満たして木の棒を燃やしてくれる」
店主が適当な木の棒を筒に通して魔道具を起動させると、筒の内側から炎が出て木の棒を燃やし始めた。
ユウヤとアヴローラが魔道具を興味深そうに凝視していると、店主が筒から木の棒を抜いて火がついた棒を見せて説明を続けた。
「こんな感じで焚火の火おこしが楽になるわけだ。さらに、木に魚や肉を刺しておくと、焚火で焼くのと違って満遍なく火を通して調理できるぜ」
「なるほど、そんな使い方をする魔道具があるのか」
「帝国は人工で魔石を作れるんだ。だから、あっても無くてもいいような魔道具も作れるんだよ」
「はあ、それはすごいな」
店主の言葉にユウヤが感心していると、アヴローラはまた違う魔道具を見始めた。
ユウヤはアヴローラを見て少し考えた後、店主に問いかけた。
「子供が遊ぶ玩具みたいな魔道具あるか?」
「玩具か、流石に玩具はないが、遊び道具にするならこれが良いかな」
店主は少し考えた後、小さい水晶玉が先端に着いた木の棒を取ってまた説明を始めた。
「これは本来は夜とか洞窟での灯りのために使う魔道具なんだが、こんな風に光の球を作って杖に合わせて動かせるんだ。遠くに投げ飛ばすことも出来るから遊び道具として使えないこともない」
店主は説明しながら作った光の球を空高くに飛ばして見せた。
アヴローラは店主の言葉を理解しているのか分からないが、光の球を作って操ったのが店主が持っている魔道具ということは理解しているようで、興味深そうに手を伸ばしている。
店主は微笑みながらアヴローラに魔道具を手渡し、アヴローラは見様見真似で魔道具を使って光の球を作って遊び始めた。
「どうやら気に入ったようだな。これ、買わせてもらうよ」
「気に入ってくれたようで良かったよ」
「アヴローラ、町の中では遊ぶなよ」
「はーい」
ユウヤは店主にお金を払いアブローラに魔道具を持たせたまま少し離れた場所に居たレティシア達と合流した。
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