第112話 尾行
夕食を食べ終わったユウヤ達は特に他の予定もないため宿に向かって通りを歩いていた。
「そういえば、アヴローラはどこで寝かせる気なの?」
ユウヤが抱えるアヴローラを見ながらレティシアが気になったことを問いかけた。
「ん?ああ、俺と同じベッドで寝かせる予定だ」
「ユウヤと?寝る時は私達が見てもいいけど?」
「別に気にしなくていいさ。俺が連れて来たんだから、俺に出来ることくらいは自分でするさ」
「そう」
ユウヤは抱きかかえているアヴローラの頭を優しく撫でながらレティシアの問いに返した。
レティシアもユウヤがそれでいいならと短く返してユウヤから視線を外した。
「それに、一緒に居た方が都合がいいしな」
「え?」
レティシアがユウヤから視線を外した後、ユウヤは誰に言うでもなく小さな声で呟いたのを聞いてレティシアは意味が分からず何も言わずにただユウヤを見つめた。
レティシアに見られていることに気づいたユウヤはレティシアの方を向いた。
「なんでもない、気にするな」
「?……そう?」
レティシアはユウヤの言葉がよく分からなかったが、気にするなと言われたため首を傾げながら気にしないようにしてまたユウヤから視線を外した。
ユウヤもレティシアが視線を外したのを確認して抱きかかえているアヴローラに視線を戻した。
アヴローラはユウヤに抱きかかえられたままユウヤとレティシアの話など聞いていなかったように通りの端の出店などを興味深そうに見回している。
「気になるのか、アヴローラ」
「ん?うん」
ユウヤが声を掛けるとアヴローラは少し不思議そうな顔をしたがすぐに頷いてユウヤに話し始めた。
「初めて見るものがいっぱい!」
「そうか。今日は遅いから明日以降ゆっくり見て回ろうな」
「はーい」
楽しそうな顔で話すアヴローラにユウヤは微笑みながらアヴローラの頭を撫でて返すと、アヴローラは嬉しそうに返事をしてまた周りを見回し始めた。
それから少しして宿に着くとすぐにレティシア達女性組と別れユウヤとルクスが部屋に入った。
装備等を外して寝る用意を整えたルクスは二つあるベッドの一つに横になり、もう一つのベッドでユウヤの服を掴んですでに寝ているアヴローラを見つめているユウヤに視線を向けた。
「子供の面倒を見るのは苦手なんじゃなかったのか?」
「ん?ああ、面倒を見るのはこれが初めてだからな」
ルクスがユウヤに話しかけるとユウヤは少し不思議そうな顔をしたが、小さくため息をつきながら返した。
「その割には随分と手慣れてるよな」
「そうか?」
「ああ、それにすこし過保護だな」
「こんなもんだと思うがな」
ユウヤはルクスの言葉に不思議そうに首を傾げながら返すが、ルクスはそんなユウヤの態度に微笑みながら続けた。
「まあ、その辺はお前の好きにすればいいさ。ただ、一つだけ聞きたいことがある」
「なんだ?」
「アヴローラについて何か隠してることあるんじゃないか?」
先ほどまでの微笑みと違い真剣な顔をしたルクスの問いにユウヤは少し驚いて目を見開いたが、すぐにいつもの表情に戻り小さくため息をついた。
「やっぱり、ルクスは聞いて来るよな」
「当然だろ。どうしても話せない内容ならこれ以上は聞かないが、どうなんだ?」
「別にそこまで重大な事じゃないさ」
「なら、教えてくれ」
ルクスの言葉にユウヤはもう一度ため息をついて少しの間をあけて話し始めた。
「夕飯の店を探してる辺りから尾行されてる。人数は四人だ」
「!?なんで今まで黙ってたんだ?」
「アヴローラの前でそんな話出来ないしな。それに敵意や気配を上手く隠せないような雑魚何人いても問題ないから放置してたんだよ」
「はあ、お前の基準で考えたらそうなんだろうな……」
ルクスはユウヤの言葉に呆れてため息をついて返した。
ユウヤはルクスが何を言っているのかよく分からずに首を傾げた。
「だったら、余計にレティシア達にアヴローラ預けておいた方が良かったんじゃないか?そんな状態だとまともに戦えないだろ」
「寝ている時は近くにいてくれないと気づけないからな。それに街中で魔法を撃つわけにはいかないだろ」
「確かにな」
ルクスの問いに対するユウヤの言葉にルクスは苦笑して返した。
「まあ、そもそもアヴローラを抱えたままだと刀もまともに抜けないんだがな」
「全然だめじゃないか」
「ルクスもいるんだ何とかなるだろ」
ユウヤの言葉にルクスが呆れていると、ユウヤが頼りにしてるぞとルクスを見て笑うとルクスは深いため息をついた。
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