第109話 謎の少女
ユウヤがボロボロの少女を連れてマユリと一緒に宿に戻り、ユウヤは少女をベッドに寝かせた。
「マユリ、この子の傷治せるか?」
「このくらいの傷なら治せる」
「じゃあ、任せる」
「うん」
マユリはベッドに寝かされた少女に近づいて少女に両手をかざした。
マユリの手から出た光が少女を包み、少女の傷は綺麗に塞がった。
少女の傷が塞がったのを確認してマユリはユウヤの方を向いた。
「もう大丈夫だよ」
「ああ、助かった」
ユウヤはマユリに御礼を言って少女に近づいて寝ている少女の頭を軽く撫でだ。
「この子どうするの?」
「取り合えず、事情を聴いてからだな」
「連れて行くの?」
「場合によるな。まあ、この子が一緒に来たいなら連れて行くさ」
「そう」
ユウヤは歳の離れた妹を見るような優しい目で少女を見ながら少女の寝ているベッドに腰を掛けた。
マユリはユウヤと少女を見ながら近くにあった椅子に座り、集合時間までの間ユウヤと雑談をしながら時間を潰した。
集合時間の少し前に少女は目を覚ました。
「ここ、どこ?」
少女は目を覚ますと部屋を軽く見渡してベッドに座っていたユウヤを見て驚いて一瞬警戒したが、すぐに警戒を解いてユウヤに近づきユウヤに縋り離れないように服を握りユウヤに問いかけた。
ユウヤは少女の行動に少し驚いたが、すぐに微笑み少女の頭を撫でながら返した。
「ここは俺達が泊ってる宿だ」
「やど?」
「お金を払えば部屋を借りられるお店だよ」
「?」
少女にユウヤは分かりやすく説明するが、少女はよく分からないようで首を傾げている。
ユウヤはこれ以上説明しても意味がないと思い話題を変えた。
「君、名前は?」
「あ、アヴローラ」
「アヴローラか、いい名前だな」
ユウヤの言葉に褒められていると分かったのか、少し嬉しそうな顔をしたアヴローラはユウヤに問いかけた。
「な、なまえは?」
「俺か、俺はユウヤだ」
「ユウヤ、ユウヤ!」
ユウヤが名前を言うと、アヴローラは嬉しそうな顔で名前を繰り返した。
二人の様子を椅子に座って微笑ましそうに見ていたマユリも会話に入るために声をかけた。
「大分懐かれてるわね」
「ああ、どうしてだろうな」
「……だれ?」
マユリが話しかけたことでマユリの存在に気づいたアヴローラは、ユウヤの服を強く握り警戒しながらユウヤに問いかけた。
「彼女はマユリ、俺の仲間だ。そんなに警戒しなくても大丈夫だぞ」
「マユリ……」
「よろしくね、アヴローラちゃん」
マユリがアヴローラに近づいて微笑むと、アヴローラはマユリの少し隣を見て問いかけた。
「そっちは?」
『!?』
ユウヤ達はアヴローラにルイスが見えていることに驚いていると、アヴローラは不思議そうに首を傾げた。
「アヴローラちゃん、ルイスが見えるの?」
「ルイス?」
『私のことだよ』
「ルイス、マユリ」
アヴローラはルイスとマユリの名前を呼びながら視線を移して確認するようにユウヤを見た。
「ああ、あってるよ」
ユウヤは驚いて少し遅れて返すと、アヴローラは褒めてくれと言うようにユウヤに頭を近づけた。
ユウヤはアヴローラの頭を撫でながらマユリ達に視線を向けて問いかけた。
「精霊の眼を生まれつき持ってることはあるのか?」
「あるの?」
『あり得ないことではないけど、持って生まれるものではないはずだよ』
「つまり、魔法の才能があるってことなのか?」
『魔力もかなり多いみたいだから、才能はあると思うよ』
「そうか」
ユウヤはルイスの言葉を聞いて窓の外を見ると、暗くなり始めていた。
「アヴローラ、これから夕飯を食べに行くよ」
「ん?わかった」
ユウヤが立ち上がると、アヴローラもベッドから降りるが靴などなく服もユウヤの着物で隠れてはいるが服もボロボロでところどころに穴が開いている。
夕飯を食べに行くにもこんな服装で外を出歩かせるわけにもいかないと思ったユウヤはアヴローラ連れて来た時と同じ様に着物でしっかりと着させてボロボロの服が見えないようにして抱きかかえた。
「まずは服装をどうにかしないとな」
「そうね」
二人は宿の部屋から出てルクス達が待っている宿の前に向かった。
宿の前ではすでに全員が揃っていて、ユウヤとマユリが来るのを待っていた。
「待たせたな」
「戻って……たの?」
ユウヤがレティシア達に声をかけると、レティシアは振り返りユウヤが抱きかかえているアヴローラに首を傾げながらも続けた。
レイラはユウヤに冷たい視線を向けて問いかけた。
「欲しいものってその子のこと?」
「違うよ。欲しいものを探してる途中で、この子が路地裏で倒れて助けを求めてたから保護したんだよ」
「ユウヤ、この人たちは?」
「マユリと同じで俺の仲間だよ。ほら、自己紹介」
ユウヤはアヴローラの問いに答えてレティシア達に視線を向けて自己紹介するように促した。
ユウヤに言われて驚いていたレティシアから自己紹介を始めた。
「私はレティシア。よろしくね」
「私はレイラよ」
「俺はルクスだ」
「レティシア、レイラ、ルクス」
アヴローラはレティシア達の顔を見て確認しながら名前を順番に呼んだ。
「ほら、アヴローラも」
「アヴローラ、よろしく」
ユウヤに言われてアヴローラも自己紹介をしてユウヤは三人に視線を向けて先ほどマユリに言ったことと同じことを話した。
「夕食の前にアヴローラの服と靴を買いに行きたいんだが、大丈夫か?」
「ええ、私は大丈夫よ」
「俺達も問題ない」
「じゃあ、行くか」
ユウヤはアヴローラを抱きかかえたまま、子供用の服や靴を売っている店を探しに向かった。
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