第51話 反撃開始
ユウヤの挑発に邪霊は少しイラっとした顔をして氷の槍、炎の球、土の塊をユウヤに撃ち込んできた。
(さて、始めるか)
ユウヤは動かず、息を吐き呼吸を整えて集中を高めた。
ユウヤは背後から来る触手の鞭を斬り落とし、氷の槍と炎の球をある程度斬り、残りを刀で飛んで行く方向を少しずらして受け流し、土の塊は空いている右手で氷の槍や炎の球と同じように方向を変えた。
「?」
ユウヤの行動に邪霊が首を傾げた次の瞬間、行動の理由を理解して驚いた。
方向を変えられた氷の槍、炎の球、土の塊はすべてユウヤの周りを囲んでいた分身体に飛んで行き数体の核を破壊した。
「まさか、私の攻撃を利用して核を破壊するとは」
「数体破壊し損ねたか……」
「あまり分身体は意味がなさそうだな」
そう言うと邪霊は黒い液体に戻すと、黒い液体は邪霊に近づいて靴から邪霊に戻っていった。
「なんだ?分身体は使わないのか?」
「貴様相手には意味がなさそうなのでな。分身体に割いていた魔力を魔法に使うことにしたのだ」
邪霊は言い終わると同時に両手を合わせた。
邪霊が両手を合わせた瞬間、ユウヤの足元に赤く光る魔法陣が浮かび上がり炎が発生し始めた。
ユウヤは炎が出始めたのを見て体を捻って全力で刀を振り抜いた。
刀を振られた勢いで発生した暴風で魔法陣ごと炎をすべて吹き飛ばした。
「な!?」
邪霊は吹き飛ばされた魔法を見て一瞬だけ驚き、すぐに別の魔法を用意しユウヤに放った。
ユウヤに向かって直径一メートル以上ある氷の柱が三本が襲い掛かったが、氷の柱をユウヤは回避した。
ユウヤが氷の柱を回避した直後、ユウヤが回避した場所の地面が盛り上がり、ユウヤを氷の柱に叩きつけるように伸び始めた。
「死ね」
邪霊は勝ち誇ったように笑い、ユウヤと氷の柱が当たるのと同時に当たるように三か所の地面を盛り上がりユウヤに襲い掛かった。
「嫌だね」
直径一メートルある氷の柱を一太刀で斬り真っ二つにすると、その間を通って盛り上がった地面の攻撃を回避した。
盛り上がった地面の攻撃を回避して跳んだユウヤを見て邪霊は笑った。
「空中では回避は出来んだろう」
空中で身動きが上手く取れないユウヤに下から先ほどと同じように盛り上がった四つの地面の柱と上から氷の柱が三つ襲い掛かった。
ユウヤは刀を鞘にしまうと、拳を握り襲い掛かって来る地面の柱に全力で振り下ろして砕いた。
「化け物め!」
拳で地面の柱の一つを砕いたユウヤを見て邪霊は顔を少し歪めて呟いた。
ユウヤは地面の柱を砕いた反動を利用して体を捻り、他の地面の柱と氷の柱を拳と蹴りですべて砕いた。
「褒めてやる。まさか、ここまで出来るとはな」
「どうも」
「だが、これで終わりだ」
「!?」
空中にいるユウヤの真下の地面と真上に赤い魔法陣が浮かび上がり炎が発生し始めた。
空中にいるユウヤに避けることは出来ず、先ほどと同じように吹き飛ばすことも出来ない。
ユウヤは避けることを諦めて下と上から迫って来る炎の柱を受けるため防御態勢に入った。
「鉄も溶かす炎を受け切れるわけないだろう」
ユウヤは迫って来る炎の柱の熱に顔を少し歪め目を瞑った。
しかし、すぐそこまで迫っていた炎はいつまでたっても襲ってこなかった。
ユウヤが目を開けると、ユウヤの体を包むように魔力障壁が張られていた。
「これは?」
「遅くなった。怪我はない?」
ユウヤが周りを見ると、広場を覆っていた魔力障壁の一部が開きレティシアが広場に戻って来た。
ユウヤは魔力障壁に守られながら無事に地面に降りると、邪霊を警戒しながらレティシアに話しかけた。
レティシアも邪霊を警戒しながらユウヤに応え始めた。
「大丈夫だ。魔法を殴って壊したから手が少し痛む程度だ」
「そう」
「避難誘導は終わったのか?」
「ええ、冒険者ギルドに頼んで来てた。今はランクの低い冒険者が町の避難誘導をしているわ」
「分かった」
「それであれは?」
「邪霊だそうだ」
「邪霊?」
「元精霊らしい。今はマユリの体を乗っ取ている。本体はあのドレスの方でマユリの体を傷つけても意味がない」
「分かったわ」
レティシアもユウヤと同じように刀を抜き、レティシアは身体強化魔法を発動し体中に青い血管のような模様が広がった。
「核の位置は分かる?」
「いや、マユリの魔力が邪魔して分からない」
「なら、私が時間を稼ぐから核を探して」
「分かった」
ユウヤは刀を構えたまま目を瞑って魔力探知に集中し始めた。
その姿を見てレティシアは目の前のマユリの姿をした邪霊を見ながら呟いた。
「反撃開始ね」
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