第50話 絶望的な戦い
ユウヤは目の前のマユリの体を乗っ取った邪霊と背後にいる邪霊の分身体二体に挟まれ、警戒しながら刀を構え相手の隙を伺っていた。
「どこまで耐えられるか見せてもらおう」
邪霊は両手の手袋から黒い鞭を伸ばしてユウヤに攻撃を仕掛けてきた。
邪霊の攻撃に合わせて背後にいた分身体もユウヤに体中から触手のようなものを複数出して触手を鞭のように使って攻撃してきた。
邪霊本体の攻撃に比べて分身体の攻撃は遅く威力も弱いことを見て理解したユウヤは邪霊の二本の鞭を的確に斬り落として分身体の攻撃は躱せるものは躱して、躱せないものは斬り落とすか防御して防いだ。
「いいのか?私の体を斬ると分身体が増えるぞ」
「増えたなら減らせばいい」
ユウヤは斬り落とされた邪霊の鞭が動き始める前に背後で攻撃をしていた分身体に接近すると、核の気配がする場所を斬りった。
「!?」
しかし、核の気配を斬ったはずの分身体は崩れることなくユウヤに攻撃を仕掛けてきた。
ユウヤは分身体の攻撃を何とか捌き分身体から距離を取って攻撃を回避しながら倒せなかった理由を考え始めた。
「核を斬ったのに倒せないのが不思議か?」
「ああ、確かに核は斬ったはずだ」
「簡単なことだ。貴様の攻撃は核を斬れていないんだよ」
「どういうことだ?」
「先日までは核を一つの魔力球にしていたから斬られた核は壊されてしまった。しかし、今回はそんなことが無いように小さい魔力球を複数ある程度の距離で配置して一つの核にしてある」
「つまり、核自体が小さい核の集まりってことか?」
「そうだ。貴様は核の大体の位置しか分からないのだろう、細かい核の位置をすべて把握することは出来まい」
ユウヤは少し冷や汗を流して四体に増えた分身体に苦い顔をした。
(集中すれば細かい核の位置は分かるだろうが、この攻撃の中そんな余裕はないか)
ユウヤは今度は邪霊の攻撃を斬り落とさずに鞭を受け流し、躱しで分身体を増やさないように立ち回り、分身体の攻撃はさばけないものは最小限だけ受けて邪霊に接近すると、頭に乗っているティアラの宝石を突きの攻撃で破壊した。
「女の子の頭を狙うなんて、最低ね」
「やっぱりだめか」
「私の核の位置はこの娘の魔力で分かりにくいだろう」
「ああ、最悪だ」
ユウヤは邪霊から距離を取ると、分身体の攻撃を避けながら邪霊へ攻撃を仕掛け始めた。
しかし、邪霊を刀で斬りつければマユリを傷つけることになるため、核がありそうで服が厚くマユリを傷つけない場所だけに攻撃を集中していた。
それでも邪霊の核は壊すことが出来ず、分身体の攻撃を受けて少しずつダメージも溜まり、体力も少しずつ削れて来ている。
「時間を稼ぐのも大変だな……」
「そろそろ、私も真面目に戦うか」
「なに?」
「遊びをやめると言ったのだ」
「遊びとは言ってくれるな」
「これ以上時間をかけると、人が集まってきそうだからな」
そういうと邪霊は黒い鞭を引っ込めて手袋から黒い液体を大量に出し始めた。
黒い液体は邪霊から離れると、次々と分身体になっていき数は十五体に増えた。
「自分の意思でも分身体は作れるのは当然か」
「それだけではないぞ」
邪霊が手を振ると邪霊の周りに氷の槍が数本出現した。
それを見てユウヤは苦い顔をした。
「魔法……か」
「さて、あとどれだけ耐えられるかな」
「最悪だ」
邪霊が本気で戦いだしたことでユウヤは攻撃することをやめた。
ユウヤに襲い掛かった氷の槍をユウヤは刀で斬り落とし、分身体の触手のような攻撃を躱し、受け流し、斬り落としてすべて防いだ。
ユウヤは意味をなさない攻撃をやめ、すべての攻撃を防ぐことに集中し始めた。
「どれだけ耐えれるかな、だと」
「?」
「お前がいつ諦めるかの間違いだろ」
ユウヤは自分以外に意識が向かないように、少しでも長く時間を稼ぐために、見下すように邪霊を見て笑い挑発した。
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