第36話 マユリの襲来

 ユウヤに抱き着いているマユリとユウヤの隣に立っているレティシアはお互いを見て不機嫌そうに睨み合いながらユウヤに声をかけた。


「ユウヤ、この子誰?」

「ユウヤ、この女誰?」

「なんで、お前らそんなに好戦的なんだよ。それより、いい加減に離れろ、マユリ」

「別にいいじゃない」


 ユウヤはマユリを引き剥がそうとするが、マユリはさらに力を入れて抱き着いて来た。

 その様子を見てレティシアはさらに不機嫌になり、冷たい目でマユリを無言のまま睨みつけた。


「紹介するんだから離れろ」

「はいはい、分かりました」


 マユリはユウヤの言葉を聞いて名残惜しそうに離れた。

 ユウヤはマユリが離れると、二人の紹介を始めた。


「まずは、この子はマユリ。今朝少し聞きたいことがあって話しかけて知り合ったんだ」

「本当に今朝知り合ったの?」

「ああ、そうだけど」

「ふーん」


 レティシアの疑うような視線を無視して、ユウヤは紹介を続けた。


「で、こっちがレティシア。俺の幼馴染で冒険者の仲間だ」

「幼馴染ってことは子供のころから一緒だったの?」

「ああ、そうだけど」

「ふーん」


 マユリはユウヤの説明を聞いて少し羨ましそうにレティシアを見た。

 二人は少しの間黙ったまま見つめあった状態で動かなくなった。


「お前ら何睨み合ってるんだ?」

「ユウヤ、マユリとはどういう関係なの?」

「いや、今話しただろ、朝少し話した程度の知り合いだ」

「朝話した程度の知り合いが、こんな大通りで抱き着いて来るの?」

「それは俺も知らん」


 レティシアの疑ったような視線を浴びながらユウヤは素直に質問に答えた。


「ユウヤ、レティシアはユウヤの恋人なの?」

「いや、一緒に冒険してる仲間でただの幼馴染だ」


 マユリの質問に対するユウヤの答えを聞いて、レティシアはショックを受けて少し俯き落ち込んだ。


「ユウヤ、意外と酷いのね……」

「ん?何がだ?」

「いや、何でもないわ」


 マユリははっきりと言いきり、レティシアの好意に気づいてないユウヤに呆れた視線を向けた後、落ち込んでいるレティシアに少し同情して視線を向けた。


「よくわからないが、マユリは何しに来たんだ?」

「ユウヤを連れて町を回ろうかなって思って誘いに来たの」

「ああ、分かった。レティシアも一緒で良いか?」


 ユウヤはマユリが自分を認識できる相手と町を回りたいのだと察して、マユリにレティシアも一緒でいいか問いかけた。


「ええ、構わないわよ」

「じゃあ、少し待っていてくれ。依頼達成の報告をしてこないといけないんだ」

「私もついて行くわ」

「分かった。レティシア報告に行くぞ」

「分かった」


 レティシアはまだ落ち込んでいるが、町を回るのに誘われて少し機嫌を直してユウヤについて冒険者ギルドの中に入っていった。

 マユリはそんな二人を見ながら、呆れながら呟いた。


「私のことは簡単に察するのに、なんで色恋沙汰になるとあんなに鈍感なのかしら?」


 ユウヤの鈍感さに呆れてため息をついた後、マユリは冒険者ギルドに入っていった二人の後を追って冒険者ギルドに入っていった。 

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