第35話 レティシアの魔法
ユウヤ達が山の中をしばらく歩いていると、ユウヤがオーガの群れの気配を察知し、レティシアと一緒に近くまで移動して岩陰に隠れた。
「依頼書通りオーガが五十体程度いるな。二人で斬り込むでいいのか?」
「ええ、問題ないわ」
「それじゃあ、行くか」
刀の柄に手を当ててオーガの群れに突撃しようとしたユウヤの着物の袖を掴んでレティシアが止めた。
「どうした?」
「ちょっと待って、少し準備する」
「準備ってなんの?」
「試してみたい新しい魔法、実戦で試したことが無いから試してみたかったの」
「分かった、準備が出来たら行ってくれ。その間見張っているから」
「お願い」
レティシアはそれだけ言うと、目を瞑って集中しだした。
レティシアが目を瞑って少しすると、空気中の魔力がレティシアの体に集まり始めた。
「周りの魔力が集まってきてる。これがレティシアの魔法か」
ユウヤはオーガの様子を見ながらレティシアに少し目を向けると、レティシアの肌に青白い血管のような模様が体中に張り巡らされていた。
青白い模様は時間が経つにつれ濃くなり量が増えていった。
そしてレティシアが目を開くと目に瞳より少し大きい魔法陣が瞳に重なるように出来ていた。
「それが新しい魔法か?かなりの魔力を空気中から集めていたようだが、制御は出来ているのか?」
「大丈夫よ。体の中に入っているわけではないから」
「大丈夫ならいいが、後で説明してくれよ」
「分かったわ」
ユウヤが言い終わると、二人は刀を抜いて構えた。
「それじゃあ、行くか」
「ん」
ユウヤの言葉にレティシアが頷くと、ユウヤは最高速度でオーガの群れに突撃し、オーガ達に気づかれる前に見張りをしていたオーガ五体の首を切り落とした。
ユウヤとレティシアが攻めて来たことに気づいたオーガ達は立ち上がり、武器を持って攻撃しようとしたが、オーガが武器を持つ間にユウヤはさらに七体のオーガの首を切り落とした。
レティシアもオーガが戦闘態勢を整える前にオーガの首を切り落とした。
オーガ達はユウヤよりレティシアが弱いと判断して、レティシアに襲い掛かるがレティシアはオーガの振り下ろした斧を素手で受け止めた。
『!?』
「防御力は問題ないわね。腕力もオーガ以上」
斧を受け止められて驚いているオーガを相手にレティシアは魔法の性能について呟きながらオーガの首を切り落とした。
レティシアが魔法の性能を確かめながら戦っている間、ユウヤは凄まじい速さで一切の無駄なくオーガの首を切り落としていった。
そんな二人を相手にしてオーガの群れはあっという間に殲滅された。
「ふー、終わったみたいね」
「ああ」
レティシアはすべてのオーガが倒されたことを確認すると、軽く息を吐いた。
レティシアが息を吐いた後、体中に広がっていた模様は少しずつ薄れていき消えてなくなった。
「それじゃあ、帰るか」
「ええ」
二人は冒険者ギルドへ移動を始めた。
「それで、さっきの魔法はなんだ?」
「あれは、身体強化魔法よ」
ユウヤは冒険者ギルドに向かって歩いている間に魔法についてレティシアに問いかけた。
「身体強化魔法?身体強化とは違うのか?」
「効果は同じだけど、少し違うわ」
「へー」
ユウヤはレティシアの言葉に興味深そうに返事をして、説明の続きを待った。
レティシアはユウヤが説明を待っていることを察して説明を始めた。
「あの魔法は空気中の魔力を集めて体の表面を覆って身体強化を施すの」
「身体強化って体内に魔力を巡らせなくても出来るのか?」
「ええ、あくまで魔力が筋肉の働きを強化しているだけだから、体外から魔力を使って筋肉の働きを助けるようにすれば問題なく機能するわ」
「なるほどな、続けてくれ」
ユウヤはレティシアの説明に納得したように呟いて、続きを説明するように伝えた。
「後は身体能力に合わせて神経伝達を速くする必要があったんだけど、自分の魔力を使ったら意味が外部の魔力を使った意味がないから、体の表面に神経伝達をする回路を作って体内の神経伝達をそっちに流れる魔法を常時発動させることで神経伝達速度も上げることが出来たは」
「かなりすごいことやってるな。そんな魔法があったとは」
「いや、私が作った魔法よ」
「は?」
レティシアの魔法に感心していたユウヤはレティシアの言葉を聞いて、間の抜けた声を上げた。
「あれは私が作った魔法よ」
「魔法って作れるのか?」
「まあ、ある程度はね」
「すごいな。レティシア」
レティシアはユウヤに褒められて少し嬉しそうに微笑むと、続きを話し始めた。
「もともと、空気中の魔力を使って魔法を使うことは出来なかったんだけど、私が空気中の魔力を利用する方法を見つけたから出来た魔法なの」
「本当にすごいな。けど、そんなに大量の魔力を制御出来るのか?」
「私は制御してないわ。魔力制御を魔法に組み込んでるから、一度発動すれば自然と空気中の魔力を集めて最初に決めた魔力の動きを自然としてくれるの。さっきの魔法もあらかじめ決めた動きを魔力が自然と行ってくれるから制御は気にしなくてもいいの。欠点は解くまでの間最初に決めた力をずっと維持するから力加減が出来ないことかな」
ユウヤはいつもはあまり話さないのに、魔法について嬉しそうに長々と説明しているレティシアに驚いていた。
(レティシアは本当に魔法が好きなんだなー)
ユウヤは意外なものを見たと思いながら、冒険者ギルドに向かって歩き続けた。
町の門が見えてくると、レティシアは魔法の説明が終わり、何か俯いて恥ずかしそうにしていた。
町に入ったころには完全にいつも通りに戻り、ほとんど話さずにギルドに向かって歩いていた。
冒険者ギルドが見えてくると、冒険者ギルドの前にマユリが経っているのが見えた。
マユリもユウヤを見つけると、手を振りながら走ってきた。
「ユウヤ~」
マユリがユウヤの名前を呼ぶと、レティシアもマユリがユウヤに手を振って近づいてきていると気づいて少し不機嫌そうな顔になった。
「ユウヤ、あの子誰?」
「ん?ああ、あいつは……」
ユウヤがマユリを紹介しようとした時、マユリが抱き着いて来て受け止める衝撃で途中で途切れた。
レティシアはユウヤに抱き着いたマユリを見てさらに不機嫌そうな顔でマユリを睨んだ。
「会いに来ちゃった」
「はい?」
マユリの言葉にユウヤは本日二回目の間抜けな声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます