第37話 マユリの謎

 ユウヤ達は冒険者ギルドに入り、受付にいた依頼の受領をした受付嬢に話しかけた。


「すいません。依頼達成の報告に来ました」


 レティシアが依頼達成を報告すると、受付嬢は驚いたような顔で依頼書を確認した。


「えっと、本当にオーガ五十体を討伐して来れられたんですか?」

「そうですけど、どうかしたんですか?」

「い、いえ、こんな短時間で依頼を達成してくるとは思っていなかったので」


 受付嬢は戸惑いながら、依頼内容を確認しながらユウヤとレティシアを見た。


「申し訳ございません。依頼達成の確認をさせてもらうため、明日もう一度来てもらっていいでしょうか?」

「ええ、問題ありません」


 レティシアは受付嬢に了承すると、ユウヤ達と一緒に冒険者ギルドを出てた。

 冒険者ギルドを出ると、マユリがユウヤに話しかけてきた。


「あなたたち、どんな依頼を受けていたの?」

「門を出てすぐの山に住んでたオーガの群れの討伐だ」

「もしかして、朝オーガ討伐した帰りだったの?」

「いや、あの後朝食を食べて依頼を探した後、討伐に向かったんだ」

「……さっきオーガ五十体討伐って聞いた気がするんだけど?」


 マユリは呆れたような顔で首を傾げてユウヤに問いかけてきた。


「ああ、五十体以上いたな」

「まあ、オーガ五十体なら今の私たちなら特に問題ないから」

「あなたたち、一体何者よ」


 マユリは完全に呆れた顔で二人を見て言うが、ユウヤはよくわからないように首を傾げた。

 そんなユウヤを見てレティシアも呆れたような顔をして小さくため息をついた。


「今のユウヤ結構強いよ。それこそ今なら龍壱さんも遥かに超えているでしょうね」

「……そうだな」

「龍壱って誰?」

「俺の師匠だよ」


 ユウヤはレティシアの言葉を聞いて俯いて少し暗い声で二人に返した。


「私の言いたいことは、今のユウヤは龍壱さんと同じSランク冒険者の実力があるってことよ」

「Sランク!すごいじゃない!ユウヤ!」


 レティシアの言葉にマユリはユウヤを大声で褒めるが、ユウヤは暗い顔をして俯いた顔を上げた。


「こんなんじゃだめだ。この程度じゃあ、あいつを倒すことは出来ない」


 ユウヤは空を見上げてどこかにいるであろうデザストルを思いながら、呟くような声で言った。

 ユウヤは無意識のうちに強大な殺気を放ち近くにいる人たちは蛇に睨まれた蛙のように固まり動かなくなり、鳥や猫などの動物たちは一斉にユウヤとは別方向に逃げて行った。


「ユウヤ、殺気出てる」


 レティシアの言葉にユウヤは殺気を出していることに気づき、殺気を慌てて抑えた。


「助かった、レティシア。マユリも悪かったな」


 ユウヤは殺気を抑えた後、レティシアにお礼を言ってマユリに頭を下げて謝った。


「別に大丈夫だよ。それより、ここから急いで移動した方がいいわね」


 マユリは特に何も気にしてないように言った後、周りを見渡しながら返した。

 マユリに言われて周りを見渡した二人は、目に見える範囲にいる人が全員動きを止めてこちらを見ていることに気づいた。


「あははは……逃げるぞ、二人とも」


 ユウヤはマユリを抱きかかえると、レティシアと一緒に走ってその場を離れた。

 レティシアはマユリをお姫様抱っこして少し前を走っているユウヤに不機嫌な顔で視線を送った。

 マユリはユウヤの肩越しからレティシアに勝ち誇ったような顔で視線を向けると、レティシアは一瞬驚いた顔をしてさらに不機嫌そうな顔で睨みつけた。


「ユウヤ、そろそろいいんじゃない」

「そうだな」


 少し低い声でユウヤに声を掛けたレティシアにユウヤは返事をして止まった。

 ユウヤは止まると、マユリを降ろして話しかけた。


「悪いな、殺気を浴びせた上に急に担いで走り出して」

「全然大丈夫だから気にしないで」

「そうか、ありがとうな」

「いえいえ」


 ユウヤに満面の笑みを向けて楽しそうに話しているマユリを不機嫌そうに見ていたレティシアは一つの疑問が浮かんだ。


(あれ?私と同じ距離で受けて、なんでマユリは平気なんだろ?)


 先ほどのユウヤの殺気は近くに人がいなかったため、気絶して倒れる人がいなかったが、殺気は強力で近くにいたレティシアでも少し硬直しユウヤを止めるまで動けなくなっていた。

 しかし、レティシアは冒険者としてかなりの精神力を誇っているため、その程度で済んだが、マユリは冒険者のようには見えず、鍛えているようには見えなかった。


(彼女、一体何者なの?)


 未だに、ユウヤと楽しそうに話しているマユリをレティシアは少し警戒して見た。


「それじゃあ、町見て回りましょうか」

「そうだな」

「じゃあ、行きましょ」


 マユリはそう言うと、ユウヤの手を握って歩き出した。

 レティシアは慌てて、ユウヤのマユリとは違う手の袖を掴んだ。


「待って」

「分かっている。三人で回るって言っただろ」

「……」


 レティシアはユウヤの問いに何返すか迷い、無言で頷いて返した。


「それじゃあ、行くか」


 マユリはユウヤの手を掴み、レティシアは反対の手の袖を掴んで横並びでマユリの案内の元町を回り始めた。

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