第26話 弟子たちの話

 風呂屋から帰って来るとユウヤとレティシアの二人は修行の疲れにより宿に着くなりそれぞれの部屋に戻り眠りについた。

 ユウヤ達が部屋で眠ったため龍壱とドロシーは二人で夕食を食べに宿の食堂に来ていた。


「それにしても二人とも大分疲れておるようじゃの」

「まあ、結構厳しい修行しているからね」

「レティシアの調子はどうじゃ?」


 龍壱は頼んだ料理を食べて軽くエールを飲みドロシーに問いかけた。

 ドロシーも蜂蜜酒を飲みながら、少し言いにくそうに話し始めた。


「あの子はすごいわよ。成長期だからなのか分からないけど、魔力の総量がすごい勢いで増えてるわ」

「そんなに増えておるのか?」

「ええ、初めて会った日と比べたら別人と言ってもいいわね。もうAランクの魔導士より魔力量は上よ」

「たった数日でそこまで魔力量が増えるとは」


 ドロシーの説明に龍壱は驚きながらある程度予想していたかのような表情でエールを飲んだ。

 そんな龍壱の態度にドロシーは疑問に思って問いかけた。


「思った以上に驚かないのね。予想してたの?」

「ああ、ある程度わな」

「もしかして、ユウヤもすごい成長を?」

「ああ、レティシアとは違い魔力量や身体能力は変わらないが、魔力の操作能力がものすごい速度で伸びている。刀の振り方は最初からある程度できていたが、わしの指摘を聞いてすこしずつではあるが無駄が無くなってきている」

「そんなにすごい成長速度なの?」

「刀に関しては一般人程度じゃが、魔力操作は異常じゃの。あと半年もあれば魔力操作の精度はわしを超えるじゃろうな」


 龍壱の発言にドロシーは驚き蜂蜜酒の入っているジョッキを机に置いて料理を食べる手を止めた。


「そんなにすごいの?龍壱さんが数十年かけてたどり着いた領域に、たった半年でたどり着けるなんて、冗談でしょ」

「本当じゃよ。刀の腕も一年間修行にのみ集中すればわしを超えるじゃろうな」

「刀は一般人じゃなかったの?」

「ある程度は出来ておると言ったろ、子供のころからかなり修行させられたのじゃろうな。わしから見たら無駄があるとはいえ、かなりの腕じゃぞ」

「そう……あの二人何者なのかしらね」


 俯きながら言うドロシーに龍壱はエールを一気に飲み干して考えを言った。


「ユウヤはアイリの息子ということもあって魔導士としての才能が高いからということは分かる。しかし、レティシアに関してはわしもわからん」

「師匠の弟子って聞いてたけど、魔法理論の理解力、魔力量の成長速度、魔力操作の精度どれをとっても魔導士として逸材よ」

「あの子もかなり特殊な事情があるんじゃろう。あんまり触れてやるなよ」

「分かってるわ。姉弟子で師匠でもあるんだから、どんな事情を抱えていても見捨てる気はないわ」

「さて、話はこれくらいにして早く夕飯を食べて寝るとするか」

「それもそうね。明日も朝早くから修行だものね」


 二人はそれ以降あまり話さずにお酒と夕食を食べて、部屋に戻り眠りについた。

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