第27話 三か月後
ユウヤ達が龍壱達と出会って三か月が経った。
三か月の間、ユウヤ達は一週間修行して仕事に出かけ、移動途中に修行し、帰って来ると一週間修行を繰り返した。
三か月の間にユウヤは戦闘で刀をメイン武器にして大剣を使う以上に戦えるようになり、レティシアはドロシーに渡される魔導書以外にドロシーに紹介された図書館の魔導書を読み漁ったことで極大魔法を複数使えるようになり、魔力の総量も三倍近くに増え、ドロシーに教わった戦闘スタイルに慣れてきていた。
「それじゃあ、仕事に行くぞ。今回の仕事は火山地帯で毒ガスが発生している可能性があるから気を付けるんじゃぞ」
「分かってるよ。この三か月で何回か行ったじゃないか」
「そんな風に油断してると、危ないってことよ」
「まあ、ユウヤにはあんまり関係ない話ですけど」
「……とにかく、警戒はしておくことじゃ。ユウヤも毒ガスを感じたらすぐに言うんじゃぞ」
「分かってる」
「それじゃあ、出発じゃ」
簡単な打ち合わせを終えると、ユウヤと龍壱は武器以外の必要な荷物をドロシーとレティシアに預けて異空間収納に入れてもらった。
三か月の修行の結果、ユウヤは最低限の部位を身体強化する魔力操作のオンオフを意識的に切り替えることで無意識に魔力操作できるまでに上達したため、歩いて移動する時は一人だけ早く歩いてしまうため魔力操作をしなくなった。
「それにしても、二人とも三か月で予想以上に成長したの。ユウヤに至っては魔力操作の技術だけなら、もう少しでわしに届きそうじゃ」
「魔力操作にそんなに差がないのに何で未だに、模擬戦で全然勝てないんだよ」
「経験の差じゃよ、身体能力に関してはユウヤの方がはるかに上じゃよ。最近は速すぎて模擬戦がつらいわ」
「経験の差って言われてもな。三か月前より三倍近く速くなってるのに未だに一太刀も当たらないのは納得がいかない」
「ユウヤもいずれ、相手のわずかな動きで次にどう動くか手に取るように分かるようになる。そうなれば、今のわしなぞ相手にならんレベルで強くなる」
「なるほど、わずかな動きで次の動きを読むのか……かなり難しい気がするんだけど、魔物の動きならある程度分かるけど、龍壱さん動きの初動がまるでつかめないんだけど」
「そりゃあ、動きを読まれんように自然な流れで動いておるからの。今のわしは息をするのと刀を振るの、あまり変わらん」
「それって、相手の呼吸も把握できるくらいにならないとだめなのか?」
自信満々に言う龍壱にユウヤは呆れた顔で聞き返したが、龍壱は当然というような顔で続きを話した。
「呼吸だけではない、瞬き、視線の動き、意識の方向、魔力の流れ、それらすべてを手に取るように把握できるようになるのが目標じゃ。まあ、呼吸、瞬き、視線の動き、魔力の流れが分かれば及第点かの」
「……もっと修行しないとだめだな」
「そうじゃ、強くなるには修行するしかない」
龍壱の説明を聞いて遠い目をして修行を頑張ることを誓うユウヤに龍壱は笑いながらユウヤの頭をポンポンと軽く叩いた。
「それにしても、ユウヤは歳のわりに背が少し低いの。百六十くらいか」
「これ以上伸びないんだからどうしようもないよ」
「まあ、身長が無くても大した問題はないさ。気にするな」
龍壱の何気ない言葉に気にしているのか少し落ち込んだような声で返すユウヤに、龍壱は励ますように明るい声で返した。
そんな二人の会話にずっと話を聞いていたドロシー達が入って来た。
「確かに、レティシアより少し高い程度だものね。成長期だから低いのかと思ったけど、そうでもなさそうね」
「アイリさんは『遺伝かな』って言っていたので、おそらく成長期は関係ないかと」
「母さん、そんなこと言ってたのかよ」
「ええ。まあ、身長は高くなくても問題ないわよ」
「はあ。諦めろってことですね」
レティシアの言葉にユウヤはため息をついてわずかな期待を捨てることにした。
「それより、今回の仕事場所はどれくらいで着くんだ?」
「七日じゃの」
「遠いな」
「今回の火山は町からかなり離れていて近くに町が全くないからね」
「そんな場所で魔物討伐の仕事ですか?」
「その火山にいる魔物の群れがたまにちょっと離れたところある町や近くを通った人を襲って困ってるみたいよ」
「なるほど」
ドロシーの説明に仕事場所に疑問を感じていたレティシアは納得したようにうなずいた。
それから四人はいつものように夕方になると道からすこし外れ、テントの張りやすい場所を探してテントを張った後、夕食を食べる前に修行し、修行が終わると夕食を食べ、ユウヤと龍壱はお湯で濡らしたタオルで体を拭き、レティシアとドロシーはシャワーを浴び、四人はテントで眠った。
いつも通りの移動で七日経ち、仕事場所の火山に到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます