第19話 Aランクの特徴
ユウヤ達は龍壱のおすすめの飲食店に移動して、夕ご飯を食べ終わり話始めていた。
「それじゃあ、何から話そうかの?」
「AランクとBランク以下って何が違うんですか?」
「そうじゃの。まず、そこから話そうか」
龍壱はレティシアの質問にコップに入った水を飲んで返した。
「Aランクの基本的な仕事は魔物の討伐じゃ。Bランク以下との違いは魔物の強さと場所じゃ」
「強さはわかるけど、場所に何か関係あるの?」
「ああ、場所によっては討伐する魔物より遥かに危険なところもある」
「そうよ。一息で死ぬような毒ガスが充満した場所で魔物を討伐することだってあるのよ」
「へー」
龍壱の説明にドロシーが具体的な例を挙げてユウヤ達に教えてくれた。
「だから経験がないと危ないんですね」
「ええ、注意しても大丈夫だろうと思って対策なしで行く人も少しはいるから」
レティシアの言葉にドロシーが返した。
「けど、ユウヤはそこまで心配しなくても大丈夫ですよ」
「それはどうしてじゃ?」
「パーティを組む以上ちゃんと話した方がいいわよね」
「そうだな」
レティシアの言葉に龍壱が少し目を細めて問いかけた。
レティシアはユウヤに視線を向けて、どうするか聞いた後二人に視線を戻して話し始めた。
「ユウヤに心配が無いのは魔力が異常に多い理由に関係があります」
「その理由とは」
「ユウヤは魔力排出器官が少ない体質で体の外に魔力を出すことがほとんど出来ないんです」
「!?」
「それがどう関係するんじゃ?」
レティシアの言葉に龍壱はよくわからないと言った顔で問い返したが、ドロシーは驚きありえない顔でユウヤを見た。
「ユウヤの魔力は生まれつき普通の魔導士より多かったそうです。そんなユウヤの一日の生成量と排出量が比例していないと日が経つにつれ体内の魔力が増え続け、行き場がなく流れが乱れている魔力は体を傷つける。十日も経てば魔力量は倍以上に増えて死ぬのが普通だそうです」
「なるほどな。つまり、死なないためには魔力が増える速度で制御能力を鍛えなければならんわけか」
「はい」
レティシアの説明に龍壱が頷きながら返した。
「それは分かったけど、どうして危険な場所に言っても大丈夫なんて言えるの?」
レティシアと龍壱の会話にドロシーが割って入り質問してきた。
「知り合いのお医者さんに聞いた話だと、ユウヤは体は別の生き物と言っていいほど人からかけ離れて丈夫に出来ているそうです。それこそ、一滴で数百人の人を殺せる毒をバケツ一杯分飲んでも何の症状も出ないそうです」
「そ、それは、本当に人間なの?」
「確かにそれはすごいの」
レティシアの説明にドロシーと龍壱はユウヤに対して申し訳なさそうな顔をしながらも聞き返した。
「ええ、ユウヤが人なのは間違いないです」
「しかし、どうしてそんなに頑丈になったんじゃ?」
「確かに、魔力が多い人間は普通の人より強い体になるって聞いたことあるけど、毒に対する態勢が付くなんて聞いたことないですよ」
「わしも魔力で身体強化はするが、回復能力も上がるが毒に強いわけではないだろう」
「それに関しては事例が少ないためあまり正確な情報ではありませんが、子供のころから魔力で傷つけられた細胞が、異常な身体強化の影響で傷ついては治すを繰り返し続けた結果ちょっとしたことでは問題ないくらい丈夫になったんだろうと言われました」
「なるほどの」
「例が少ないってことは、他にも事例があるの?」
レティシアの説明を聞いたドロシーは少し考えた後、質問をした。
「ええ、かなり高位の魔導士が数人がかりで子供が魔力制御出来るようになるまで、交代で魔力制御をすることで助かった人はいるそうです。その人もユウヤほどではないですが丈夫な身体に育ったそうです」
「どれだけお金を掛けたのよ」
「貴族の子供だったそうですよ」
「ああ、なるほど……」
レティシアに聞き返して返って来た答えに、ドロシーは呆れたような顔になった。
「まあ、ユウヤについては分かった。しかし、危険な場所に変わりはない。しっかりと、経験を積んでもらうぞ」
「分かっています」
「それと、刀の修行もしっかりとしていくからの」
「分かっています」
「よろしい。それでは明日の朝、仕事に出発する」
「仕事の内容は何ですか?」
「なに、最初じゃからの実力を見るために、場所は普通の森で魔物も大して強くはないから安心せい」
「……それって本当にAランクの仕事?」
龍壱の説明に疑うような目を向けてユウヤは問い返した。
「当たり前じゃ、目的の場所まで距離があるからのその間はみっちり修行じゃ」
「無駄がない」
「教えることは山のようにあるからの」
「けど、俺刀ほとんど使わないけど、どんな修行するの?」
「……なんじゃと!?」
「いや、刀は予備の武器で主要武器は違うって言ったんだけど……」
ユウヤの何気ない言葉に龍壱は今日一番の大声で聞き返した。
「……じゃあ、主要武器はなんなんじゃ?」
「三メートル近くある大剣だけど」
「大剣か……主要武器を刀に変える気はないか?」
「武器を作ってくれた剣術の師匠にも同じこと言われたけど、なんで刀を推すの?」
「その師匠が推した理由は知らぬが、わしが推すのはわしの戦闘スタイルに刀に合っているからじゃ」
「その戦闘スタイルを俺が使って強くなれるのか?」
「なれるとも」
ユウヤの疑うような質問に龍壱は自信満々に返し、戦闘スタイルの説明を始めた。
「刀は剣とは違って力で斬るものではない、正しい振り方で素早く斬ることが重要じゃ。お主のように全人を身体強化で強化するのとは違い、動作に必要な最低限の場所に魔力を集中して高速で刀を振ることであらゆるものを斬ることが出来るようになるのじゃ」
「理屈はよくわからないけど、強くなれるならやってみるよ」
「強くなれないと大剣をこれまで通り使うということか?」
「まあ、使えるようになるまでは大剣を使うけどね」
「わかった。今よりはるかに強くなることを約束しよう」
「俺も全力で頑張るよ。それでだめなら龍壱さんも諦めてくれ」
「よかろう。その時はわしに見る目が無かったと諦めよう」
ユウヤの言葉に納得して頷き、龍壱はユウヤに手を伸ばして握手した。
その後、ユウヤ達は宿に戻り明日からしばらく出かけることを伝え、早めに眠りについた。
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