第12話 魔法の勉強とアイリの秘密

 ユウヤとアイリが剣術の修行を初めて三年が経ち、ユウヤとレティシアは十歳になった。

 ユウヤは毎日のようにガウスのもとへ剣術の修行に行くが、レティシアは二日に一回のペースで行くようになった。

 レティシアは剣術の修行に行かない日は家でアイリから魔法を教えてもらうようになった。


「じゃあ、母さん、レティシア。行ってくるね」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」


 ユウヤが出かけると、レティシアは奥の部屋に行きアイリの指定した本と紙とペンを持って魔法の勉強を始める。


「レティシア、今日は勉強を始める前に私の体のことを話しておくわね」

「アイリさんの体ってことは、病気についてですか」

「ええ」


 アイリの真剣な顔を見てレティシアは本と紙とペンを机に置いて話を聞く体制を整えた。


「私は、魔力排出器官の異常と魔力生成器官が衰える病気にかかっているわ」

「そ、それにかかるとどうなるんですか?」

「魔力の排出量が異常に多くなり、体内に留めておくことが難しくなるわ。もう一つの病気は名前の通り魔力生成器官が衰え続けて生成量が減り続けるわ」

「それって……」


 アイリの病気の説明を聞いて、レティシアは何か思い付いたような顔をした。


「ええ、魔力が枯渇しいずれ死に至るわ。魔力排出を抑えてるけど、それでも長くて後二十年くらいしか生きられないわ」

「!?」


 アイリの言葉にレティシアは驚き椅子から立ち上がった。


「悪いけど、ユウヤには秘密にしてもらえる。あの子が知ったらきっと罪の意識を感じるから」

「どうして……あっ!」


 レティシアはアイリの言葉の意味が最初は分からなかったが、ユウヤの病気を思い出して意味を理解して両手で口を隠した。


「それって、ユウヤが子供の頃にユウヤの代わりに魔力を制御していたからですか?」

「ええ、流石に私でもユウヤの魔力を制御しながら自分の魔力も制御することは出来なかったから」

「けど、どうしてそんな病気に……」


 レティシアは話を聞いて「病気にかかっていなければ良かったのに」と言いたそうな顔をして俯きながら椅子に座った。

 アイリはそんなレティシアを見て優しくレティシアの頭を撫でて話始めた。


「私がこの病気になったのは、私の自業自得だから気にしなくていいのよ」

「どうして病気がアイリさんの自業自得なんですか?」

「実はね、私が限界を大幅に超えて魔力を生成して魔法を使ったのが原因なのよ」

「限界を超えるとそうなるんですか?」

「ええ、排出器官と生成器官に負担をかけすぎるとなる可能性があるの」


 レティシアはアイリの話を聞いて、少しの間考えた後一つの疑問を問いかけた。


「排出量を増やすのは分かるんですが、生成量を自分の意思で増やせるんですか?」

「ええ、一流の魔導士は全員出来るわ。けど、自分の生成器官で生成できる範囲以上を生成することは不可能ではないけど、かなりの負担がかかるから絶対にしちゃだめよ」

「わかりました」


 真剣な顔で警告するアイリにレティシアは同じく真剣な顔で頷いた。

 そのレティシアの態度を見てアイリはいつもの優しい微笑みを浮かべた。


「それじゃあ、魔法の勉強を始めましょうか」

「はい」


 レティシアはアイリの話を聞いたことで、いつも以上に真剣な態度で魔法の勉強に取り組んだ。

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