第11話 ユウヤの本気

 ユウヤとレティシアは家を出てガウスの家まで歩いてきた。

 ユウヤはガウスの家に着くと、扉を開けて中に入った。レティシアもユウヤの後に続いて家に入った。


「ガウスさん、来たよ」

「おう、来たか。準備は出来てるぞ」

「どこでやるんですか?」

「村を出てすぐの森でやる。荷物を運ぶの手伝ってくれ」

「はーい」

「分かりました」


 ガウスは大きな木箱を二つと、二つより一回り小さい木箱を一つ床に置いた。


「ユウヤは、俺と大きいのを運ぶの手伝ってくれ。レティシアは、もう一つの箱を頼む」

「はーい」

「分かりました」


 ユウヤ達は言われた通りに木箱を持ち上げた。


「それじゃあ、行くぞ」


 ガウスが家の扉を開けて移動し始めた。

 ユウヤ達もガウスの後に続いて、ガウスの家を出て森に向かった。

 しばらく歩き村の門を抜けて森の中にある程度入ったところでガウスが止まった。


「ここで訓練をする。箱をおろしてくれ」


 二人はガウスに言われた通りに木箱をおろしてガウスの指示を待った。


「じゃあ、箱を開けて中に入っている物を出してくれ」


 二人はガウスの指示に従い、木箱を開けて中に入っている物を出し始めた。

 木箱の中には鉄の盾が二つと、鉄の剣が一本と、木剣が二本、後は丸太やロープなどの道具などが入っていた。


「ガウスさん、これどうするの?」

「すこし、待っていてくれ。今用意するから」


 ガウスはそう言うと、近くの木に鉄の盾を一つロープで括りつけ始めた。

 ガウスが盾を括りつけ終わると、鉄の剣を持ってユウヤに近づいて来た。


「ユウヤ、この剣をあの盾に向かって全力で振り抜いてくれ。盾にはちゃんとこの刃の部分を当ててくれよ」

「いいけど、本当に本気でやっていいの?」

「ああ、ユウヤの全力を把握しておきたい」

「分かった」


 ユウヤはガウスから剣を受け取り、盾を括りつけてある木に近づいた。

 ガウスはもう一つの盾を持ち、レティシアに近づいて一緒に木から距離を取り、木の方向に盾を向けてレティシアを背後に隠した。


「いいぞ、ユウヤ」

「はーい」


 ユウヤはガウスの声を聞いて、両手で剣を持ち盾に向かって全力で振り抜いた。

 ユウヤが振り抜いた剣は盾に当たった瞬間に轟音と共に盾と一緒に砕け散った。

 盾が括りつけてあった木は剣を叩きつけられた衝撃によって折れユウヤの居る方に向かって倒れかかってきた。

 ユウヤは倒れてきた木を受け止めて反対側に倒した。


「ふー、危なかった」


 木を反対側に倒したユウヤは軽く息を吐き、何かが木の下敷きになってないか確認した。


「何も下敷きになってないな。ガウスさん、終わったよ」

「……あ、ああ」


 ガウスは、あまりの威力に驚き考えがまとまらず曖昧な返事を返した。

 ガウスとレティシアには、ユウヤが振った剣をまるで目で追えず、轟音が鳴り響いた時初めてユウヤが剣を振り抜いたことに気づいたほど、反応が出来ずに固まった。


「そ、それじゃあ、お前ら木剣を持ってくれ。まず、持ち方と振り方を教える」

「はーい」

「……」

「レティシア、大丈夫?」

「え、あ、だ、大丈夫」


 レティシアはユウヤに声を掛けられて我に返り、ガウスに言われた通りに木剣を持った。

 ユウヤもガウスの指示に従って木剣を握り、レティシアと一緒に振り始めた。

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