第10話 剣術修行開始

 ユウヤとレティシアが魔力制御の修行を初めて三か月がたった。

 魔力制御の修行の途中でユウヤはガウスのもとに行き、冬が終わってから剣術の修行を始めたいことと、レティシアも一緒に修行することアイリに言われて伝えた。

 ユウヤとレティシアは魔力制御の修行を少しずつ制御出来る時間を伸ばし数か月で生活をしながら数時間維持出来るようになった。


「二人とも大分制御出来るようになったわね」

「うん、頑張った」

「頑張ったけど、魔力量はあんまり増えなかった……」


 ユウヤとレティシアは魔力を制御しながらアイリに返事をした。


「そんな簡単には魔力は増えないわよ。地道に制御の練習をしていけば増えるわ」

「頑張ります」

「レティシアは魔力制御上手いんだから、すぐに増えるよ」

「そうだといいんだけど……」

「ユウヤも一日中制御できるようになれば、次は細かい力の調整が出来るようにならないとね」

「はーい」


 アイリの言葉に返事をしたユウヤは魔力制御したまま朝食を作りに行こうとしたが、レティシアに止められた。


「ユウヤ、今日は私が作るわ」

「ん、じゃあ、俺が食器洗いね」

「ん」


 ユウヤはレティシアが厨房に向かったのを確認すると、魔力制御に集中し始めた。

 魔力制御に集中しているユウヤにアイリが声をかけた。


「ユウヤ、そろそろ薪を持ってきておいた方がいいんじゃない」

「ん。……ああ、そうだね。取って来る」


 ユウヤは、アイリに言われて薪を置いている場所を見て少し考えた後家の外に薪を取りに行った。


「ユウヤは魔力制御に集中して判断力が落ちてるわね」


 アイリはユウヤへの指摘を小さく呟いた。

 少しすると、ユウヤが薪を持って帰って来ると、暖炉の近くに薪を置いた。


「ふー、母さん寒くない?」

「ええ、大丈夫よ」

「じゃあ、まだ薪は足さなくて大丈夫だね」


 暖炉の火を確認してユウヤはアイリのベッド隣になる椅子に座った。


「ユウヤ、魔力制御に集中しすぎてる時があるから、気を付けてね」

「そんなに集中してる?」

「ええ、さっきも薪の量を確認した時、いつもより少し長く考えてたわよ」

「そうなんだ。もっと自然に制御しなきゃ」

「体に巡らせる魔力の量を無意識で調整できれば、出したい力に必要な魔力を考えずに巡らせられるようになるわ」

「魔力の量の調整って結構大変なのに、そんな考えずに出来るようになるの?」


 アイリの言葉にユウヤが不思議そうな顔をして首を傾げた。


「なるわよ。ユウヤだって最初は十分しか魔力を制御出来なかったのに今は数時間は維持出来るでしょ」

「まあ、出来るようになったけど……」

「時間はかかるけど、練習を続けたら必ず出来るようになるわ」

「どれくらい続ければいいの?」

「ん~、十年くらいはかかるかな」


 首を傾げて問いかけるユウヤにアイリは顎に手を当てて考えて答えた。

 アイリの答えにユウヤは少し嫌そうに顔を歪めた。


「そんなにかかるの?」

「そんな顔しないの。強くなるのに近道はないんだから地道に頑張らないと」

「はーい」


 アイリの言葉に諦めたような顔でユウヤは返事をした。

 二人が話していると、レティシアが料理を運んできた。


「お待たせ」

「あ、手伝うよ」

「じゃあ、向こうに置いてある残りを持ってきて」

「分かった」


 レティシアを見たユウヤは立ち上がり、厨房に向かって残りの料理を持ってきた。

 レティシアはアイリの分の料理をお盆に乗せてアイリの膝の上に置いた。

 レティシア達の料理はアイリのベッドの隣に置いてある机に料理を並べた。

 三人は「いただきます」と言って料理を食べ始めた。


「そういえば、後どれくらいで春になるの?」

「二か月くらいだよ」


 レティシアの何気ない質問にユウヤが答えた。


「後二か月は魔力制御の修行に集中できるわけね」

「そうだね。冬はあんまり出歩けないから魔力制御の修行にはちょうどいいね」

「ええ、少しでも長く身体強化出来るようにならないと」

「どうしてそんなに身体能力長くしようとするの?」

「身体強化を長くするっていうより、長くして魔力を増やしたいの」

「魔力制御初めて魔力が感じ取れるようになったから分かるけど、レティシア結構魔力多くない?」


 レティシアの言葉にユウヤは首を傾げて問いかけた。


「確かに多いけど、冒険者として一人で旅に出るとなると少ないかなって」

「え!?一人で旅に出るの?」

「まあ、冒険者になって仲間は増えるかもしれないけど、最初は一人だから」

「俺も冒険者になるから一緒に行くよ」

「え?」

「そうなの?」


 ユウヤの言葉にレティシアとアイリは驚いた顔をした。


「あれ?いって無かったっけ?」

「聞いてない」

「私も聞いてないわ」

「俺、冒険者になることにしたの」

「いいんじゃない。ユウヤには、この村だけでなくもっと広い世界を見てきて欲しいわ」

「うん、たまには帰って来るから安心して」

「私のことは気にしなくてもいいわ」


 ユウヤとアイリが話していると、レティシアがユウヤに問いかけた。


「本当に冒険者になるの?」

「うん、レティシアもなるなら一緒の方がよくない?」

「確かにユウヤと一緒なら心強いけど……いいの?」

「うん、俺もレティシアと一緒の方が心強いから」

「なら、一緒に冒険者なろうか」

「おう」


 俯き恥ずかしさで赤くなった顔をユウヤに見せないように呟いた。

 ユウヤはそんなレティシアの態度を特に気にせずに頷いた。

 アイリは二人の様子を見て微笑ましそうな顔をしながら、レティシアが作った料理を食べるのを再開した。




 ユウヤとレティシアが一緒に冒険者になる約束をして二か月が経った。

 二人は起きている間の大半魔術制御を続けることが出来るようになった。


「レティシア、準備出来た?」

「準備出来たわ」

「それじゃあ、ガウスさんのところ行きますか」

「ん」

「母さん、行ってきます」

「行ってきます」

「いってらっしゃい、二人とも」


 アイリは二人に手を振って見送った。

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