第8話 ユウヤの力
ユウヤは魔法の説明をアイリに受けた後、ガウスの家に斧を貰いに来ていた。
ユウヤはガウスの家に着くと、ノックをせずに扉を開けた。
「ガウスさん、斧貰いに来ました」
ユウヤが扉を開けると、剣や斧、包丁など金属製品が種類に分けて棚に並べられていた。
部屋の奥にある机の椅子に体格の良い老人のガウスが座っていた。
「おう、ユウヤ。好きな斧を持って行っていいぞ」
「ありがとうございます」
ガウスに言われてユウヤは斧が置いてあるところを探し気に入った斧を一つガウスのもとに持って行った。
「これください」
「おう、持って行け」
ガウスは元気なユウヤの言葉にガウスも同じように返した。
ユウヤは斧を選び終わり周りのいろいろな商品を見ていると、部屋の隅に置いてある大きな大剣が目に留まった。
「ガウスさん、あれ何?」
「ああ、あれは俺が最近作った剣じゃ。大きく重い大剣ならかなりの威力が出ると思って作ったんじゃが、重すぎてまともに振り回せん失敗作じゃ」
「へー」
ユウヤは大剣に近づいて軽く叩くと、鉄の塊を叩いたような音が響いた。
「すごい、鉄の塊みたいだ」
「ああ、鉄と魔石と特殊な鉱石を一定の割合で混ぜた金属で作ったから強度もすごいぞ」
ガウスの言葉を聞いてユウヤは先ほどより少し強い力で叩いた。
すると、先ほどよりさらに大きい音が響いた。
「おお、ちょっと強めに叩いたのに壊れない」
「流石に、ユウヤが強めに叩いた程度で壊れる武器はないじゃろ」
「え?剣ってちょっと叩けば壊れるじゃん」
「ん?試しにこの剣を叩いてみてくれ」
ガウスは首を傾げているユウヤに近づき、近くにあった適当な剣を持ちユウヤに渡した。
「いいの?」
「ああ、買う奴はほとんどいないから壊れても問題ない」
「じゃあ、やるね」
ユウヤはガウスに言われたように右手で剣を持ち左手で叩いた。
剣をユウヤが叩いた瞬間、剣はきれいに真っ二つに折れた。
「な!?」
「ほらね」
当たり前のように言うユウヤの言葉にガウスは驚いて固まった。
「身体能力が高いとは聞いていたが、ここまでとは……」
「このくらい普通だよ」
「普通じゃないんだがな……」
ガウスはユウヤが折った剣を見ながら何か考え始めた。
「ユウヤ、あの大剣持ってみるか?」
「いいの?」
「ああ、持ってみてくれ」
「分かった」
ユウヤは大剣に近づき大剣を持とうとしたが、剣が長すぎて柄に手が届かなかった。
「ガウスさん、柄に手が届かない」
「ああ、そうだな。ちょっと待ってろよ」
ガウスは大剣に近づいて柄を取り、ユウヤの手が届く高さまでゆっくりと柄をおろした。
「ほら、早く持ってくれ。これ、重いんだ」
「分かった」
ユウヤが柄を掴んだことを確認すると、ガウスは手を放した。
「さ、持ち上げてみろ」
ガウスの言葉を聞き、ユウヤが大剣を持ち上げた。
大剣を持ち上げると、剣先が天井に着きそうになった。
ユウヤは大剣を持ち上げると、驚いた顔をして大剣を見た。
「これ、ちょっと……重たい」
「ちょっと!?」
ガウスはユウヤの言葉に驚いた。
先ほど、ガウスが柄をユウヤの手の届く高さにおろす時に身体強化を行い、大剣が倒れないようにかなり力を入れていた。
(ユウヤの身体能力は異常だ)
ガウスは未だに大剣を見て驚いているユウヤを見ながら少し考えた。
「ユウヤ、冒険者になる気はないか?」
「冒険者?なんで?」
「お前の身体能力を生かすためだ。その大剣があればかなり強い冒険者になれる」
「それって、この大剣くれるの?」
「ああ、そんな剣を振り回せるのはお前くらいだ」
「ありがとう」
ユウヤはガウスの言葉に大剣を見て喜んだ。
「けど、冒険者になるとこの村から出ないといけないんじゃ」
「まあ、そうなるな」
「じゃあ、いいかな」
「なぜだ?」
「だって、母さんの看病しないといけないし」
「おお、そうか」
ガウスはユウヤの言葉になんと言おうか考え始めた。
「ユウヤは優しいな。けど、アイリの看病はイリスに頼めばしてくれるだろ」
「そうかもしれないけど、イリスさんに任せきりっていうのは……」
「分かっている。しかし、この村に居てもアイリの体を治す方法は見つからんぞ」
「……」
ガウスの言葉にユウヤは暗い顔をして俯いた。
「安心しろ、当てがないわけじゃない」
「本当!?」
ユウヤはガウスの言葉に顔を勢いよく上げて明るい笑顔になった。
「ああ、だから、冒険者にならないかと聞いている」
「なる、俺、冒険者になる」
「よし、なら俺が剣術の修行をしてやる」
「ありがとうございます。けど、さっき言ってた母さんを治す方法って?」
「東の国にどんな病気でも治す秘薬があると聞いたことがある」
「可能性はある。しかし、今のお前だと東の国に着く前に魔物に殺されるだろう」
「そんな……」
「安心しろ、剣術を学んで力の使い方が分かれば、お前は誰にも負けない強い男になるぞ」
落ち込んで頭を俯いたユウヤの頭を軽く叩いてガウスは断言した。
「ほ、本当に!?」
「ああ、だから今日は家に帰ってアイリに剣術を習うことを伝えておけ、次来た時には修行が出来るように準備しておく」
「分かった。また来るね、ガウスさん」
「おう、またな」
ユウヤはガウスに元気よく頭を下げて挨拶した後、斧を持って走って家に帰った。ガウスはそんなユウヤの後ろ姿を優しい顔で見送った。
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