第6話 新しい生活
ユウヤとレティシアの話し合いが終わり、ユウヤはイリスの方を向いて問いかけた。
「それでレティシアはいつ退院出来るんですか?」
「別に大きな怪我をしているわけじゃないから、今からでも退院出来るわよ」
「じゃあ、レティシア今から家に帰るけど一緒に来る?」
「そんなすぐに行っていいの?」
「ああ、大丈夫だ」
「親に許可は取らなくていいの?」
「ああ、気にするな。母さんも人助けなら何も言わない」
「そうなんだ」
「じゃあ、帰ろうか」
ユウヤはレティシアの手を取り立たせた。
「歩けるか?」
「ごめんなさい。足がまだ思うように動かないわ」
「昨日全力で走ったせいでしょうね。ユウヤ、昨日と同じように抱えてあげたら」
「そうだな。じゃあ、レティシア抱えるよ」
「え!?」
からかうように言うイリスの言葉にユウヤは普通に答えてレティシアに一言言ってお姫様抱っこした。
突然お姫様抱っこされたレティシアはビックリし恥ずかしさで顔を赤らめた。
イリスも恥ずかしがらずにお姫様抱っこするユウヤに呆れた顔をしてため息をついた。
「じゃあ、イリス先生。また来ます」
「ええ、またね」
ユウヤは顔を赤くして固まったままのレティシアを気にせずに、部屋から出て行こうとしたが、何かを思い出して振り返った。
「あの、イリス先生。レティシアの服って、これしかないんですか?」
ユウヤは昨日とは違い何の装飾もない白いワンピースを着ているレティシアを見ながら聞いた。
「ああ、昨日着ていた服もあるにはあるけど、枝とかに引っかかってところどころ破れているのよね」
「つまり、着れないと?」
「まあ、すぐには着れないわね。今リリスさんのところで直してもらってるわ。ついでに、同じサイズの服も作ってもらってるから後で行ったら服貰えるわよ」
「わかりました。ありがとうございます」
ユウヤは一礼して今度こそイリスの病院を出た。
ユウヤはレティシアを連れて家に向かう前にイリスに言われたようにリリスの家に向かった。
リリスの家に着くとユウヤはレティシアに「ノックして」と声をかけてレティシアにノックしてもらった。
レティシアがノックして少しすると、扉が開き四十代後半くらいの女の人が出てきた。
「ユウヤじゃないか、何か用かい?」
「この子の服を貰えるって聞いて来ました」
「ああ、イリスに聞いて来たんだね。用意するから入って待ってて」
「分かりました」
リリスは扉を開いてユウヤ達を中に入れた。
ユウヤは扉から一番近くのソファーにレティシアを座らせた。
「ありがとう」
「いいよ、レティシア軽いから」
「……そう」
ユウヤの言葉にレティシアは恥ずかしそうに俯いた。
ユウヤはレティシアの隣に座り、リリスが用意して来るのを待った。
「お待たせ、昨日イリスが持ってきた服と同じサイズだから着られると思うわ」
「ありがとう、リリスさん」
ユウヤは服が入った袋をリリスから受け取りながら礼を言った。
リリスさんは、レティシアの方を向いて話しかけた。
「あんまりかわいいデザインの服はないのは許してね。次来る時までにはかわいい服作っておくから」
「あ、ありがとうございます」
レティシアはリリスに戸惑いながら頭を下げて御礼を言った。
レティシアとリリスが話している間に、ユウヤは服の詰まった袋を背負った。
「じゃあ、レティシア帰ろうか」
「ん」
レティシアは立ち上がろうとして倒れそうになったが、ユウヤが支えて来た時と同じように抱きかかえた。
「あらあら、またいらっしゃいね。ユウヤ、レティシア」
「はい、また来ます」
「また、来ます」
リリスに挨拶をしてユウヤ達はリリスの家を出た。
ユウヤが家に向かって歩いていると、レティシアが話しかけてきた。
「ねえ、ユウヤくん。この町には服屋はないの?」
「ないよ。服は近くの町まで買いに行くか、リリスさんみたいに作れる人に頼むかのどっちかだよ」
「じゃあ、私たちと同じ年ごろの子供は?」
「歳の近い子供はいないよ。俺より下の子供はいないし、上となると近くの町に仕事に出てほとんど帰ってこないから子供は俺以外には今はいない」
「……そ、そんなにこの村、人がいないの?」
「確かに、近くの町に比べると人は少ないかな」
「……そう」
ユウヤが答えるとレティシアは不安そうな顔で俯いてしまった。
「まあ、村の皆優しいから大丈夫だよ」
「皆、リリスさんみたいな人たちなの?」
「ああ、慣れるまでは大変かもしれないけど、とってもいい町だよ」
「そうなんだ」
レティシアはまだ不安そうだが、顔を上げて町を見渡した。
道は軽く舗装してあるだけで道端には柵があり、柵の向こうには畑が広がっていた。
来た道を振り向くと、イリスの病院やリリスの家など数軒の家と店のような建物がある広場があり、広場から舗装された道が数本ある。
広場から出ている道は、今ユウヤが歩いている道と同じように柵があり、周りに畑があった。
道の先には数件の家があるが、一つの道だけ道端に大きな丸太が立ててあり、その丸太の向こうに二人の兵士の姿が見えた。
視線を前に戻すと、道はちょっとした丘の上に続いており、そこに一軒の家が建っていた。
「あそこの丘の上にある家がこれから俺達が暮らす家だよ」
「あそこが……」
ユウヤの言葉にレティシアが家を見つめていると、あっという間に家の扉の前に着いた。
ユウヤが扉を開けて中に入った。
「ただいま」
「おかえりなさい、ユウヤ」
ユウヤの声に奥の部屋からアイリの声が返って来た。
ユウヤは奥の部屋の入口にレティシアを背負ったまま移動した。
「あら、その子はどうしたの?」
「昨日魔物に襲われてた子だよ。今日から家で暮らすことになったの」
「お母さん、初めて聞いたんだけど」
「今話したから」
「お母さんに相談とかないの?」
「しなくてもいいっていうじゃん」
「そうだけど……」
アイリはユウヤの言葉に何とも言えない顔をしていた。
少ししてアイリはレティシアの目を見て話しかけた。
「あなた、名前はなんていうの?」
「れ、レティシアです。今日からよろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。私は体が悪いから何も出来ないけど、困ったことがあったら相談に乗るわよ」
「ありがとうございます」
ユウヤはレティシアとアイリの話が終わったことを確認すると、アイリの隣にある自分のベッドにレティシアをアイリと同じように座らせた。
「ベッド二つしかないから、俺と同じベッドになるけど、我慢してね」
「分かった」
「じゃあ、昼御飯作って来るね」
そういってユウヤは厨房に向かった。
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