第11話
「紹介しよう。
こちらが治癒の魔法も使える魔法使い、ジオラだ。
こいつが、暁の徒士団団長のフィン・ユング。
こいつが、暁の徒士団副団長のアローン・ワイス
こいつが、暁の徒士団先駆けのテオ・メラ―」
一時間ほど簡易宿泊所で休んでいると、さっき相手をしてくれた受付嬢がやって来て、紹介したい冒険者クランがあると言った。
パーティーではなく、クランを紹介してくれると言う。
しかも、あの有名な『暁の徒士団』と言うのだから驚いた。
『暁の徒士団』は、家を継げない徒士家の部屋住みが、一旗揚げようと、同じ境遇の人間で徒党を組んで冒険者になった集団だ。
彼らは、荒くれ者が多い冒険者の中で一線を画していると、舞踏会の噂で聞いていました。
何と言っても、実家が士族の徒士家だから、家名の誇りにかけて、アコギな事が出来ないのだと。
本人達も、実力を養い名を売って、大公家や貴族家に仕官を望んでいるから、普段から礼儀作法を守っていると聞いていました。
仕官が無理でも、女の子しかいない徒士家に婿養子に入れるかもしれない。
そんな希望を抱いて、日々冒険に励んでいると、前世でも有名だったのです。
特に目の前にいる三人は、前世では実力が伴った武名が高まり、大公家の騎士に抜擢採用されていました。
三人とも、騎士の叙任式で姉上様に剣を捧げていましたから、よく覚えています。
実家が騎乗資格のない徒士家ですから、騎乗資格のある騎士に叙任されるという事は、実家を凌ぐ大出世をしたことになります。
「マスターの言葉を疑う訳ではないが、本当にこんな小さい子が魔法を使えるのか」
「それは間違いない。
ここに書いてあるように、俺を含めたギルド職員三人が立ち会って確かめた」
「今日は御試しでいいんですね」
「ああ、本人も御試しで納得している」
そこからは話が早かったです。
ギルドマスターの言う事を信じたのか、それとも、早く実際に私の実力を確かめたかったのか、大公都の南に広がる大魔境に入ることになりました。
そう、大公都の南には、魔獣が巣食う大魔境が広がっているのです。
そもそも強大な帝国が、半ば独立国と言える大公家の存在を許していた理由。
それが魔獣の巣食う大魔境なのです。
大魔境から出てくる魔獣を討伐するには、多くの戦士が必要となります。
その戦士を維持するには、莫大な費用が必要なのです。
それを帝都に住む騎士を基準とした物価で維持するとなると、帝国の財政が破綻してしまうのです。
でも、辺境に住む大公家の騎士と徒士を基準とした物価なら、何とか収支が保てるのです。
しかも、騎士家や徒士家の部屋住みが、仕官を夢見て冒険者になりましたので、収支が大逆転して、大公家は莫大な財を蓄えるようになったそうです。
今生に戻れてから、必死で集めた噂話では、そう言う事でした。
でもそれが、前世の謀略の原因だったのかもしれません。
忌み子である姉上様が、摘女で大公家の後継者である事と、多くの財と戦力を蓄えた事が、帝国に眼を付けられる原因になったのかもしれません。
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