第10話

 私の放った火弾を、片足の戦士は剣で叩き切ろうとしたが、火の塊を刀で斬ってもなくなるはずもなく、そのまま戦士の身体に叩きつけられた。


「治癒だ!

 早く魔法をかけやがれ!

 なんて魔法を使いやがる!」

「治癒」


 訳が分からない。

 火弾を使えと言うから使ったのに。

 何故怒られなければいけないの。

 火弾に対抗出来る相手を用意してくれたのでしょ。


「な!

 なんで治癒一度でこの傷が治るんだ?!

 御前は何者だ!?」


「え?!

 でも。

 治癒で傷が治るのは当たり前ですよね?」


 なにかおかしいのが分かった。

 火弾の魔法を使ったのに、火弾ではないような言い方に聞こえる。

 現に今、治癒を使ったのに、治癒以上のモノを使ったかのように言われた。

 これは迂闊に魔法を使えないかもしれない。


「マスター。

 この子は確かに火弾と唱えていました。

 今も治癒と唱えていました。

 マスターも聞かれていたはずです」


「そうだ。

 そうだった。

 確かに『火弾』と唱えていた。

 『治癒』とも唱えていた。

 だとしてら、どう考えるべきだと思う」


「魔力量が圧倒的に多いか、経験が豊富かです。

 今迄の言動を考えると、桁外れに魔力量が多いのでしょうね」

「そうだな。

 そうとしか考えられないな」


 そういう事ですか。

 二人の話を聞いていると、私は魔力量は多いのでしょう。

 前世では、姉上様は聖女と称えられるほどの魔法使いになられた。

 双子の妹である私にも、それに近い才能があったのですね。


「だとしたら、どうするべきだと思う」

「下手なパーティーには預けられません」

「そうだな。

 よほど人柄のいいパーティーでないと、この子が食い物にされてしまうな」


 あらら。

 才能が有り過ぎて、逆に危険だなんて、悩ましい話ですね。

 でも、私にはどうしようもないです。

 この人達を信じるほかないです。


「試験の続きはどうされますか?」

「もういいだろう。

 この子が六回使えると言うのなら、六回使えるだろうよ。

 二人ともそれでいいな」


「私はそれで構いません」

「俺もそれでいいよ。

 これ以上痛い思いは御免だ」


 三人とも、私の試験は省略する事にしたようです。

 私としても、魔法の残量は残しておきたいです。

 それに最初から、魔法の使用回数は少なめに申告しておきましたから、六回使っても、同じ六回分予備があります。

 復讐を果たす前に死ぬのは嫌ですから、馬鹿正直に全てを話している訳ではありません。


 冒険者ギルドの登録は、年齢や性別、名前や出身地の他にも、身体的な特徴も登録させられました。

 もちろん名前は偽名で登録しました。


 髪の色も、屋敷を逃げ出して直ぐに黒に染めています。

 大公家の血を色濃く引いている証拠である、銀髪を黒にするのは嫌でしたが、これだけは仕方がありません。

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