第9話
「マスター。
魔法を使えると言う女の子が来ています。
立会御願いします」
「なんだ。
魔法使いの女の子だと」
受付嬢の後について行ったら、二階奥の部屋の前まで連れていかれた。
ドアを叩いた受付嬢が、大声で中の人間に話しかけている。
内容から考えると、噂で聞いていた冒険者ギルドの長、ギルトマスターに私の事を報告しているようだ。
「はい。
まだ小さい女の子が、魔法が使えるから冒険者になりたいと来ているんです。
早く出てきてください」
「ちぃ!
余計な仕事を増やしやがって」
困った。
冒険者ギルドのマスターに悪い印象を持たれてしまった。
長く大公都に留まる気はないけれど、体力と路銀を手に入れるまでは、ここにいるしかない。
だから、マスターに悪い印象を持たれるのは不利だ。
「心配しなくて大丈夫よ。
口は悪いけれど、性格は悪くないから」
「ちぃ!
言いたい放題言いやがって。
それで、嬢ちゃんは何の魔法が使えるんだ」
「治癒、睡魔、麻痺、火弾が使えます」
「嬢ちゃんは幾つだ」
「十歳です」
「それにしては小さいな」
「でも、本当です」
マスターは疑っているようだ。
当然だろう。
ろくな食事を与えられてこなかったから、十歳だと本当の事を言っても、信じてもらえないのだろう。
七歳か八歳だと思われて当然の身体つきだ。
「練習場に行くぞ。
あと一人連れてこい」
「分かりました。
直ぐ連れてきます」
マスターと受付嬢の話から考えて、門前払いされると言う事はなくなった。
練習場で本当に魔法が使えるか試験してくれるのだろう。
自分達だけではなく、三人目を連れてきてくれると言う事は、正式な試験だと考えていい。
これに合格出来れば、簡易宿泊所が使える。
「じゃあ、始めてもらおうか。
そこにいる男に、火弾から使ってもらう。
おっと、聞き忘れていた。
一日何回魔法を使えるんだ」
「六回です」
「六回だと!
間違いないのか!」
「嘘は言っていません」
「だったら、直ぐに始めてくれ」
「分かりました」
私の前には、三人目の男が立っている。
片目が潰れているのだろう。
左目に眼帯をしている。
左足も膝から下がない。
それでも、剣を構えた姿からは、圧倒的な圧力が感じられる。
これが物語に書いてあった、闘気というモノだろうか。
闘気に気圧されているわけにはいかない。
ここで証明しなければ、冒険者にはなれないのだから。
「火弾」
「な!」
「え?!」
「げぇ!」
私が詠唱を唱えると、頭ほどの大きさの火の塊が現れた。
現れたと同時に、刹那の時も待たずに、火弾が相手に向かって飛んでいった。
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