第35話
コナン王は花も実もある、義理や人情もわきまえた賢王だ。
オシーン皇子が大魔窟に行く決断をしたことをいたく感心して、第三王子のデグラ・ギャラハーとその近衛騎士団・近衛徒士団を派遣したのだ。
皇家への忠義とオシーン皇子への期待がそうさせた。
愛しい娘がオシーン皇子と相思相愛の中だと言うのが一番大きかったが。
だがそれでも、流石に王太子のアルバー・ギャラハーは派遣出来なかった。
一番武勇に優れているだけに、自分が皇都にいる間は、王国を任せる必要がある。
それに第二王子のケビン・ギャラハーも派遣出来なかった。
アルバー王太子に万が一のことがあれば、ケビンが王国を指揮しなければならない。
そしてそれが出来るだけの実力がある。
ケビンは王家を継ぐ予備として、アルバーと一緒に帝王学を叩き込まれている。
同時に、アルバーに忠誠を尽くす家臣としての教育も施されている。
アルバー王太子に万が一の事があれば、アルバーの遺児を奉じて王国を護り抜いてくれる。
そう信じられる忠勇兼備の騎士だ。
アルバー王太子にはすでに男子が産まれていて、王国の継承は万全の体制にある。
コナン王にはオシーン皇子の考えが分かっていた。
だから国元の戦力を整えさせていた。
もっとも、一度イーハ王と戦争をしたのだ。
隙を見せれば攻め込んで来るし謀略も仕掛けてくる。
それを防ぐためにも、常に臨戦態勢でいる必要があった。
もともとコナン王は、常在戦場の武人だ。
個人的にはいささかの隙も無い。
だが国家体制を常に臨戦態勢にしておくのは難しい。
戦争とは巨大な消費だ。
生産活動が著しく阻害されてしまう。
国民の生活を圧迫しない範囲で戦時体制を敷く。
その匙加減が難しい。
本来それを指揮するはずのコナン王は、皇都を離れることが出来ない。
だがアルバー王太子がいる。
アルバー王太子ならば、困難な両立を成し遂げることが出来る。
アルバー王太子は魔境と魔窟を利用した。
普段から魔獣が溢れないように、騎士団徒士団を使って魔獣を間引いている。
それを積極的に魔獣狩りを行い、食糧と素材と活用したのだ。
魔獣の素材は希少で高価だ。
軍需物資として有用な上に、王国経済にも有効だ。
何より大きいのは魔獣の肉だ。
魔獣の肉は、滋養強壮剤として利用されるくらい栄養が豊富だ。
だから携帯食として最適だ。
軍の遠征には必需品で、それが大量に備蓄出来たのだ。
王国経済を発展させつつ、臨戦態勢を整える事に成功していた。
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