4章

第33話

「マカァ姫様が大活躍されておられます」


「そうか。

 予想通りだけれど、どうすべきかな。

 予定通り動くべきか。

 それとも、もう少しイーハ王を動かした方がいいか」


「マカァ姫様には御苦労を御掛けすることになりますが、今しばらく活躍して頂き、イーハ王の威勢を削いでいただきたいと思います」


「そうだね。

 イーハ王に味方している者が、皆が皆、悪人と言う訳ではないしね。

 誰だって自分の身は可愛いし、愛する家族を護りたいからね」


「本当に許せない者は、予定通りにイーハ王を誅殺してから処分すればいいと思います」


「分かった。

 マカァ姫様にはもう少し頑張ってもらおう」


 前皇太子のオシーン・アイルは、大魔窟の中で着々と準備を整えていた。

 最初から、この機会に皇国の奸臣を一掃する心算だった。

 一時的に皇太子の地位を降り、大魔窟に隠棲した方が、民を戦乱に巻き込まずにすむと考えたのだ。

 そしてその通りに事態は動いていた。


 大魔窟の中には、オシーン皇子を慕う皇家の騎士と徒士が集まっていた。

 皇子を慕う者全てが集まったわけではない。

 皇帝陛下暗殺の恐れもある。

 皇帝陛下さえ暗殺してしまえば、ルアン皇太子が皇位についてしまう。

 そうさせないためには、万全の体制を敷かねばならない。


 だから、オシーン皇子に付き従った騎士と徒士には条件があった。

 家督を継いでいないと言う事だ。

 家督を継いでいる者は、皇国で役目がある。

 そのような者は、大魔窟に連れてくるわけにはいかない。

 もっとも、むりやりついてきた騎士も多少いたが。


 ほとんどの騎士と徒士は、家督を継ぐ前に嫡子か、部屋住みの次男三男だった。

 中には隠居した前当主と言う古強者までいた。

 皆忠義の心を持った騎士と徒士だった。

 彼らはこの世界で最も危険と言われる大魔境の、更に巨大な魔獣が住むと言われる大魔窟についてきた忠義者だ。


 だが彼らの大半は魔獣との戦闘経験が少なかった。

 全くない訳ではないが、大魔境の、それも大魔窟の魔獣相手は厳しかった。

 オシーン皇子の聖魔法を使えば、何とか生き延びることは出来る。

 オシーン皇子の最側近は、聖魔法の助力があれば、魔獣とも互角に戦える。

 命懸けで実力を伸ばすには最適の場所だった。


 だが余りに危険だった。

 彼らだけで挑むには危険すぎた。

 しかし彼らには強力な助っ人がいた。

 この世界で有数の強さを誇る戦士が味方してくれているのだ。

 ギャラハー王家の第三王子、デグラ・ギャラハーだった。

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