第29話
最初父上様は、全ての交渉を拒絶され、オキャラン城の包囲を続けられたそうです。
肝を冷やしたイーハ王は、次々に父上様に有利な条件を出してきたそうです。
父上様に兵を向けた貴族士族に賠償金を支払うように命じたり、死んだ皇家騎士家徒士家の後継者を、我がギャラハー家の陪臣子弟から迎えるとさえ言い出したそうです。
父上様は歯牙にもかけられなかったそうです。
流石父上様です。
妾もそうありたいと思います。
困ったイーハ王は、ダラ・オフラハーティの名誉回復をすると言ってきたそうです。
ですが誠に身勝手な嘘でした。
モアを攫ったのも、不正試合を仕組んだのも、死んだ騎士と徒士だとしたのです。
ダラ・オフラハーティは、人質を取られて無念の敗死をしたと言うのです。
父上様は激怒されたそうです。
ギャラハー馬を駆使され、オキャラン城の城門を討ち破り、四ノ丸への突入に成功されたのだそうです。
イーハ王は慌てて話を変えてきました。
家臣が死んだ皇家騎士家徒士家に騙されて、三千の大軍で間違ってダラ・オフラハーティを討ってしまったと、モラ達に詫びを入れてきたのです。
イーハ王も、嘘に嘘を塗り固めたために、今更キラン・バーンを斬り捨てる事が出来なくなっていたのでしょう。
それにもし斬り捨てようとしても、ダラ・オフラハーティの時ほどではないにしても、多くの家臣を死傷させるのが分かっていたのでしょう。
そこで犯罪者や浮浪者を捕まえて斬り殺し、自家の家臣に仕立てて、間違ってダラ・オフラハーティを討った家臣を処罰したと送ってきたそうです。
ここまでされると、父上様も勅使を無視する訳にはいかなかったそうです。
ですが、父上様は強気で押されたそうです。
オキャラン家の落ち度で始まった戦いの賠償金なら、賠償金の支払いは貴族士族ではなく、オキャラン家が支払う事。
オフラハーティ家の名誉を回復する事。
戦いの負けたイーハ王の威勢は地に落ちたそうです。
皇都でどれほどの権力を振るおうとも、実戦では何の力もない。
そう皇国中に証明されてしまったのです。
今迄隠忍自重していた皇家の騎士や徒士が、表立って不平不満を言い出したそうです。
イーハ王に尻尾を振る百騎長や騎士団長を、忠義の騎士や徒士が突き上げたそうです。
イーハ王に味方して敗戦した貴族士族に連なる騎士団幹部は、大幅に名誉を損なって辞職するしかなかったそうです。
そんな流れもあり、非業の死を遂げたダラ・オフラハーティは男爵の爵位を追贈されることになりました。
モアしかいないオフラハーティ家に、婿を送り込もうとする、多くの騎士の野心もあったのでしょう。
しかし父上様にその様な策謀は通用しませんでした。
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